「給与
引き下げ法案提出には労働組合との合意が必要」と片山大臣
補正予
算案を採択した衆議院本会議終了後、17時過ぎから再開された総務委員会では、赤澤亮正(自民)、稲津久(公明)、塩川鉄也(共産)、重野安正(社民)、
柿澤未途(みんな)の各議員が質問に立ちました。 自民党の赤澤議員は、「公務員総人件費削減の工程表を示すべきだ。政府は、覚悟を
持ってとりくめ」とせまりつつ、協約締結権回復など自律的労使関係にかかわる法案の提出時期について質問しました。 園田内閣府大臣
政務官は、「来年の国会に提出すべく準備している。通常では、3月前後には提出すべきだ。かならず法案を出せるように鋭意検討している」とのべ、年内から
年明けにかけて法案の骨格を示す必要性についても言及しました。 公明党の稲津議員も、赤澤議員と同様に公務員総人件費削減の工程表
を示すよう求めました。これに対して、片山総務大臣は、「現時点では、具体的なものは持っていない。通常国会に法案を提出する際、その時期にあわせて公務
員総人件費削減にむけた全体像を明らかにしたい」とし、また、マイナス勧告以上に給与を引き下げる「深掘り」について、「現行の法律でも不可能ではない。
ただし、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の役割を変えるうえでまず第一に必要なことは、労組との合意だ。理解と納得のうえで成案を得るべきであ
り、労働組合と誠実に話し合って、合意を得ていく」などと答弁し、あくまでも来年の通常国会での公務員給与引き下げに固執しました。
稲津議員は、「方向性については評価したい」としたうえ、「人事院勧告制度の必要性の有無も考えるべきであり、同時に、国会議員の歳費を削減し、まず範を
示すべきだ」と主張しました。
財政赤
字をまねいた失政のツケを一般公務員に回すな
共産党の塩川議員
は、労働基本権が制約されたままで、政府による給与削減の不当性について追及しました。塩川議員が、「次期通常国会に給与削減の法律を提出するとなると、
8月の勧告が出る前に給与法を改正することとなる。勧告前に給与法案が提出されたことはあるのか」と質すと、江利川人事院総裁は、「人事院勧告をうけて給
与法を策定するのが通常であり、制度的にはありえない」と答弁しました。 塩川議員は、「政府が基本姿勢にしてきた『人勧尊重』どこ
ろか、逆に、法律が勧告にワクをはめることとなる」と厳しく指摘すると、片山大臣は、「今年度の勧告と一体という考え方が基本だ。実際の給与引き下げは来
年になるが、今年の勧告からの一連の作業という位置づけだ。過去にも政府による勧告の凍結はあったし、自治体では独自に賃金削減している。国も財政事情の
悪化のもと、行政のスリム化が必要だ。人件費削減は考えざるを得ない」など答弁し、今年の「マイナス勧告」を、来年の通常国会に提出する法案でさらに引き
下げるという考え方を明らかにしました。 塩川議員は、「結局は、公務員給与の引き下げありきだ。国の財政赤字の原因は、大型開発と
大企業減税という自民党時代からの失政にある。その失政のツケを一般の公務員に回すのは筋違いだ」と厳しく指摘したうえ、「消費税増税の地ならしとなる公
務員総人件費削減の方針は撤回せよ」と強くせまりました。 社民党の重野議員は、育児休業等に関する法律改正案に限って質問し、新た
な法律の対象が一部の非常勤職員に限られていることや、地方自治体でも対象とならない臨時・非常勤職員が多数出る懸念を指摘し、制度の拡充を求めました。
片山大臣は、地方自治体職員について、「建前から言うと、産休の代替要員などそもそも育児休暇を想定できない臨時職員もいる。しかし、必要があれば、条例
によって自治体として独自に育児休業の措置はできる」と答弁しました。 みんなの党の柿澤議員は、幹部公務員の給与削減などについて
政府の考えを質し、「事務次官や局長などは、民間では役員クラスだ。そうした職員に労働基本権が保障され、代償措置としての人事院勧告制度が適用されるこ
と自体おかしい」などと主張しました。 給与法案は賛成多数、育児休業法案は全会一致で可決
総務委員会では、約
1時間で質疑は終局し、その後、みんなの党が、国税庁の民間給与実態調査をふまえて、公務員給与を一般職員は5%、指定職は10%削減するという内容の修
正案を提案しました。 これらをうけて、各党による討論に入り、自民党の森山裕議員が、勧告そのままの給与法案は、公務員総人件費2
割削減のマニフェストで政権をとった民主党の公約違反であり、「勧告を上回る公務員給与引き下げ」という菅首相の公約にも違反するとの理由から、給与法案
に反対の態度を明らかにしました。 共産党の塩川議員は、「2年連続の年収減であり、55歳を超える職員を狙い撃ちにしたことは重大
だ。人事院勧告は580万に直接影響し、民間賃金にも波及する。そのことで、消費をいっそう冷え込ませることになる。また、人件費削減にむけた法案提出も
きわめて重大だ。人事院勧告にワクをはめることとなり、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度を根本からくつがえすことになる。そのことが、国
民の生活と権利を脅かすことにもなる」と、かさねて公務員にさらなる賃下げをせまる政府の不当性を追及しました。 この後におこなわ
れた各法案の採決では、修正案は、みんなの党以外のすべての会派の反対で否決され、給与法「改正」法案(政府原案)は、民主・公明・社民の賛成多数で、育
児休業等に関する法律改正法案は全会一致で採択されました。また、民主・自民など5会派共同提案による附帯決議(別記)も、全会一致で採択されています。
【附帯決議】
国家公務員の育児休業等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する
付帯決議
政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。 1、
本法の施行に当たっては、地方公共団体の臨時・非常勤職員の職種や任用方法、処遇等が多岐にわたること及び各地域が置かれている状況に相違があることに十
分意識し、地方公共団体の臨時・非常勤職員の勤務実態及び本法の施行に伴う影響について調査を行い、これを踏まえて地方公共団体に必要な助言及び情報提供
を行うよう努めること。 2、本法案に定めるもののほか、地方公共団体における非常勤職員の勤務条件の在り方について、実態に即した環
境の整備に向け検討すること。
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