必ずしも従うべきではなく主体性をもって対処する 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、山口議長を先頭に、黒田事務局長、蟹沢・鈴木の各事務局次長、木原・柴田の各幹事、自治労連から野村書記長、全教から北村書記長が出席しました。 全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、石附(宮城県)、宮崎(横浜市)、江橋(茨城県)、福間(愛知県)、綾田(大阪府)、高升(広島県)、池田(愛媛県)、永次(福岡県)の各人事委員会代表ほかが出席しました。
はじめに、山口議長は「申し入れ書」(別添)を内田会長に手交し、「今年の人事院勧告は、月例給・一時金ともに引き下げられた。公務労働者の生活改善を求
める声に何ら応えるものではない。人事委員会としては、賃下げの人事院勧告に追従するのではなく、地方公務員の生活改善にむけた積極的な立場での検討を求
める。サービス向上へ日々奮闘している職員の努力に応えるうえで、引き続き、全国の人事委員会では、地方公務員の給与・労働条件改善にむけた努力を求め
る」と要請しました。 また、自治労連の野村書記長は、「公務・公共サービスを支えている臨時・非常勤職員の処遇改善は不可欠だ。人事委員会とし
ても、積極的な対応を求める。また、住宅をめぐる環境は、国と地方の公務員ではまったく違っており、国の自宅に係る住居手当の廃止は地方に適用するべきで
はない。定年制延長は、年金支給との関わりで選択制も必要だ。総合的な政策として検討すべき」と求め、また、全教の北村書記長は、「義務教育特別手当の削
減、調整額の削減に加え、地方がマイナス勧告になればトリプルパンチだ。また、住居手当は廃止するのではなく、改善にむけて人事委員会で積極的な対応をは
かるよう求める」と申し入れました。 これに対して、内田会長からは、以下の回答が示されました。
【全人連・内田会長回答】 ただいまのみなさんからの要請につきましては、確かにうけたまわりました。早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。 最近の経済情勢を見ますと、政府の月例経済報告によれば、景気はこのところ持ち直しの動きがみられるとしてはいますが、「厳しい状況」にあるという判断は春先から依然続いております。
こうしたなか、昨日、人事院の勧告が行われましたが、本年の民間給与との較差は「863円、0.22%」で、公務員給与の方が民間給与を上回るとしており
ます。この較差を解消するため、俸給表の引き下げ改定に加え、自宅に係る住居手当を廃止するという内容になっています。また、特別給については、すでに6
月期の支給月数を0.2月凍結したところですが、民間給与実態調査の結果を踏まえ、これをさらに上回る年間で0.35月の引き下げ改定を勧告しておりま
す。 一方、時間外労働の割増率等に関する労働基準法の改正を踏まえた見直しを行うとともに、仕事と生活の調和をはかる勤務環境の整備のため、育児休業等に関する法律の改正について、意見の申出を行っております。
詳細につきましては、これから人事院の説明を受けるところですが、人事院の勧告は、必ずしも、これに従うべきものではないとは言え、今後の各人事委員会の
勧告作業にとっていろいろな意味で参考となるものであり、その内容については、これから充分吟味する必要があろうかと考えます。 現在、各人事委員会では、秋の勧告に向けて、鋭意、作業を進めているところです。 いずれにしましても、今後は、みなさんからの要請の趣旨も十分考慮しながら、それぞれの人事委員会が、地域の実情を踏まえつつ、秋の勧告に向けて、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。 全人連としても、各人事委員会の主体的なとりくみを支援し、各人事委員会の横の連絡はもとより、人事院と人事委員会との間の意見交換等にも努めてまいります。 公務員の給与を取り巻く環境は、引き続き厳しい状況にありますが、人事委員会といたしましては、本年も、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしていく決意であります。
(財務省要請)財政の責任者として景気回復の観点から検討を 09人勧の取り扱いにかかわって、前日の総務省、厚労省につづいて、12日に財務省に「要求書」を提出し、月例給・一時金ともに引き下げた09人勧を実施しないこと、労働組合との時間をかけた十分な話し合いをおこなうことなどを求めました。 財務省への要請には、山口議長、黒田事務局長、鈴木事務局次長、高橋幹事が参加し、財務省側は、主計局給与共済課の神田課長ほか、地方財政担当者などが対応しました。
要請では、第一線で働く公務労働者の実態を具体的に示し、そうした職員のモチベーションを下げるような賃下げは断じて実施すべきではないことを強く求めま
