No. 732
2009年11月30日
給与法成立へ、公務員の生活悪化は重大

= 地域経済を冷え込ませ、「デフレ」克服の政府方針にも逆行 =

 臨時国会に10月27日に上程され、審議されていた一般職国家公務員の給与法 案は、育児休業法の改正法案などとともに、11月30日の参議院本会議で可決・成立しました。
 月例給・一時金ともに大幅に引き下げ、15万4千円の年収減となる給与法案は、公務労働者の生活を直撃するだけでなく、民間賃金にも影響を与えて地域経 済をさらに冷え込ませることになります。「デフレ不況」克服が叫ばれるなかで、国会審議で景気回復の観点からの議論が深められなかったことは重大です。
 給与法は、30日中に公布、12月1日から施行され、12月の一時金で、4月にさかのぼって「減額調整」されることとなります。
 公務労組連絡会は、27日の参議院総務委員会への傍聴行動を配置し、7名(国公労連5、自治労連1、事務局1)が参加しました(法案審議の概要は別 掲)。また、給与法成立にあたって、事務局長談話を発表し、たたかう決意を内外に明らかにしました(別掲)。

「デフレ宣言」が出されるなかで景気はさら に悪化

 27日午前から午後にかけて開かれた参議院の総務委員会では、与党の国会運営に抗議して自民党が欠席するなか、那谷屋正 義(民主)、又市征治(社民)、魚住裕一郎(公明)、山下芳生(共産)の各議員が質問に立ちました。
 共産党の山下議員は、この約10年間で国家公務員の年収が100万円以上も減額されてきた事実を示し、「公務員の将来不安も大きくなっている。一生懸命 働いても賃下げされるのでは、職員の士気にもかかわる。そのことで公務サービスが低下することも懸念される」とのべ、使用者責任を追及しましたが、原口総 務大臣は、「そのことは、よくわかっている。しかし、人事院勧告は公務員の労働基本権制約の代償措置であり、最大限尊重すべきだ」と衆議院と同じ答弁を繰 り返しました。
 また、山下議員が、民間賃金にも影響し、賃下げと不況のスパイラルに陥る点をあげ、政府からも「デフレ宣言」が出され、「菅副大臣も内需拡大を強調して いる政府の方針とも逆行する」ときびしくせまりました。
 これに対して、原口大臣は、「不況が悪化しないように、政府として景気対策にむけた予算措置をしていく」とのべたことから、山下議員は、「デフレの原因 は、国民所得が減りつづけるなかで、消費が拡大しないことにある。単に『民間準拠』にとどまらず、景気回復のためにも賃上げが必要だ」とのべ、不況打開に むけた賃金改善を求めました。

労働基本権回復へ原口総務大臣から前向きな答弁

 質疑では、労働基本権をめぐっても、やりとりがありました。山下議員が、消防職員の団結権をはじめ、争議権をふくむ公務 員の労働三権保障を求め、見解をただしたことに対して、原口大臣は、「その通りだ。労働三権が保障されるべき。これまでの政府は、責任を果たしてこなかっ た。だからILO勧告が何度も出された。消防職員の団結権回復も検討を指示した」と明確に答弁しました。
 また、国民の理解を得ていくためには、労働者の権利に対する知識をひろげることが重要であるとして、「労働基本権を基本的な権利として、すべての国民に 共有してもらう。労働者としてのみずからの権利を自覚してもらわなければ、権利が絵に描いた餅になる。争議権回復も検討していくべき」とのべ、さらに、 「公務員の権利が保障されてこそ、しっかりとした公共サービスが提供できる」として、労働基本権回復にむけた原口大臣の見解が表明されました。
 すべての議員の質疑が終わった後、討論に入り、共産党の山下議員が反対討論をおこない、その後、各法案の採決に入りました。一般職の給与法案は、共産党 を除く与野党の賛成多数により、また、育児休業法の改正法案と特別職給与法案は、全会一致で採択されました。

国家公務員給与法の成立にあたって(談話)
2009年11月30日
公 務 労 組 連 絡 会
事務局長 黒田 健司

1、第173回通常国会で審議されていた一般職国家公務員の給与法案は、本日開かれた参議院本会議において、共産党を除く 与野党の賛成多数により可決・成立した。同時に審議されていた国家公務員の育児休業法の改正法案も全会一致で可決された。
 月例給・一時金ともに今年4月にさかのぼって引き下げる給与法は、即日公布され、12月の一時金での「減額調整」が強行されることとなる。過去最大規模 となる15万4千円もの年収減によって、公務労働者の生活悪化とともに、地域経済をいっそう冷え込ませることは避けられず、きわめて重大である。

2、公務労組連絡会は、政権交代のもとで、自公政権による勧告実施の閣議決定は撤回し、景気への悪影響もふまえた慎重な判 断を鳩山新政権に求めてきた。
 国会審議でも、公務員給与削減が民間の賃下げを招き、デフレ不況をさらに悪化させることや、公務員総人件費削減の「構造改革」路線のもとで、労働基本権 制約の「代償措置」としての人事院勧告制度が、政治的な圧力によってゆがめられてきた問題が指摘された。
 これに対して、原口総務大臣が、「検証の必要性」を答弁しながらも、「勧告制度の尊重」とする従来の政府の立場を繰り返し、公務員の大幅賃下げを正当化 したことは認められるものではない。

3、一方、「技術的助言」などと称して、地方自治体に「国準拠」の賃下げや自宅に係る住居手当廃止をせまる総務省の不当な介入・圧力にかかわって、原口大 臣が「撤回・廃止する」と答弁したこと、さらに、労働基本権をめぐって、消防職員の団結権回復をはじめ、公務員の争議権をふくむ労働三権の回復へ前向きな 見解が表明されたことは、度重なるILO勧告やわれわれの要求に応える点で評価できるものである。
 とりわけ、労働基本権にかかわっては、現在、検討がすすむ協約締結権の速やかな回復はもとより、憲法原理とILOが示す国際労働基準にもとづいて、「公 務員制度改革」の重要課題に位置づけ、具体的な検討を求めるものである。

4、今臨時国会では、連立与党が中小企業金融円滑化法案を強行採決したことにより、国会審議の混乱を招き、給与法案も、自民党・公明党などが審議拒否する なかにあって、衆議院でのスピード審議、採決強行がねらわれた。
 前政権の常套手段ともなっていた強行採決は、反対意見を封じ、議会制民主主義をふみにじる点で断じて認められるものではなく、「数の力」をかりた暴挙に あらためて抗議する。
 公務労組連絡会は、賃下げの給与法施行が強行されるもとで、労働基本権の全面回復、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の生活改善、公務・公共サー ビスの拡充にむけて、共同をひろげてたたかう決意を新たにするものである。

以 上