No.659
2008年5月9日
公務員制度改革基本法案の審議が始まる
= 政官財癒着の根絶、公務員の労働基本権回復が焦点に =
 今通常国会に提出されている「公務員制度改革基本法案」は、5月9日の衆議院本会議で趣旨説明され、各党による代表質問がおこなわれました。
 法案は、来週から内閣委員会での質疑が予定され、自公政権は、公務員制度改革基本法案を重要案件に位置づけ、今国会で成立させる構えです。
 こうしたもと、5月30日に署名提出・要請行動を予定している「公務・公共サービス拡充署名」の最終盤のとりくみ強化が重要となっています。

天下り廃止など政官財の癒着を根絶することこそ改革だ

 午後1時から開会した本会議では、岡下信子(自民)、馬淵澄夫(民主)、上田勇(公明)、塩川鉄也(共産)、菅野哲雄(社民)の各議員が代表質問に立ちました。
 民主党の馬淵議員は、天下りの規制、キャリア制度の廃止などを中心に質問し、「公務員制度改革の核心は、天下り廃止にあるが、法案では、そのことが取り上げられていない。また、試験区分の変更は、渡辺行革担当大臣自身が『スーパーT種をつくる』と言っているように、キャリア制度の温存に過ぎない」と指摘しました。
 福田首相は、「昨年成立した公務員制度改革関連法にもとづいて規制をすすめ、天下りは抜本的に是正される」とのべ、また、新たな試験制度にかかわっては、「試験区分にこだわらず、能力と実績にもとづいて、幹部に登用していく制度だ」と答弁しました。
 共産党の塩川議員は、「なぜ、何のために改革するのか?」と質し、行政のゆがみは、長年の自民党政治による政官財の癒着が招いたものであり、「癒着を許す行政の横行にこそ徹底的にメスを入れることこそが改革に求められているが、法案はそうした内容になっていない」と主張しました。そのうえで、官民の人材交流の促進は、財界の要望にもとづくもので、癒着構造の拡大につながること、国会議員と官僚との接触規制は、国民が求める行政情報の透明化に逆行すること、幹部職員の内閣人事庁による一元管理は、政権与党に奉仕する公務員づくりにつながることなどを指摘しました。
 福田首相は、官民交流が財界の要望であるとの指摘を否定しつつも、「企業側は高く評価している」などとのべ、「公務の中立性や公正性に留意して今後とも促進していく」と答弁しました。また、「官と民がたがいの知識や経験を活用することが必要だ」とし、政財官の癒着を招くという追及をかわしました。

非常勤の労働条件改善へ「どのような方策が可能か検討」と答弁

 塩川議員は、霞が関官庁街を中心とした異常な長時間残業などにも触れ、「不払い・サービス残業が蔓延していることをどう思うか。法案ではそのことをなぜ明記しないのか」と追及し、さらに、「法の谷間で権利も守られず、『官製ワーキングプア』などと呼ばれている非常勤職員の労働条件改善にむけた視点が、法案ではまったくない」と追及しました。
 福田首相は、「法案では、超過勤務の状況を管理者の人事評価に反映させることなどで、業務の簡素化をはかることための措置を講じている。在庁時間の削減や勤務時間管理に努める」とし、また、非常勤職員の労働条件改善は、「課題は多岐にわたるが、現在、人事院が実態把握に努めているところであり、政府としては、これをふまえてどのような方策が可能なのかを検討する」と答弁しました。
 社民党の菅野議員は、「キャリア制度を温存したことや、内閣人事庁の役割が情報提供や助言などにとどまったことは、妥協の産物だ」とのべ、また、協約締結権付与に際して、内閣人事庁を団体交渉の使用者代表にすることや、天下りの背景でもある早期退職慣行の廃止ともかかわって、定年の65歳への延長を求めました。
 福田首相は、定年引き上げは、「民間の実態をふまえれば、ただちに延長はできないが、将来的な課題とし、それとあわせて、給与制度のあり方を検討する」と答弁しました。

協約締結権付与を求めた専門調査会報告からも後退

 代表質問では、与党議員もふくめてすべての質問者が、公務員の労働基本権の検討方向について、政府の考え方を質しました。
 馬淵議員は、「政府の専門調査会の最終報告では、協約締結権の付与が示され、公務員制度改革懇談会も、その報告を尊重すべきとしている。法案は、そうした報告からも明らかに後退している。なぜ、報告を尊重しないのか」とせまりました。
 塩川議員は、「公務員の労働基本権は、60年にわたって踏みにじられてきた。ILOも繰り返し是正勧告している。公務員制度改革のかなめでもある労働基本権回復をなぜ法案に明記しなかったのか。専門調査会が示した協約締結権の付与を、なぜ法案に盛り込まなかったのか」と政府の姿勢を厳しく追及しました。また、菅野議員は、「法案は、専門調査会と懇談会の報告を無視するものだ。ILO勧告に応えるものとなっていない。労働組合など当事者が参加する協議機関を設置し、すみやかに結論を出せ」と主張しました。
 こうした質問が出されるたびに福田首相は、「専門調査会の最終報告は、確かに協約締結権付与を求めているが、その一方では、集中的かつ慎重な検討とともに、改革の全体像を国民に提示して、その理解を得ることが必要不可欠としている。こうした指摘を法案化したものだ」との答弁を繰り返しました。
 さらに、「ILO勧告は、公務員制度改革にあたって労働組合との話し合いを求めている。専門調査会や公務員制度懇談会では、労働組合の代表も交えて検討がすすめられ、報告が取りまとめられた」と強弁し、「検討の時間はかかるが、5年をかけることを前提としたものではない。関係者との率直な話し合いをすすめ、結論を出したい」としました。
以 上