「マイナス勧告」どおりの実施を閣議決定
午後3時すぎからの総務省との交渉には、公務労組連絡会から、山口議長を先頭に、野村副議長、黒田事務局長、蟹澤・松本の各事務局次長が参加、総務省側
は、人事・恩給局総務課の竹中総括課長補佐、澤田参事官補佐(給与担当)ほかが対応しました。 はじめに、山口議長は、「勧告直後に
要求書を提出し、2年連続の賃下げ勧告に対して使用者としての十分な検討を求めてきた。しかし、その後、勧告をさらに引き下げる動きが強められてきた。公
務員賃金削減をねらう政府に対して、職場からは不安や怒りが高まってきている。こうした職場の声もふまえて、要求に対する誠意ある回答を示してもらいた
い」とのべ、総務省からの最終回答を求めました。 竹中総括課長補佐は、以下のように回答しました。 【総務省最終回答】 本
年の人事院勧告の取り扱いについては、去る8月10日の勧告を受けて以来、政府部内で検討を続けてきた。 人事院勧告制度は、労働基
本権を制約する上での代償措置の根幹をなすことから、給与改定にあたっては、これを尊重すべきというのが基本認識だが、政府部内では、人事院勧告を尊重す
べきではあっても、現下の社会経済情勢や厳しい財政事情などを踏まえると、その取り扱いの決定には十分な検討が必要という意見もあり、関係者と議論を続け
てきた。 こうした経緯のもと、本年の人事院勧告の取り扱いも含めた国家公務員の給与について、次のような二段階の対応で検討をすす
めたい。 第一は、本年度の給与改定については、人事院勧告どおりの改定とする。 第二は、今後の給与改定につ
いては、次期通常国会に自律的労使関係制度を措置する法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現をはかる。なお、その実現までの間においても、人件費を削
減するための措置を検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出する。 本日、第2回目の給与関係閣僚会議及び閣議が予定され
ており、総務大臣から、以上の内容で政府としての方針が決定されるよう求めることとしている。本年の給与改定は、昨年に引き続き、みなさんにとって厳しい
内容となるが、何卒ご理解願うとともに、今後とも国民の信頼にこたえ、公務能率および行政サービスの一層の向上に努めていただきたい。
人件費削減のための法律づくりは歴史に汚点を残す
この回答に対して、黒田事務局長は、「労働条件の不利益変更をともなう勧告であるにもかかわらず、本日、交渉をして、数時間後に取り扱いを決めるのはあま
りにも乱暴だ。そのうえ、人件費削減のための法案検討の話は、今日はじめて聞いた。一方的な通告に等しく、断じて認められない。なぜ、夜に臨時閣議を開い
てまでも勧告の取り扱いを今日中に決める必要があるのか」と厳しくせまりました。 これに対して、総務省側は、「法案の早期提出が求
められていたが、政府部内での検討に時間がかかり、ギリギリになった。臨時国会の日程から、できる限り早期に国会に法案を提出したい。そのことから、本日
の交渉となり、本日中の給与関係閣僚会議と法案提出の閣議となった」と説明したうえ、「みなさんには誠に申し訳なかったが、こうした扱いは極めて異例であ
り、今後、こうしたことのないよう十分な話し合いを持ちたい」と回答しました。 また、野村副議長は、「検討に時間がかかったと言う
が、勧告以上に引き下げるという方向での検討ではないのか。景気回復のためにも、民間賃金にも影響する公務員賃金を引き上げる方向での検討もあってしかる
べきだ。そうした考え方はなかったのか」とただすと、総務省側は、「本来ならばそうした観点からの検討も必要であり、政府として重い問題と受けとめる」と
しつつも、「景気対策などは、政府全体の課題として別途の政策で取り組みたい。今年の勧告は、受けいれざるをえない」と態度を変えませんでした。
さらに、次期通常国会に提出するとしている「人件費を削減する措置」の法案について、野村副議長は、「削減だけを目的とした法的措置というのはそもそもお
かしい。交渉の結果、給与を引き上げる場合もある。歴史に汚点を残すような法律をつくることのないよう、政府はきちんと使用者責任を果たせ」と強く求めま
した。 最後に山口議長は、「2年連続のマイナス勧告を実施するなという要求に対して、ゼロ回答であったことは、使用者としての誠意
がまったく感じられずきわめて不満だ」と表明したうえ、「公務員の労働基本権が制約されているもとで、使用者による一方的な賃下げがおこなわれるならば憲
法ともかかわる問題となる。何よりもまず、労働基本権のすみやかな回復を求める」とのべて交渉を閉じました。 |