住居手当廃止、地域別官民給与実態の公表を検討
最終交渉には、公務労組連絡会からは、米浦議長を先頭に、黒田事務局長、蟹澤・鈴木の両事務局次長と高橋幹事、国公労連からは、瀬谷中央執行委員が参加しました。
人事院交渉では、給与局給与第1課の近藤課長補佐、職員福祉局職員福祉課の役田(やくでん)課長補佐が対応しました。
はじめに米浦議長が、「18日に示された民間大手の賃金回答は、かつてなく厳しいものとなったが、公務労働者の要求の切実さは変わらない。経済情勢は厳しいが、人事院が、第三者機関の立場から要求を真摯に受けとめるべき」とのべ、回答を求めました。
近藤課長補佐は、「民間大手の一斉回答では、とくに一時金は昨年と比べ大きく落ち込むなど例年になく厳しく、人事院としてもその動向について注視していかなければならないと考えている。このような厳しい民間の状況のなかで、民調を開始することになるが、現段階における人事院の考え方を示したい」とし、以下のように回答しました。
【人事院最終交渉】
1、労働基本権制約の代償措置としての給与勧告制度の意義及び役割を踏まえ、官民較差に基づき、適正な公務員給与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
俸給表水準の見直しに関しては、まずは給与構造改革の着実な実施が肝要であると認識しているが、適正な公務員給与の在り方については、昨今の経済情勢の激変という状況も注視しつつ、引き続き政府をはじめ広く各方面の意見を聞きながら、情勢適応の原則に基づき検討を続けていきたい。
地域別官民給与の実態については、本年夏の勧告時に公表する方向で検討をすすめる。
なお、幹部職員の特別給の傾斜配分に関しては、人事院としてもかねてから検討を行ってきたところであり、できるだけ早期に結論を得るよう第三者機関、専門機関として検討をすすめる。
2、公務員の給与改定については、初任給を含め民間給与の実態を精確に把握した上で、適切に対処する。
3、給与勧告作業に当たっては、格差の配分、手当のあり方などについて皆さんと十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
自宅に係る住居手当については、本年夏の勧告を目途に廃止の検討をすすめる。また、高額家賃を負担している職員の実情を踏まえた借家借間に係る住居手当の在り方について、引き続き検討する。特地勤務手当の見直しについては、新たな官署の指定基準を整備する方向で検討をすすめる。
4、一時金については、民間の支給水準等の精確な把握を行い、適切に対処する。
5、新たな人事評価制度の任用・給与等への活用については、今後も職員団体等関係者と十分に意見交換しながら、その実施状況を踏まえつつ適切に対処していく。
6、公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者及び皆さんの意見を聞きながら引き続き検討をすすめる。超過勤務の縮減については、関係機関と連携しつつ各府省における在庁時間削減のとりくみの徹底を図るよう努めるとともに、上限目安時間に関する指針の遵守状況を注視していく。
7、平成17年末に改定された「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づく施策が着実に実行されるよう努める。次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の実施について、国家公務員の勤務条件を所管する立場から、適切に対応する。
8、高齢期の雇用の在り方については、段階的に定年年齢を延長することを中心に、その場合の給与水準及び給与体系の在り方等も含め、今年夏に予定されている研究会の報告を踏まえ検討する。
9、心の健康づくりについては、予防や早期発見の取組、相談体制の在り方を中心に検討をすすめる。
10、非常勤職員の休暇及び健康診断の在り方について検討をすすめる。
非常勤職員の問題は、業務運営の方法、組織・定員管理、予算、人事管理方針などと密接不可分の関係にあることから、政府全体として、幅広くその在り方について検討していくことが必要であり、人事院としてもその検討に協力していくとともに、引き続き問題意識を持って考えていく。
「議員立法による一時金引き下げの動きは承知している」
近藤課長補佐は、これに加えて、「とくに一時金は、自動車などが2割から3割減となっており、きわめて厳しいことを懸念している」とのべました。
これに対して、黒田事務局長は、「民間の春闘は、事実上の賃下げであり、民間準拠による給与改定とする回答は、人事院が賃下げを回答したに等しいもので、認められない。厳しいなかでも、職員の生活改善を考えることが人事院の役割だ。たとえば、比較企業規模を100人以上に戻すことなどは、人事院がその気になればできることだ」とのべたうえ、地域別の官民給与の実態の公表や、持ち家の住居手当廃止に反対すること、初任給引き上げへの努力、非常勤職員の給与・労働条件の改善などを主張しました。
交渉参加者は、「一時金の厳しさが念を押すように強調された。議員立法で一時金を引き下げようという政治的な動きがあることは、きわめて重大だ。人事院として毅然とした対応を求める」「経済情勢が悪化し、生活は昨年より苦しくなっている。そのうえ、住居手当の廃止は断じて認められない」「教職員に対するパワーハラスメントにかかわる実態調査では、管理が厳しい学校ほど、精神的疾患につながっている。人事院としても、パワーハラスメントに対する対策の強化を求める」などと追及しました。
