No.708
2009年4月30日
不確定なデータで大幅削減の合理性はあるのか!

= 一時金「凍結」勧告の中止を求めて人事院を厳しく追及 =

 公務労組連絡会は30日、夏季一時金削減にかかわって、人事院との交渉に臨みました。交渉では、人事院が5月1日に夏季一時金の一部「凍結」を勧告することを表明、これに対して、労働組合との十分な話し合いもないこと、わずか2千社程度の民間企業のデータで、そのうち2割しか夏のボーナスが確定していない調査結果で一時金削減を強行することの不当性を指摘し、人事院を厳しく追及しました。
  これに対して、人事院は、「情勢適用の原則のもと、必要な勧告をおこなうことは人事院の使命だ」などとして、あくまで勧告を強行する構えを変えませんでした。

 

「暫定的」「凍結」など称して実質的に大幅引き下げ勧告ねらう

 人事院との交渉には、公務労組連絡会から山口議長を先頭に、黒田事務局長、蟹澤事務局次長、柴田・門田の各幹事が出席しました。人事院は、給与局第一課の近藤課長補佐が対応しました。
  はじめに、山口議長は、「28日に人事院から特別調査の結果の概要について説明をうけた。その際、最終的な集約結果は示されなかったものの、必要に応じて勧告する旨の表明があった。きわめて重大な態度表明であり、公務労組連絡会として、あらためて勧告作業の中止を求める」とのべ、人事院の見解を求めました。
  近藤課長補佐は、以下のように回答しました。
(1) 本年の民間企業における夏季一時金に関しては、春闘の回答、妥結状況において非常に厳しい結果が出ていることがうかがわれたことから、本院として、民間の夏季一時金の状況を緊急に把握するための特別調査を実施した。この調査によると、賃金改定期に決定した企業は全体の約2割であり、産業別にみると、製造業では20%を超えるマイナスであるのに対し、製造業以外では6%程度のマイナスとなっており、業種別による相違が大きい状況が見受けられる。夏季一時金の対前年増減率を調査対象となった企業の全従業員ベースでみると、平均でマイナス13%台と厳しい結果になっている。
(2) 公務の特別給は、民間企業における前年冬と当年夏の過去1年間の賞与の支給実績を精確に調査して月数換算したものと比較し均衡を図ってきており、この方法を変えるつもりはない。しかしながら、このような調査の結果をみると、民間企業における本年の夏季一時金は、平均で昨年より1割以上減少することがうかがえることから、本年6月期の特別給について、給与法に規定する支給月数をそのまま支給することは適当でなく、このような状況に対応した何らかの措置を講ずることが適当であると考えられる。
(3) そのため、以下のように、所要の措置について、明日5月1日、勧告を行うことを予定している。
  @ 民調による官民比較の結果に基づくものでないことから現行の支給月数の変更は行わず、暫定的に、6月の特別給の支給月数の一部を凍結するものとする。
  A 凍結分の月数は、マイナス13%台との調査結果を踏まえ、かつ、今回の措置が暫定的な性格のものであることから、一定の余裕を持たせることが適当であることも考慮しつつ、現在、最終的に調整中である。
  B この凍結分の月数は、現行の6月期の期末手当及び勤勉手当の構成比に従い、それぞれ期末手当、勤勉手当に0.05月単位となるよう整理して配分することとする。
   指定職職員については、後で述べる特別給への勤務実績を反映させるための改正を行ったうえで、この特例措置を講ずることとする。
  C この特例措置による凍結分の支給割合に相当する期末手当及び勤勉手当の取り扱いについては、民間給与実態調査の結果に基づき、今年の給与勧告において必要な勧告を行うこととする。
(指定職職員の特別給改正関係)
  次に指定職俸給表適用職員の特別給に勤務実績を適切に反映させるための措置について、明日同時に勧告を行う予定である。
(1) 指定職俸給表適用職員の期末特別手当(合計3.35月)を、在職期間に応じて一律に支給される期末手当と、人事評価の結果等に応じて支給される勤勉手当に改めることとする。その支給割合は、公務部内における役職段階別の配分状況及び民間の特別給の配分傾向を考慮し、ほぼ同じとする。
(2) この措置は、勧告を実施するための法律の公布日から実施することとする。

 みなさんからは、特に本年6月期の特別給の支給月数を暫定的に凍結する措置に関して、厳しいご意見をいただいているが、今回の措置が異例のものであり、職員にとっても予想しなかったものであることは十分認識しているところである。
  しかしながら、公務員給与を社会一般の情勢に適応するよう随時必要な勧告を行うことは、本院の重要な使命であり、また、現下の厳しい経済情勢の下で、今次のように民間の一時金に大幅かつ急速な変動が生じていることがうかがえる場合に、このような状況の変化に適時に対応して適切な措置をとることは、公務員給与に対する国民の理解と納得を確保をする上でも極めて重要であると考える。
  もとより、今回の措置は、これまでみなさんからのご意見もうかがいながら積み上げてきた、給与勧告に基づく公務員の給与決定方式の枠組みを変更することを意図したものではなく、あくまでも、今次の民間の夏季一時金の急激な変化に緊急に対応するための暫定的なものであり、みなさんにおかれては、このような今回の措置の意義およびその必要性について特段のご理解をいただきたい。

凍結分の月数は、みなさんの意見もふまえて最終的に決定する

 この回答に対して、黒田事務局長は、「明日、勧告を出すと言いながら、いまだに金額の提示がない。不利益変更であるにもかかわらず、労働組合との話し合いはまったくおこなわれていない。それならば、5月1日の勧告は中止せよ」と厳しくせまりましたが、近藤課長補佐は、「凍結の月数は、最終の調整中だ」と繰り返しました。
  さらに、調査データについて、「わずか2千社ほどを対象とした実態調査で、しかも、現時点で確定しているのは、2割程度にしかすぎない。それだけのデータで一時金を減らせる合理的な理由にはならない」と問題点を指摘し、「仮に引き下げるならば、5月から開始される精緻な民間給与実態調査の結果を受けて、8月の勧告でやればいいことだ。二重にも三重にもルール違反だ」とせまると、近藤課長補佐は、「今回の勧告は、暫定的なものだ。正式には、これからの民間給与実態調査にもとづいて勧告する」などと言い逃れともとれる回答に終始しました。
  その後、交渉参加者からは、「地方自治体でも勧告の動きが出ている。大企業中心、それもわずか2割の妥結率という調査結果を、地方にも反映させるのか。こんな不確定なデータしか集まらなかったならば、『勧告までにはいたらなかった』というのが人事院として結論であるべきだ」「きわめて意図的だ。いくら、暫定だの凍結だのと主張しても、まだ確定していない民間組合の交渉には確実に影響を与える。景気を冷え込ませることについて、人事院は責任を感じないのか」などと激しいやりとりがつづきました。
  近藤課長補佐は、「凍結分の月数は、最終的な調整中であり、当然、みなさんの意見もふまえて決めることになる。いただいた意見は総裁にも伝える」と回答しました。
  最後に山口議長は、「ルール無視の勧告は、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度を踏みにじるものだ。道理がないことは明らかであり、凍結勧告には断固反対する。労働組合の反対を押し切って勧告を強行するならば、人事院は、歴史的な汚点を残すことになる」と強い口調でのべ、かさねて勧告作業の中止を求めました。

以 上