No. 785
   2011年4月22日 
来月にも 給与引き下げの具体案を提示

= 11年春闘要求をめぐって政府・人事院と最終交渉 =

 公務労組連絡会は22日、春闘統一要求にかかわって、 政府・人事院と交渉しました。
 すでに要求書は2月に提出していましたが、3月に発生した東日本大震災の影響をうけて、最終回答も約 1か月繰り延べられました。交渉では、全国から被災地に派遣された国・地方の公務労働者が、連日、不眠不休で奮闘するもと、職員を激励するためにも賃金改 善は不可欠であることを求めましたが、総務省は、要求には答えないばかりか、給与の引き下げの具体案を5月に提案すると表明するなど、きわめて不当な回答 に終始しました。
 これに対して、公務労組連絡会は、この間、取り組んできた賃下げに反対する「職場決議」2,407通(累計で 6,061通)を提出し、道理のない賃下げは断じて認められないことを重ねて表明しました。

(総務 省交渉)職場決議に込められた怒りに真摯に応えよ

 総務省・人 事院との交渉には、公務労組連絡会から野村議長を先頭に、北村副議長、黒田事務局長、蟹澤・鈴木の各事務局次長、国公労連から高木中執が出席、総務省側 は、人事・恩給局総務課の西水(にしみず)総括課長補佐、小泉課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、野村議長は、「東日本大震災 では、地元職員をはじめ、全国から公務労働者が派遣され、不眠不休で業務にあたっている。そうした奮闘に使用者として応えるような賃金・労働条件の改善が 求められている。春闘要求に対する誠意ある回答を求める」とのべ、政府あての「職場決議」を積み上げて提出しました。
 これに対し て、西水総括課長補佐は、以下のように回答しました。
【総 務省最終回答】
1、総人件費改革等について
 給与の引下げについては、具体案がまと まった段階で、よくご説明し、理解が得られるよう話し合いたい。5月には説明できると考えている。
 なお、出先機関改革については、 公務能率の確保に留意しつつ、雇用の確保に努めたい。
2、超過勤務縮減について
 超過勤務の縮減を人事評価の対 象として明確化するなどの取り組みを実施してきたところである。引き続き関係機関とも連携しつつ、政府全体の超過勤務縮減に取り組んでいきたい。職員団体 の意見も聞きつつ、コスト意識を持った抑制策に努めたい。
3、定年延長について
 民間の状況も踏まえつつ、人事 院から「意見の申出」が行われた場合には、誠意を持って対応する。
4、非常勤職員の処遇について
 昨年、「期間 業務職員制度」や「育児休業制度」の導入などの制度改善を実施してきたところである。まずはこれらの制度を適切に運用したい。
 今後 とも、職員団体の意見も聞きながら、処遇改善について検討をすすめる。

 これに対して、黒田事務局長は、「賃上げ要 求に対しては何の具体的な回答もなく、その反対に賃下げの回答が示されたことは、不当な回答であり認められない」と抗議し、「震災によって春闘回答も先送 りされる異例の事態となったが、そうした状況をふまえれば、この時点の回答で示すべきは、震災対応で全国各地で奮闘している公務労働者の処遇改善であって しかるべきだ」とせまりました。
 交渉参加者から、「話が逆だ。まず、被災地で働く公務労働者の奮闘をどう受けとめて、使用者として どのように対応するかを考えるべきではないか。それを、5月に賃下げの具体案を示すとは何ことが。納得できない」「賃下げの回答には憤りを感じる。被災地 では、学校が避難所となり、教職員が2交替、3交替で学校を管理している。そうした姿に、住民からは共感がひろがっている。公務員の賃下げは、現地での努 力を足蹴にするものでしかない。公務員総人件費削減の方針は撤回せよ」「人事院勧告制度のもとでの政府による賃下げは法的にも正当性はない。理屈があれば 示せ」など怒りの発言がつづきました。
 西水総括課長補佐は、「みなさんの要求は重く受けとめるし、内容はしっかりと片山大臣に伝え たい。給与の引き下げについては、5月になって具体案がまとまれば、みなさんとも話し合いをさせてもらいたい」と繰り返しました。
  最後に野村議長は、「賃下げは認められないことをあらためて表明する。仮に、賃金を下げる場合でも、労働組合との十分な話し合いが不可欠であることは当然 だ。その立場から、片山総務大臣が交渉の場に出てきて、労働組合にきちんと説明すべきだ」と求めつつ、「多くの尊い命が犠牲となった震災が明らかにしたの は、『構造改革』で政府が切り捨ててきた公務・公共サービスの重要性だ。政府は、『構造改革』路線からの転換をはかり、公務員総人件費削減の方針の速やか な撤回を強く求める」とのべ、交渉を閉じました。