これに対して、人事院側は、「議員立法の動きは承知している。あくまで、与党のなかで検討しているものだ。初任給の改善は、民間の動向に注目しつつ、全体の配分とも関わって検討が必要だ」などと回答しました。
最後に、米浦議長は、「状況が厳しければ厳しいほど、人事院が何をやらなければならないのかを真剣に考えるべきだ。住居手当の廃止や、地域別の官民給与の実態の公表などは、勧告にむけた引き続く課題であり、交渉を続けるよう求める」とのべ、交渉を閉じました。
経済情勢の激変にもかかわらず昨年と同じ回答を繰り返す
総務省との交渉では、人事・恩給局総務課の津村課長補佐と遠山課長補佐ほかが対応しました。米浦議長は、「この間の交渉では、11,000円の水準引き上げなど公務労組連絡会の要求に正面から応えていない。現場の職員は、国民の期待に応える公務・公共サービスを提供していきたいと真剣に願っている。そうした職員の思いを真摯に受けとめるべきだ」とのべ、春闘要求への最終的な回答を求めました。
津村総括課長補佐は、以下のとおり回答しました。
【総務省最終回答】
1、人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
平成21年度の給与改定に当たっても、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処してまいりたい。また、これまで同様に職員団体とも十分に話し合い、適切な給与水準が確保できるよう努力してまいりたい。
2、ILO条約について、政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。なお、ILO結社の自由委員会第329、331、340、350次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
3、労働時間の短縮については、昨年9月に改正された「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努めるとともに、関係機関とも連携しながら、政府一体となって更に実効性のあるとりくみをすすめる。
4、公務員の高齢者雇用については、平成25年度から60歳定年退職者について無年金期間が発生することを踏まえ、雇用と年金の連携を図り、高齢国家公務員の雇用を推進する観点から、その在り方について、職員団体のご意見を伺いつつ検討していく。
5、男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画(第2次)」「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実にとりくむ。
6、本年4月から実施される新たな人事評価制度については、同制度が円滑に運用されるよう、一層の制度の周知や評価者訓練に努めていく。
また、皆様とは、納得性のある、信頼性の高い人事評価制度を目指して、今後とも、引き続き意見交換をおこなっていく。
7、非常勤職員の給与に関しては、各府省において、昨年8月に人事院から示された指針に沿った適切な対応がなされていくよう、総務省としても、「平成21年度における人事管理運営方針」にその趣旨を盛り込むなど、各府省の適切な対応を促していく。
非常勤職員については、幅広い問題があるが、必要に応じて各府省の対応状況の把握などを行いつつ、関係機関とも連携して課題を整理し、鋭意検討していく。また、検討の過程においては、職員団体のご意見も伺いながらすすめていく。
8、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意志疎通に努める。
公務員賃金の影響力をふまえ、景気回復にむけた給与改善を
この回答に対して黒田事務局長は、「昨年の回答とまったく変わっていない。この1年間で激変している経済情勢に対する認識も見られない。使用者としての責任が見られない、極めて不満で認めがたい回答だ」と厳しく指摘したうえ、「公務員制度改革」がすすむもと、回答では、公務員の労働基本権回復についてまったく言及がなかったことも追及しました。その他、臨時・非常勤職員の労働条件改善など使用者として政府が責任をもって対処するようかさねて求めました。
交渉参加者は、「定員削減がつづくなか、職員の犠牲で行政サービスを維持している。そのなかで、非常勤職員が増え、劣悪な条件のもとで働かされている。要員の確保はますます重要な課題だ。人事評価制度は、まだまだ不十分であり、成熟度も低い。職員はやる気を失うだけだ」「保育所不足で待機児童が増えるなど、不況のときこそ、公務・公共サービスの役割発揮が求められている。また、公務サービスの安易な民間委託などには反対する」「教育相談ホットラインでは、不況のなかで、入学金がなく進学を断念するなどの相談が寄せられている。内需主導の経済が求められており、多くの民間労働者にも影響する公務員賃金の改善が必要だ」などとのべ、要求実現をせまりました。
これに対して、津村総括課長補佐は、「経済情勢や公務員を取り巻く状況の厳しさは政府としても十分に認識している」と一言のべただけで、参加者から怒りの声もあがりました。
最後に、米浦議長は、「従来通りの『勧告制度の尊重』とする回答は、使用者としての責任が感じられず、きわめて不満なものだ。公務員バッシングも強められているなか、常勤・非常勤を問わず、職員が職務に精励できる賃金・労働条件の改善にむけて、使用者として真剣に検討せよ」と求め、総務省との交渉を終えました。
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