した。また、プライマリーバランスの黒字化にむけては、景気回復が前提になっていることからも、財政の責任者として、賃上げによる景気対策を検討すべきと
主張しました。 神田課長は、「要求はうけたまわった。勧告は、労働基本権の代償措置として尊重すべきであり、国の財政事情など国政全般との関係で適切に対処されるべきと考える」とし、引き続き給与関係閣僚会議で議論していくとのべました。
以 上
【全人連への要請書】
全国人事委員会連合会 会長 内田 公三 様
地方人事委員会の勧告に関する要請書
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けた努力に敬意を表します。 人事院は11日、官民較差がマイナス0.22%になったとして、若年層など一部を除いて一般職国家公務員の月例給を引き下げるとともに、持家に係る住居手当の廃止、一時金の0.35か月減額などを内容とした勧告をおこないました。
勧告は、昨秋以降の経済危機背景にした民間給与の引き下げ、ボーナス減額などを理由に、公務員の大幅な賃金引き下げを狙う不当なものです。一時金は、すで
に5月の異例の臨時勧告で、夏期ボーナスに関して2.15か月分のうち0.2か月分が暫定措置として「凍結」されるなか、年間の引き下げ幅は、99年度の
0.3か月減額を上回る過去最大となり、これに、月例給引き下げが加われば、公務員の生活悪化を加速させる深刻な事態となります。 一方、ここ数
年、多くの地方自治体が、財政危機を口実に賃金の独自カットをおこなっていますが、自治体当局や地方議会が、勧告や労使合意を無視して給与切り下げを強行
することまでが起きており、地方公務員の生活水準の低下を招くばかりか、地域経済を冷え込ませるものとなっています。 私たちは、地方公務員の給
与・勤務条件が、人事行政や職員の人材確保等とも深く関わるなど、地方自治の有り様とも不可分に結びついていること、さらに地域での給与水準において「標
準性」を持っており、地方の公務・公共関連労働者の給与等の水準、年金・生活保護など社会保障の給付水準、最低賃金など「ナショナルミニマム」などに影響
を及ぼし、住民の暮らしや地域経済に大きな影響を与えるものと考えます。 これから各地の人事委員会においても本年の勧告にむけた作業にとりかかるものと考えますが、各地の人事委員会勧告にあたっては、下記事項をふまえて、その実現に向けて努力されることを強く要請するものです。
記
1、地方公務員・関連労働者の暮らしを守り、「全体の奉仕者」として職務に専念できるよう、月例給を引き下げる人事院勧告に追随することなく、初任給をはじめ生活に見合った賃金・労働条件の改善・充実をはかること。 2、一時金については人事院勧告の0.35か月の大幅減額に追随せず、生活改善をめざして現行水準を維持すること。 3、今年度については、比較対象企業規模を「100人以上」にするなど積極的な改善を行うこと。 4、超過勤務縮減へ向けた具体的措置を講じること。 5、人事委員会の勧告と関わりなく行われている「賃金カット」などの労働条件の切り下げに対しては、即時中止を求めるなど毅然とした対応を行うこと。 6、独自に「賃金カット」を行っている自治体は、実態賃金との比較で公民較差に基づく賃金改善を行うこと。 7、非常勤職員等非正規職員の賃金及び労働条件の改善を行うよう勧告すること。 8、地方公務員の給与水準問題について、「同一労働・同一賃金」の立場に立ち、地方公務員給与の水準を守り、地域間格差拡大を行わないこと。 9、給料表については、職務による格差の拡大、中高年層の給与の抑制をやめ、生計費原則に立った構造とすること。査定昇給及び勤勉手当の格差拡大の導入は、人事評価制度の未確立の状況を踏まえ、当該労働組合との交渉経過等を尊重し、慎重に対処すること。 10、
教員の給与勧告にあたっては、義務教育費国庫負担金の見直しなどの動向に影響されず、地方公務員法および教員人材確保法にもとづき、文科省「教員勤務実態
調査」の結果を踏まえた適正な教員給与水準を確保すること。なお、教員モデル給料表を提示するにあたっては、級間格差を拡大せず、1級水準を改善するとと
もに、2級の水準引下げを絶対におこなわないこと。 11、地方公務員における持ち家に係る住居手当については、人事院勧告で示された国家公務員の持ち家部分の廃止との違いを明らかにし、地方自治体の住宅保障政策としてさらに充実させる立場で対応すること。 12、憲法とILO勧告に基づき公務員労働者の労働基本権を保障するなど民主的公務員制度確立にむけ積極的に政府に働きかけること。 13、公務員の高齢対策について、60歳の定年年齢を65歳まで延長する仕組みを検討するにあたっては、本人選択に配慮するとともに、早期退職による不利益をもたらさず、60歳前後の賃金水準を大きく低下させることのないよう慎重に行うこと。
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