No. 786
   2011年5月17日 
納得ある 理由示せず、不誠実な回答に終始

= 公務員賃金「1割カット」をめぐって総務大臣政務官と交渉 =

 国家公務員賃金の「1割カット」をめぐって、国公労 連・自治労連・全教の書記長を中心にした交渉団は17日、13日の片山総務大臣交渉につづいて、総務省との2回目の交渉にのぞみました。
  はじめに総務省側から、引き下げ率を10%から5%まで傾斜をつける賃下げの方法について提案がありました。しかし、大臣交渉で指摘した問題点に対して は、何ら納得のある回答を示せず、総人件費2割削減のマニフェストについて追及すると、「マニフェストをつくった岡田幹事長に説明してもらいたい」などと 不誠実な対応に終始しました。
 交渉を通して、地方 公務員や教員にも直接の影響をあたえることが明らかな道理のない賃下げに対して、あらためて交渉団の怒りが集中しました。

本省課長は10%、課長補佐は8%、係員は5%の引き下げを提案

 総務省との交渉には、国公 労連の岡部書記長を先頭に、自治労連の猿橋書記長、全教の今谷書記長らが出席、総務省側は、内山晃総務大臣政務官(衆議院議員)、村木人事・恩給局長ほか が対応しました。
 はじめに、内山政務官は、「前回の片山総務大臣との交渉で、大臣から具体的提案を示すことを約束してきたが、今 回、その内容について提示したい」として、以下のような「要綱(案)」を示しました。

一般職国家公務員の給与削減支給措置要綱(案)


T  俸給月額、俸給の特別調整額、期末手当および勤勉手当の支給減額率
1、俸給月額
  @ 本省課室長相当職員以 上(指定職、行(一)10〜7級)   ▲10%
  A 本省課長補佐・係長相当職員(行(一)6〜3級)       ▲8%
   B 係員(行(一)2、1級)                       ▲5%
 ※1 平成17年給与法改正法附則第11条 の規定による俸給(給与構造改革に伴う経過措置額)についても、俸給月額と同率で減額
 ※2 55歳超職員の給与減額措置 (▲1.5%)適用後の俸給月額等についても、同額で減額
2、俸給の特別調整額(管理職手当)             一律 ▲10%
3、期末手当及び勤勉手当                   一律▲10%
4、委員、顧問、参与等 の日当                 一律▲10%

U 俸給月額に連動する手当等の減額支給
1、 地域手当の俸給月額に連動する手当(期末手当及び勤勉手当を除く)の月額は、減額後の俸給月額等の月額により算出
2、超過勤務手当等 の算出基礎となる勤務1時間あたりの給与額や休職者の給与は、減額後の俸給月額等の月額により算出
 ※扶養手当、住居手当等の俸給月 額に連動しない手当については、減額の対象外

V 給与減額支給措置の期間の終期
  平成 26年3月31日

 また、内山政務官は、「臨時、異例の措置として、退職手当には反映させないこととし、今後、 退職手当水準の官民比較調査を人事院に依頼し、その結果にもとづいて検討したい」と口頭でつけ加えました。

「マニフェストは岡田幹事長に説明してほしい」との無責任さ

 交渉団は、「前回の交渉で は、国の財政事情との関係で公務員総人件費2割削減がなぜ必要なのか根拠を示すこと、片山大臣も認めた経済への影響や、震災で全国の公務員が必死でがん ばっているときになぜ賃下げをするのか、労働基本権が制約されているもとでの政府による賃下げへの合理的な説明をおこなうことなどについて説明を求めた。 具体的な提案があっても、これらのことが示されなければ、話し合いには入れない」として、あらためて総務省としての考えを示すよう求めました。
  内山政務官は、「国会議員も毎月50万円の議員歳費を返上している。決して歳費は高くなく、50万円減は死活問題にもかかわり、みなさんの意見は痛いほど わかる」などとしつつ、「2割削減は、09年の総選挙のマニフェストで掲げたものだが、私はマニフェストを作った担当者ではない。岡田幹事長が作成した張 本人だ。岡田幹事長から説明してもらいたいと思っている」などときわめて無責任な回答を示しました。
 また、賃金引き下げの理由につ いては、「震災が起きたからではなく、財政の健全化に寄与するためには人件費削減が必要であるとの発想だ。デフレのもとで、賃下げはマイナス影響であると いうのは、言われる通りだ。ただ、財政事情に加えて、震災のもとで予算が足りないという厳しいなか、財源を捻出しなければならない」などと「国の財政事 情」を繰り返しました。
 村木人事・恩給局長は、「今回提案する内容は、各地方団体でやっている独自の賃金カットの実例をいくつか参 考にさせてもらい、このへんがお願いできるギリギリの範囲として提案したものだ」などとのべました。
 交渉団から、「マニフェストの 作成にかかわっていなかったなどと言うのは回答になっていない。1割削減、2割削減などとバナナのたたき売りの議論があるが、財政事情が悪化した原因を しっかり示せ。これまでの政権は、誰一人として責任をとってこなかった。歴代政権が続けてきた構造改革こそ根本的な問題だ」と追求すると、内山政務官は、 「前政権がつくった借金がほとんどだ」などと責任を自公政権になすりつけましたが、「財政事情は、資料も示して、次回に話をさせてもらいたい」と回答しま した。

