No.687
2008年11月10日
労働基本権めぐりアメリカに調査団を派遣

= 連邦政府・各州の公務員制度の実態を調査・交流 =

 公務員の労働基本権をめぐって、政府の労使関係制度検討委員会で議論がはじまるもと、全労連・公務員制度改革闘争本部は、アメリカの公務員制度の実態を調べるため、調査団を派遣しました。
  8日間におよぶ調査では、連邦政府、州・自治体の職場や仲裁・調停機関を訪問するとともに、UE(アメリカ電気・通信・機会労組、公務組合も加盟)やAFGE(連邦政府職員連合)との交流を深めるなど精力的な活動を繰りひろげました。

 

団体交渉を法律で禁止しているノースカロライナ

 アメリカ労働基本権問題調査団は、闘争本部の黒田事務局長(公務労組連絡会事務局長)を団長に、布施全労連常任幹事・国際局長、岡部国公労連書記長、柴田自治労連事務局次長、本田全教副委員長、加門日高教副委員長の6名が参加し、一行は10月17日に日本を発ち、27日夕刻に帰国しました。

  今回の調査団は、ウエストバージニア州・チャールストンで開かれた「公務・公共サービス国際交流会議」に連動してとりくまれたもので、国際交流会議には、調査団の6名に加え、川西自治労連副委員長、自治労連弁護団の尾林弁護士が参加しました。
 06年には日本で開催され、今回で5回を数える「公務・公共サービス国際交流会議」では、アメリカ(UE)、カナダ(CSQ、SFPQ)、メキシコ(FTA)、インド(NTUI)など各国の労働組合の代表が参加、公務の民営化や公務員の労働基本権などをめぐって、3日間にわたり活発な議論が交わされました。
とりわけ、UEの代表からは、アメリカ国内の各州や自治体の労働基本権の実態が詳細に報告されるとともに、一部の州では、団体交渉権が制約されているなかでの労働組合の運動方向について紹介され、貴重な情報を得ることができました。

 また、調査団は、実際に公務員の団体交渉が法律で制限されているノースカロライナ州の自治体病院や障害児学校を訪問し、組合員からの聞き取り調査にとりくみました。話のなかでは、民営化がすすむなかで、自治体職員の給与支払いが民間会社に丸投げされ、まともな賃金が支払われないにもかかわらず、交渉権や仲裁制度がないために「泣き寝入り」しているひどい実態には、調査団一行も驚かされるばかりでした。
 忙しい調査の合間をぬって、交流・連帯の活動として、自治体当局が1年後の閉鎖をねらっているノースカロライナ州の公立精神病院での抗議行動に参加しました。日本の代表団もプラカードを掲げた抗議行動を展開すると、地元のテレビ局が取材に来るなど注目を集めました。

ワシントンDCでは公務員の仲裁・調停機関で聞き取り調査

 最後の2日間は、ホワイトハウスのあるワシントンDCを訪問、連邦労使関係局(FLRA)、公務労使関係委員会(PERB)での聞き取り調査を実施しました。
  両組織は連邦・自治体での労使紛争の仲裁・調停を受けもつ機関であり、日本の公務員に労働協約締結権が保障された場合の仲裁や調停の制度を考えるうえで、大いに参考になる話を聞くことができました。

  両機関ともにとても親切な対応を受け、FLRAのシマンスキー局長、PERBのカステロ局長から、それぞれ2時間以上にわたって直接レクチャーをうけました。
聞き取り調査では、連邦・自治体における調停の仕組みとともに、実際におこった労使紛争での仲裁方法なども聞くことができ、有意義な情報がえられました。
 さらに、ワシントンDCでは、連邦政府職員連合(AFGE)のロン・ジェームス局長と面談する機会をえました。
 各省ごとの組合の連合体であるAFGEは、日本の国家公務員にあたる連邦職員22万を組織する組織であり、労働基本権や民営化など、日・米の国家公務員に共通する問題での交流もでき、今後、おたがいに連帯を深めていくことも確認しました。
 大統領選挙が約1週間後にせまるなか、それぞれの機関・労組では、アメリカの二大政党制がかかえているさまざまな問題点とともに、その弊害が公務員の労働条件や労働組合活動にもおよんでいることなども報告されました。その点からも、今回の調査活動は、大統領選挙を前にしたアメリカの今の姿を肌で感じることができるという、4年に1回の絶好のタイミングにも恵まれました。

 アメリカでは、連邦職員のストライキ権、交渉権の一部が制約され、州ごとにみても、44州のみ団体交渉権が認められています。こうしたなかでの調査活動の成果を、今後の権利闘争に大いにいかしていく必要があります。

以 上