(人事院交渉)初任給改善、非常勤職員の処遇改善は緊急課題

  人事院との交渉では、人事院側は、給与局給与第1課の箕浦課長補佐、職員福祉局職員福祉課の柳田課長補佐が対応しました。
 野村議長 は、「被災住民救援、復旧にあたる公務労働者は、住民にとっては命綱だ。働きがいや生きがいをもって仕事ができるように、賃金をはじめ労働条件改善が強く 求められている。人事院は、公務労働者の生活改善にむけて役割を発揮すべきだ」とのべ、回答を求めました。
 箕浦課長補佐は、東日本 大震災における公務労働者の努力に敬意を表しつつ、震災が被災地域のみならず日本全体の社会経済情勢に大きな影響を与えるもと、人事院の職種別民間給与実 態調査について、当初予定していた5月からの実施ができなくなったことを報告し、「今年の給与改定を取り巻く状況は例年と異なっており、今後について見透 せないところがあるが、現段階においては以下のとおり回答する」として、最終回答を示しました。
【人事院最終回答】
1、 賃金等の改善について
 労働基本権制約の代償措置としての給与勧告制度の意義及び役割を踏まえ、官民較差に基づき適正な公務員給 与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
 06年度から実施してきた給与構造改革については、当初予定していた施 策の導入・実施が10年度をもってすべて終了したところであり、今後、給与構造改革の諸施策について、その成果を検証していくこととなる。
  給与に関しては、今後、状況の推移を踏まえ、民調の実施等について皆さんの意見も聞きながら判断していきたい。
2、非常勤職員の給 与、休暇等の改善について
 非常勤職員については、多種多様な職務内容、任用形態、勤務時間等の実態にあることから、給与を統一的に 定めることは困難であるが、08年8月の指針に沿った適正な給与支給がなされるよう取り組んで参りたい。また、引き続き、適切な処遇等が図られるよう、関 係方面からの要望、民間の状況等を踏まえ、必要な検討を行って参りたい。
3、高齢期雇用・定年延長について
 高 齢期の雇用については、13年4月から段階的に65歳まで定年を延長することを目指すとの方針に変更はない。
 意見の申出について は、できるだけ早く行うよう検討を進めていく所存である。
 そのため、昨年12月にお示しした「高齢期雇用問題に関する検討状況の整 理」に対する関係者の意見を踏まえつつ、人事院としての素案をできるだけ早期に皆さんにお示しし、意見の申出に向けての議論を深めていくこととする。
 50 歳台の給与については、昨年の勧告時の報告において、50歳台後半層を中心とする50歳台の給与の在り方について必要な見直しを行うよう検討する旨を表明 したところである。その見直しに当たっては、定年延長に伴う給与制度の設計も視野に入れながら、給与構造改革期間が終了したことも踏まえ、経過措置のあり 方も含め検討しており、今後とも、皆さんと意見交換を行いながら、具体的な検討を進めて参りたい。
4、労働時間の短縮等について
  公務員の勤務時間・休暇制度については、それら制度の充実に向けて、関係者や皆さんの意見を聞きながら引き続き検討する。
 超過勤務 の縮減については、人事院としては今後とも在庁時間の縮減に取り組んでいく必要があると考えており、関係機関と連携して超過勤務の縮減に努めて参りたい。
  また、超過勤務の縮減について、本年は「超過勤務の縮減に関する指針」に定められた、他律的業務に係る720時間の目安時間の実態調査等を行ったところで ある。現在は、大震災対策のための特別の状況が多くの部署で生じているが、日常業務における日頃からの超過勤務縮減は重要なことであり、引き続き、そのた めの取組を行っていきたい。
5、男女平等、共同参画について
 公務における男女共同参画の推進に関しては、今年 1月に「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」を改定したところであり、指針に基づく施策が着実に実行されるよう努めて参りたい。
6、 健康・安全確保等について
 職場の健康等に関しては、特に、心の健康づくり対策の取組として、相談体制の整備や研修の充実等を図りな がら、各府省の対策支援を積極的に行っていきたい。

