一時金は年間3.95月で昭和30年代に逆戻り
人事院との交渉には、公務労組連絡会から山口議長、黒田事務局長、松本事務局次長、国公労連から上田中執、日高教から五十嵐中執が参加しました。人事院側は、給与局給与第1課の箕浦課長補佐、職員福祉局職員福祉課の柳田課長補佐が対応しました。
はじめに、山口議長が、「56歳以上を対象とした一律の給与削減に対して、職場からは急速に怒りがひろがり、5日間の座り込み行動には、連日の猛暑のな
か、毎日100人以上の仲間が駆けつけた。職場からは、本日まで5,500通にせまる要求決議が届いている。職場からの怒りはますますひろがっており、こ
れに応えることが人事院の役割だ」とのべ、回答を求めました。 人事院側は、以下のように回答しました。
【人事院最終回答】 1、勧告日は、8月10日(火)となる予定である。 2、官民較差は、「0.2%弱のマイナス」となる見込みである。また、特別給は、「0.2月のマイナス」となる見込みである。 3、今年の給与改定の内容について ・民間給与とのマイナス較差を解消するため、50歳台後半層の職員の給与を抑制するための措置および俸給表の引き下げ改定をおこなう。 ・55歳を超える職員については、民間の賃金水準を相当上回っていることから、当面の措置として、55歳に達した年度の翌年度から俸給月額および俸給の特別調整額の支給額を1.5%減額する。 ただし、行政職(一)5級以下の職員および他の俸給表のこれに相当する級の職員を除くこととする。また、人材確保のため医療職(一)については、この措置はおこなわないこととする。 ・
50歳台後半層の職員の給与抑制措置による解消分を除いた残りのマイナス較差を解消するよう、俸給表の引き下げ改定をおこなう。その際、行政職(一)の場
合、民間賃金を下回っている若年層は据え置きとし、40歳台以上の職員が受ける俸給月額を対象として、0.1〜0.2%程度の引き下げ改定をおこなうこと
とする。 また、行政職(一)以外の俸給表については、行政職(一)との均衡を考慮した引き下げ改定をおこなうこととする。なお、医療職(一)については引き下げ改定をおこなわない。 ・給与構造改革の俸給水準引き下げに伴う経過措置額についても、俸給表の引き下げ改定および50歳台後半層の給与抑制措置を踏まえ引き下げをおこなう。 ・特別給については、年間支給月数を「0.2月分」引き下げ「3.95月」となる見込みである。その場合、引下げ分の割り振りは、期末手当を「0.15月分」、勤勉手当を「0.05月分」それぞれ減とする。 4、改定の実施等について 今回の改正については、公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときはその日)から実施する。 本年4月から改正法施行日までの較差相当分を解消するための年間調整については、基本的に昨年と同様の方式により行う。 調整率は、月例給の引き下げが行われる職員が民間給与との較差総額を負担することとして求められる率とする。 5、超過勤務手当について 民間企業の実態を踏まえ、月60時間の超過勤務時間の積算の基礎に日曜日またはこれに相当する日の勤務の時間を含めることとし、11年度から実施する。 6、給与構造改革について 給与構造改革は、本年度をもって当初予定していた施策の導入・実施がすべて終了したところである。 地域間給与配分の見直しについては、地域別の較差は縮小してきているが、経過措置額の状況や各地域の民間賃金の動向等を見守りたい。 勤務実績への反映については、制度の趣旨に沿った運用がなされているが、今後ともその状況を把握していくこととしたい。 11年4月にかけて経過措置が解消されることにともなって制度改正原資が生ずることから、その原資を用いて、11年4月1日に43歳未満である職員で、10年1月に昇給抑制を受けた者の号俸を1号俸上位に調整する。 民間賃金を上回っている高齢層の給与については、定年延長の議論の中であるべき給与制度について検討していきたい。 7、高齢期の雇用問題について 本格的な高齢社会を迎えるなか、公的年金の支給開始年齢の引上げに合わせて、13年度から、定年年齢を段階的に65歳まで延長することが適当であると考えている。
