No.692
2008年12月18日
給与法等改正法、19日の参院本会議で成立の見通し

= 総務委員会質疑、超過勤務規制、非常勤職員問題などに集中 =

 一般職国家公務員の給与法等の改正法案、および、退職手当法改正法案は、18日の参議院総務委員会で審議され、全会一致で採択されました。法案は、19日の参議院本会議に上程され、可決・成立の見込みです。
  総務委員会では、とりわけ、臨時・非常勤職員にかかわる質問が集中し、「派遣切り」など雇用不安が高まるなかで、「日々雇用」を強いられる公務職場の非正規労働者の改善を求める声があいつぎました。
  公務労組連絡会は、総務委員会の傍聴行動にとりくみ、4名(国公労連2、全教1、事務局1)が参加しました。

 

「非常勤職員の増加は、正常な姿ではない」と鳩山大臣も答弁

 総務委員会で質問に立ったのは、那谷屋正義・武内則男(民主)、二之湯智(自民)、弘友和夫(公明)、山下芳生(共産)、又市征治(社民)の各議員でした。
  ほとんどの議員の質問で、非常勤職員の問題がとりあげられたのが特徴です。民主党の那谷屋議員は、「定員削減の影響で、非常勤職員の増大が顕著だ。超勤をなくすために、正規職員を確保すべきだし、同一労働同一賃金で、非正規労働者の処遇改善のお手本を官から示す必要がある」とのべ、また、武内議員も、「非常勤職員に対する給与の指針をふまえて、官製ワーキングプアとマスコミに批判されないように、各省を指導すべきだ」と、政府の責任を追及しました。
  これに対して、鳩山邦夫総務大臣は、「あくまで非常勤職員は短時間勤務にすべきだ。常勤と同じ仕事をしているのに、非常勤職員の扱いとなっているのは問題であり、常勤にすべき」と答弁しました。
  共産党の山下議員は、「人事院が示した給与の最低指針は低すぎる。原資が限られているなかで、雇い止めもおこっている。予算の充実こそ必要だ」と指摘し、公明党の弘友議員は、「人事院の指針だけでは不十分だ。人事院規則で示すべきであり、政府・総務省として統一対応が必要だ」とせまりました。また、社民党の又市議員は、「現実的には日雇い生活が強いられている。地方自治体の財政難で正規職員を削減した結果、『官製ワーキングプア』を増やしてきた。これでは安定した住民サービスはできない。危機的状況だ」と政府の責任を追及しました。
  鳩山大臣は、「地方自治体には約50万人の非常勤職員がいる。正常な姿ではない」と認めましたが、「安心して働けるよう一生懸命やっていく」と抽象的な答弁にとどまりました。

長時間・超過密労働がメンタルヘルスにつながっている

 超過勤務縮減にかかわっては、那谷屋議員が、「勤務時間が短くなっても超過勤務が増えては意味がない。勤務時間がどれだけ短縮されたかで管理職の人事評価をすべきだ」とのべ、所定勤務時間の短縮を実効あるものにするよう求めました。
  共産党の山下議員は、1年間で約4千人がメンタルヘルスになっていることを示し、長時間・超過密労働がメンタルヘルスの背景にあることを指摘しました。とりわけ、経済産業省では、1か月あたりの残業が100時間を超える職員が380人もいるにもかかわらず、医師による面接・指導を受けた職員が一人もいなかったことを明らかにし、「本人の申し出がなくとも、月80時間の残業をしている職員全員に、医師の指導を受けさせるような仕組みをつくるべきだ。管理職の研修体制も整備せよ」と求めました。
  鳩山大臣は、「まったく異議はない」としつつも、「部下に膨大な仕事を押し付けている上司の責任もある。超過勤務縮減の努力を管理職の評価項目にも取り入れるべき」などと個人の責任に転嫁する姿勢も見せました。
  質疑では、この他、公務員制度改革にかかわって、人事院の機能を内閣人事局に移すという顧問会議の報告は、労働基本権の代償機能を弱めるもので、憲法違反の疑いがあるとの指摘や、地方財政が悪化するなかで、人事委員会勧告を無視して地方公務員の賃金カットが強行されている問題などが取り上げられました。
  鳩山大臣は、「多くの自治体で人事委員会の勧告を上回る人件費削減が行われているが、国において人事院勧告を尊重しなければいけないように、地方自治体においても、人事委員会の勧告を尊重する必要がある」と答弁しました。

 質疑の後、改正法案は、ただちに採決され、両法案とも全会一致で採択されました。また、法案に対して2つの附帯決議(別掲)が提案され、これも全会一致で採択されました。

【添付資料:参議院総務委員会で採択された附帯決議】

一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び人事院は、本法施行に当たり、次の事項についてその実現に努めるできである。
1、国の医療施設における勤務医確保が喫緊の課題であることを踏まえ、引き続き医師等の適切な給与水準を確保するよう努めるとともに、深刻な社会問題となっている医師不足解消のための抜本的な対策を講ずること。
2、本府省業務調整手当の導入に当たっては、必要な人材確保など手当の導入趣旨と本府省における勤務の実態を十分踏まえ、適切に支給対象範囲を定めること。
3、長時間にわたる超過勤務が、職員の心身の健康、人材確保等に重大な影響を及ぼしていることにかんがみ、その縮減を図ること。また、職員が超過勤務命令を受けずに相当時間にわたって在庁している勤務の実態について早急に調査し、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
4、いわゆる常勤的非常勤職員については、職務内容及び経験等を踏まえた適正な給与を支給するとともに、休暇、休業及び福祉の在り方に関して検討を行い、常勤職員との不均衡是正に取り組むこと。また、任用形態・勤務形態の在り方について結論を得るよう努めること。
5、公務員制度改革を推進するに当たっては、労働基本権の在り方を含め、職員団体等の十分な意見聴取と理解の下、国民の理解が得られる結論を得ること。

国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び人事院は、本法施行に当たり、次の事項についてその実現に努めるべきである。
1、昨今の一部幹部職員の不祥事等に対し国民の厳しい批判が寄せられていることにかんがみ、綱紀の粛正をさらに徹底するとともに、行政及び公務員に対する国民の信頼を確保するための措置を引き続き検討すること。
2、退職手当・恩給審査会における公平・公正な審査が確保されるよう、委員の人選及び審査手続について配慮すること。また、退職手当の支給制限及び返納・納付に係る処分を行うに当たっては、特に遺族、相続人の取り扱いを含め、十分慎重な対応を図ること。
3、退職手当制度の見直しの趣旨にかんがみ、退職手当の一部支給制限及び一部返納制度については、公務規律の弛緩を招くことがないよう、厳正かつ公正な運用に努めること。また、いわゆる諭旨免職についても、適切な対応を図ること。
4、今回法律上の措置が講じられていない非特定独立行政法人等については、各法人に対し、国家公務員の場合に準じた検討を行い、必要な措置を講ずるよう要請すること。

以 上