No.691
2008年12月11日
給与法などの改正法案が衆議院を通過

= 全会一致で可決、今臨時国会で成立の見通し =

 所定勤務時間の15分短縮などをふくむ「一般職国家公務員の給与に関する法律等の一部を改正する法案」は、12月2日に国会に提出され、11日午前中の総務委員会で質疑がおこなわれました。
  改正法案は、総務委員会で全会一致で採択され、午後に開かれた衆議院本会議で可決されました。法案は参議院に送付され、来週の委員会審議が予想されており、法律は今臨時国会で成立の見通しです。
  公務労組連絡会は、総務委員会の傍聴行動に取り組み、法案審議を監視しました。

 

日々雇用など不安定な非常勤職員の労働条件を守れ

 総務委員会で質問に立ったのは、土屋正忠(自民)、伊藤渉(公明)、福田昭夫・森本哲生(民主)、塩川鉄也(共産)、重野安正(社民)の各議員でした。
  所定勤務時間の短縮にかかわって、公明党の伊藤議員は、「15分短縮されたが、仕事の量は変わらない。業務の見直しがなければ、サービス残業が増えるだけではないのか」と質しましたが、人事院は、「公務能率のいっそうの向上につとめ、行政サービスを維持する。超過勤務が増えるようなことはない」と答弁しました。その一方で、伊藤議員は、給与にかかわって「(金融危機など)勧告時点から状況が変わっている。きびしい状況を考えれば、50億円の給与改善費も抑制すべきではないのか」などと、国会議員歳費をふくめた人件費削減を主張しました。
  各党からは、非常勤職員の賃金改善に関する質問が集中しました。民主党の福田議員は、国の職場に常勤的な非常勤職員が約2万人いるとの総務省の答弁をうけて、「昨年の国会審議で、非常勤職員の労働条件改善を求める附帯決議が採択されている。政府は、決議にしたがって、非常勤職員の人数を管理するなどきちんとやるべきだ」と追及したことに対して、総務省人事・恩給局長は、「幅広い業務についており、何が恒常的なのか定義がむずかしく、正確な人数の把握は困難だ」と明言を避けました。
  共産党の塩川議員は、「非常勤職員は、日々雇用で不安定ななかで働いている。いま大企業で問題となっている『派遣切り』も起こりうる。公務の職場でそうなれば、国民サービスの面からも問題だ」と指摘しました。また、社民党の重野議員が、「総人件費削減のため、常勤職員が非常勤職員に置き換えられている。政府全体として、雇用対策を重視しているときに、由々しき事態だ。非常勤職員の雇用対策を確立せよ」と政府の責任を質すと、鳩山邦夫総務大臣は、「もっともな指摘だ。正規も非正規も同じように働いている。重大な問題であり、個別、具体的に精査していくべきだ」とのべましたが、「総人件費削減の国のスリム化は間違っていない」などと主張しました。

人事院機能の内閣人事局への移管は憲法上の問題あり

 共産党の塩川議員は、医師の初任給調整手当の改善に触れ、国立療養所など独立行政法人の医師との均衡をとるため平均で約11%引き上げられるが、民間病院の医師は独立行政法人よりも給与が高く、民間との給与格差が残る。もう一歩踏み込んだ改善が必要だ」と指摘しましたが、人事院の吉田給与局長は、「国と民間では、年収で260万円の格差があるが、人材確保の点では、設備面などで国が優位性を持っている。したがって、独立行政法人との格差を補うことにした」などと答弁しました。
  また、現在、議論がすすんでいる「公務員制度改革」についても質問が出されました。民主・福田議員が、「顧問会議の報告では、内閣人事局に給与・任免などにかかわる人事院の機能を移管するとしているが、公務員の労働基本権制約のもとで、そんなことが可能か」との質問に対して、谷人事院総裁は、「労働基本権制約の代償措置として人事院があり、内閣人事局に人事院の機能を移すと、憲法上の問題にかかわってくる。慎重に検討すべきであり、労働基本権が制約されている限り、代償措置は必要だ」と、公務員制度改革推進本部の顧問会議報告の問題点を明確に指摘しました。
  約2時間半の質疑の後、法案の採決に入り、給与法等の改正法案、および、退職手当法等の改正法案は、それぞれ、全会一致で採択されました。また、各党の共同提案による附帯決議も採択されました(別掲)。
  午後からは、衆議院本会議が開かれ、2つの法案が上程され、委員会と同様に全会一致で可決され、法案は、ただちに参議院に送付されました。

【資料:総務委員会で採択された附帯決議】

一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び人事院は、次の事項について、十分配慮すべきである。
1 医師不足が深刻な社会問題となっている中にあっては、医師等の初任給調整手当の増額は公務における医師確保のための対症療法に過ぎないことを銘記し、医師不足解消のための抜本的な対策を講ずること。
2 本府省業務調整手当の導入に当たっては、本手当導入の趣旨と本府省における勤務の実態を十分踏まえ過不足なく支給対象範囲を定めること。また、本府省職員が長時間にわたる超過勤務を余儀なくされていることが、職員の心身の健康と本府省ひいては公務全体における人材確保に重大な影響を及ぼしていることにかんがみ、本府省職員の超過勤務の実態把握を行い、早急にその適正化を図ること。
3 非常勤職員について、早急に勤務の実態把握を行い、公務における位置付けを明確にするとともに、常勤職員との処遇の不均衡の是正、任用形態・勤務形態の在り方の検討などに取り組むこと。
4 勤務時間の短縮に当たっては、これまでの行政サービス水準を維持し、かつ、行政コストの増加を招くことのないよう、公務能率の一層の向上に努めること。
5 公務員制度改革については、労働基本権の在り方を含め、職員団体等の意見を十分聴取し、国民の理解を得るよう最大限努力すること。

国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び人事院は、次の事項について、十分配慮すべきである。
1 昨今の一部府省の幹部職員の不祥事等に対し国民の厳しい批判が寄せられていることにかんがみ、綱紀の粛正をさらに徹底するとともに、行政及び公務員に対する国民の信頼を確保するための措置を引き続き検討すること。
2 退職後、在職期間中に懲戒免職等処分を受けるべき行為があったと認められた場合の退職手当の支給制限及び返納・納付制度の運用に当たっては、自ら非違行為を行なわず、反論の手立ても乏しい遺族、相続人の取扱いについては、慎重な配慮を行なうこと。
3 退職手当の一部支給制限及び一部返納制度については、これにより、いたずらに制裁としての効果を希薄化させ、公務規律の弛緩を招くことがないよう、厳正かつ公正な運用に努めること。また、いわゆる諭旨免職については、今回の退職手当制度の見直しの趣旨にかんがみ、適切な対応を図ることとすること。
4 今回法律上の措置が講じられていない非特定独立行政法人等については、各法人に対し、国家公務員の場合に準じた検討を行い、必要な措置を構ずるよう要請すること。

以 上