 これに対して黒田事務局長は、以下の点を主張しました。
 ○  政府は5月にも公務員給与の賃下げを提案しようとしている。前回の交渉でものべてきたところだが、人事院勧告を経ずに給与法案を提出することは重大であ り、人事院としての何らかの意見表明を重ねて求める。
 ○ 賃金改善では、民間との格差が広がっている初任給は、「民間準拠」という 点からもすぐにでも改善すべきだ。優秀な人材確保の面でも待ったなしの課題だ。勧告作業においては真剣な検討を求める。
 ○ 非常勤 職員では、「給与指針」にそった適正な給与支給がのべられたが、高卒初任給とあわせて最低額を行(一)1級5号俸にするよう要求したところだ。民間の非正 規労働者の賃金改善にもつながることからも検討を求めたい。
 ○ 定年延長・高齢期雇用は、年金支給が65歳に繰り延べられるもとで 重要課題となっている。ただし、給与のあり方については、年齢で区切った賃下げなどは認められない。今後、労働組合との話し合いにもとづいた制度化を求め る。
 また、交渉参加者は、「初任給改善は、労働者全体の賃金を底上げする観点からすれば、人事院としての社会的使命だ。給与構造改 革の経過措置について言及があったが、経過措置を下げるべきではない」「非常勤職員の給与指針はあるが、まだまだ改善はすすんでいない。最低賃金の引き上 げにむけて前向きな検討を求める」「定年延長にかかわる高齢者の給与引き下げは、何か根拠があるのか。年齢で区切った賃下げには正当性はない」「過日、政 府決定された公務員制度改革の『全体像』では、労働組合との合意なく、高齢者の給与引き下げが盛り込まれた。意見の申出では、きちんとものを言うべきだ」 などと追及しました。
 箕浦課長補佐は、「初任給改善が強い要求であることは理解する。みなさんの意見はしっかりと受けとめて、今後 の検討作業の参考にしたい。また、非常勤職員の改善、定年延長など、みなさんと引き続き意見交換していきたい」とのべました。
 最後 に野村議長は、「この間、景気回復にむけた賃上げの必要性を訴え、民間準拠にとどまらない公務員の賃上げを繰り返し求めてきた。その点から、従来通りの回 答は、極めて不満だ」とのべたうえ、「勧告作業の見通しはたたない段階ではあるが、初任給の引き上げをはじめとする賃金改善、長時間・過密労働の解消、定 年延長問題、さらには、臨時・非常勤職員の処遇改善など解決すべき課題は山積している。引き続き、要求をふまえて検討を深めつつ、公務労組連絡会との交 渉・協議を続けるよう求める」とのべて、交渉を終えました。

以  上


2011年春闘における政府・人事院回答に対する声 明


2011年4月22日
公務労組 連絡会幹事会


1、公務労組連絡会は、今春闘において、月額1万円の 賃上げ、初任給引き上げや、臨時・非常勤職員の「時給1,000円以上」への最低賃金の改善などを中心に、政府(総務省)・人事院に切実な要求の実現を求 めてきた。
 しかしながら、本日、総務省から示された回答は、これらの要求に何らまともに答えないばかりか、来月にも「給与引き下げ の具体案」を示すと表明するなど、断じて認められるものではない。また、「官民較差に基づき適正な公務員給与の水準を確保」とする人事院の回答も、賃上げ 要求に照らしあわせて、従来の枠を出ない不満なものである。

2、公務員総人件費2割削減を公約にかかげる民主党 政権のもとで、今春闘は、通常国会への公務員の賃下げ法案の提出がねらわれるなかでの厳しいたたかいとなった。
 公務労組連絡会は、 理不尽な攻撃に対抗して、政府への「職場要求決議」の集中や賃金削減反対署名を民間労組にも呼びかけ、また、「賃上げでこそ景気回復を」と積極的な立場か ら、「地域総行動」などを通して幅広い団体との「対話と共同」をひろげてきた。春闘ヤマ場の中央行動では、初の総務省前の「座り込み行動」でたたかった。 そうした仲間たちの怒りと運動の力が政府のねらいを押しとどめ、いまだに賃下げ法案は国会提出を許していない。

3、 たたかいの最中に発生した東日本大震災では、巨大な津波が三陸沿岸部の市町村を呑み込み、いまだに1万人以上が行方不明となっている。
  こうしたもと、被災地の自治体労働者は、みずからの家が流され、家族を失いながらも不眠不休で被災者救援活動にあたるとともに、教職員は、避難所となって いる学校で世話役活動に取り組んでいる。さらに、全国各地から数多くの公務労働者が被災地に派遣され、救援・復旧の業務を続けている。
  このような公務労働者の昼夜を分かたぬ奮闘を目の当たりにしながらも、政治公約を優先させ、公務員の賃下げに固執しつづける政府に対して、怒りをもって抗 議するものである。

4、過日、政府は自律的労使関係制度をふくむ公務員制度改革の「全体像」を決定した。60余 年にわたる人事院勧告制度の終焉を目前にして、政府に対し、賃金・労働条件改善にむけた使用者としての責任を果たすよう強く求めるものである。
  同時に、震災を通して住民のいのちと暮らしを守るために国・自治体の役割の重要性が明らかになるなかで、公務員の大幅増員をはじめとした公務・公共サービ ス拡充にむけて、政府は全力を傾けるべきである。その点でも、公務員総人件費2割削減はただちに撤回せよ。
 公務労組連絡会は、たた かいを継続・強化し、被災地の復旧・復興をはじめ、すべての労働者・国民の切実な要求実現へ全力をあげる決意を新たにするものである。

以 上