定年延長を行うに当たっては、管理職の役職定年制や組織活力の確保のための人材活用方策等にとりくむとともに、短時間勤務を含め多様な働き方を選択できる
ようにすることが適当である。定年延長後の給与については、職員の職務と職責を考慮しつつ、民間企業の雇用・所得の実態を踏まえて60歳台前半の給与水準
を相当程度引き下げなければならないと考えている。 こうした基本的な考え方の下、 ・60歳以後の働き方について職員の意向を聴取する仕組み ・役職定年制を導入する場合の対象範囲や役職定年年齢 ・定年前の短時間勤務制 ・60歳台前半の給与 ・加齢に伴い就労が厳しくなる職務に従事する職員の取り扱い 等についての検討が必要と考えている。
本年の報告において定年延長に向けた制度見直しの骨格を提示したうえで、その骨格にもとづき、引き続き、職員団体の皆さんをはじめ関係各方面と幅広く意見
交換を重ねながらさらに検討をすすめ、本年中を目途に成案を得て、立法措置のための意見の申出をおこないたいと考えている。本年の報告において改めてその
旨を言及することとしたい。 なお、60歳前の公務員給与については、先に述べたように、今後、定年延長に伴う給与制度の見直しの中で、そのあり方を引き続き検討する。 8、非常勤職員制度の改善について 現行の日々雇用の仕組みを廃止し、非常勤職員として会計年度内の期間、臨時的に置かれる官職に就けるために任用される「期間業務職員制度」を設けることとし、改正人事院規則を8月10日に公布し本年10月から実施することとする。 非常勤職員が育児休業等を取得できるよう「国家公務員の育児休業等に関する法律」の改正に関する意見の申出を、給与勧告と同時におこなうことを予定している。あわせて、介護休暇制度の導入についても措置することとしたい。 9、公務員人事管理関係について 以上のほか、本年の主な報告は次のとおりである。 公務員の労働基本権のあり方は、現行の公務員制度の根幹にかかわる問題であるとともに、直接または間接に国民生活に大きな影響を与えることから、この問題について議論する際に詰めるべき基本的な論点を整理し、提示している。
その他、国家公務員制度改革基本法に定める課題のうち、本院がとりくむべき課題として、新たな採用試験制度の全体像を提示するほか、時代の要請に応じた公
務員の育成、官民人事交流等の促進、女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針の見直しについて、言及することとしている。 さらに、超過勤務の縮減、適切な健康管理および円滑な職場復帰の促進など、職員団体のみなさんにこれまで表明してきた諸課題等への人事院のとりくみ状況についても、報告において言及することとしている。
56歳以上を対象とした賃下げはただちに撤回せよ
これに対して、黒田事務局長は、賃下げの問題にしぼって以下の点を追及し、56歳以上を対象とした賃下げの撤回を求めました。 ○
月例給・一時金ともに2年続の引き下げは断じて認められない。賃下げ勧告は、600万人の公務関連労働者はもとより、多くの民間労働者にも影響する。そ
のことが「デフレ不況」をさらに悪化させることになる。人事院勧告の社会的影響力をふまえれば、賃下げはきわめて重大だ。 ○ 対象範囲は限定したものの、56歳以上の職員への給与削減をあくまで強行することは断じて認められない。民間で一定年齢での減額措置がある企業は、非管理職で3割、管理職でも4割にとどまっているのに、公務で実施する合理定な理由がどこにあるのか。 ○ そもそも、同じ仕事をしていながら年齢で区切って給与を引き下げるやり方は、人事院が一貫して守り続けてきた職務給の原則にも真っ向から反するものだ。「民間準拠」のなのもとに、公務の職務給原則を崩していいのか。 ○ 職場からは、「減給処分をうけたのと同じ」「56歳になればやめろということか」などの声が集中している。経験を積み上げてきた職員の働きがい、公務にたずさわっていることへの誇りや尊厳を考えれば、こんな乱暴なことはできないはずだ。 ○ 職員の声を聞かず、あくまでも強硬な姿勢を取り続けることは、政府の総人件費削減の方針に追随・迎合しようとする姿勢のあらわれと受け取らざるをえない。そのことは、労働基本権制約の「代償措置」としての人事院勧告制度の本来の役割を踏みにじるものでしかない。 ○