「地方は遮断」とごまかしの回答、自治体の影響はすでに出ている

 交渉団は、「財政危機とい うが、そもそも公務員の賃金は高くて、公務員の数は多いという考え方が、総人件費2割カットの公約につながったはずだ。今も、その認識に立っているのか。 また、片山総務大臣は、地方の独自カットを引き合いに出すが、自治体当局が賃下げを提案する際、最初からその根拠を示す資料がすべてそろってから交渉とな る。それも示されないならば、交渉の入口にも入れない。少なくとも引き下げなければならないという資料をそろえるべきであり、あまりにも乱暴な交渉だ」 「地方自治体の交渉とくらべて、きわめてずさんな提案だ。納得のできる説明ができなければ、職員に負担を強いる提案をすべきではない」とのべ、政府の不誠 実な対応を厳しく指摘しました。
 これにたいして、内山政務官は、「地方自治体の交渉については、初めて聞いた」などとし、次回の交 渉には資料を示すことをかさねて約束しました。
 さらに地方公務員・教職員への影響について、交渉団から、「片山総務大臣は、前回の 交渉で地方には押しつけないと言ったが、国公賃金は、地方交付税の算定基礎に組み入れられており、地方に影響するのは明らかだ。実際に、すでに国の賃金 カットの方針をうけて、職員の賃下げを公言する自治体首長が出てきている。公務員賃金は、地場賃金の基準ともなっており、実態として、すべての労働者の賃 下げにつながることは明らかだ。だからこそ国家公務員の賃金引き下げはやめよ」と追及すると、内山政務官は、「地方公務員への影響は遮断することを、大臣 も話をしている。義務教育国庫負担金も、当然、影響をおよぼさない。地方交付税削減というマスコミが書いたネタは、財務省から出たものだ。内側に敵がいる のでやりづらい」などとのべました。
 これについては、交渉団が、「財務省は政府ではないのか。『敵』だなどと言って、政府内の意見 が不一致であるのは、そもそもおかしい」とせまると、内山政務官は、「その通りだが、現実としては、1割カットでは満足しない財務系の人たちがいる。われ われは、あえて『地方は遮断』と言っているが、地方公務員に波及させようとしている人たちがいる。財務省が妨害しようとしていることはけしからんと片山大 臣とも話した」などと理解しがたい回答を繰り返しました。
 また、「自治体の使用者は、国がやると言えば、財政事情が悪化している地 方自治体は、かならず賃下げするのではないのか。実力でくい止める手段などどこにもない。『地方は遮断』などと言うのなら、国から地方自治体に対して、賃 下げするなと言う総務大臣通知でも出すというのか。そんなことは、絶対にできない」と強く指摘すると、内山政務官は、「財務省が地方交付税を削減しよう が、われわれが提案したことではない」などと、きわめて無責任な態度に終始しました。

自衛隊員には手当を厚く、一般公務員は賃金カットなのか!

 交渉団は、伝えられている 自衛官に対する手当の増額に触れ、「自衛隊は別と考えているのか。一般職だけ引き下げると、使用者と職員の信頼関係を失うことになる」とのべると、内山政 務官は、「特別職も対象となるが、自衛隊のみなさんは、被災地で大変ご苦労されている。それを1割カットしたら、国民はどう見るだろうか。自衛隊の大変さ を考えると、給与カットの対象とするが、何らかの形で補おうという議論をしている」などと回答したことから、交渉団は、「自衛隊だけでなく、消防職員をは じめ、国家公務員、自治体労働者、教員など多くの公務労働者が、みずからの家を失いながらも、住民を支援しているになぜ目をむけないのか、その姿を思い浮 かべて提案しているのか」と厳しくせまりました。
 内山政務官は、「財政の立て直しに給与削減は必要だ。マニフェストである総人件費 2割削減を達成するために、生首は切れない。社保庁でだいぶ減らしたが、今のところ、それに代わるものはない。だから、給与を引き下げる。決して、公務員 給与は高額であると思っていないが、財政を建て直すためだ。ご理解いただきたい」などと求めました。
 最後に、「まったく理解できな い。生首を切れないというが、実際に社保庁で強行されている。最賃すれすれの非常勤職員もいる。その人たちを改善できるようなトータルな姿を示せ。十分に 時間をかけて、納得できる説明と根拠を示して、実のある交渉を求める」とのべると、内山政務官は、「いただいたご意見については、宿題として次回の交渉で のべたい」と約束しました。

以 上