来年にむけて、若手・中堅層の1号俸上位への調整措置が示されたが、だからと言って56歳以上の賃下げが許されるものではない。労働条件の不利益変更を
ともなう以上、十分な交渉・協議が必要であることは言うまでもなく、公務にふさわしい給与制度のあり方を時間をかけて労働組合と話し合うべきだ。
また、交渉参加者からは、賃下げによるモチベーションの低下、将来の生活設計への不安などがのべられ、「職場では中心的に仕事を支えているのが50歳代
だ。そうした職員の仕事へのやる気をなくさせるものだ」とのべ、また、2年連続のマイナス勧告に対して、「人員不足のなかで懸命に働いている職員の労苦に
応えるものではない」などと厳しく指摘しました。 これに対して人事院側は、「上がるときも下がるときも、民間給与にあわせるのが基本だ。今は厳
しいが、理解いただきたい」などとのべたことから、「今は厳しいと言うが、いつまでガマンすればいいのか、年収で過去最大規模の引き下げとなった昨年の勧
告は、明らかに今年の民間賃金に否定的な影響を与えている。賃下げの悪循環がおきていることに、人事院は目をむけるべきだ」とせまりました。 しかし、人事院側は、「国家公務員28万人だけでなく、人事院勧告が影響を与える責任の重さをうけとめている」とのべるにとどまりました。
最後に、山口議長は、「本日の回答は断じて認められない」と表明し、「強調しておきたいのは、公務の第一線で誇りを持って仕事を続けてきた職員の尊厳や働
きがいを失わせる点だ。そこに、単なる賃下げとはまったく質の違う問題があることを人事院は認識すべきだ。国会では公務員総人件費削減を競い合い、乱暴な
議論がまかり通っている。人事院は、中立的な立場から公務にふさわしい給与制度を提起していく役割があるはずだ」と厳しく指摘し、「道理もなければ、合理
性も納得性もない賃下げの撤回をあらためて求める」とのべ、交渉を閉じました。
酷暑のなか最後までたたかい抜いた人事院前座り込み
8月2日から連日取り組んできたマイナス勧告、56歳以上の賃金引き下げ阻止をめざした人事院前座り込み行動も6日が最終日となりました。 6日は、厚生労働省で最低賃金の目安額答申がおこなわれることから、全労連・国民春闘共闘・公務労組連絡会が力を合わせ、「最賃・人勧」を一体にした行動としてとりくまれ、多くの民間労組も参加しました。 10時からのスタート集会では野村公務労組連絡会副議長があいさつし、東京地評の伊藤議長の連帯・激励あいさつでは、「国民の願いは景気回復だ。一時金が下がれば東京オリンピック以来の月数となる。ともにがんばろう」と呼びかけました。 秋山公務労組連絡会事務局次長からは、人事院との交渉経過が詳細に報告されました。続いて国公労連・全気象坂本副委員長、自治労連松田中執、全教千葉前田副委員長がそれぞれ決意表明をおこないました。
昼休みの要求行動では、宮垣公務労組連絡会副議長の主催者あいさつに続いて、全労連・全国一般の遠藤特別中執が、参加者に激励のあいさつをおくりました。
その後、闘争報告した黒田事務局は、5日間の座り込みへの協力に感謝するとともに、全国にひろがった怒りとたたかいが、人事院を確実に追い込んでいること
を強調しました。 国公労連・全医労香月書記次長、東京自治労連の吉川書記長、静岡高教組の塚田副委員長の決意表明がつづきました。 13時すぎからは、国公労連と人事院事務総長との最終交渉に対し、シュプレヒコールで交渉団を激励しつつ、座り込み行動は続きました。 その後、国公労連との交渉内容を、人事院から出てきたばかりの岡部書記長が報告し、全労連の伊藤常任幹事からは、本日答申された最低賃金目安額にかかわって、報告を受けました。 8月2日から6日まで、酷暑のなかでの座り込みは、連日100名を超える仲間が職場の声を代弁して、決意表明やリレートークなどで怒りをぶつけました。 引き続くたたかいにむけて、職場・地域からの奮闘を誓い合って行動を終了しました。
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