No.649
2008年2月17日
守れ!みんなの年金、幅広い参加で討論
= 社会保険庁「改革」を考えるシンポジウムに240名が集う =
 公務労組連絡会は16日、国公労連との共催でシンポジウム「守れ!みんなの年金、社保庁改革を考える」を東京・全日通会館で開催しました。
 シンポジウムは、中央社保協、年金者組合、新婦人、自由法曹団、全厚生など幅広い団体の後援も受け、宙に浮いた5000万件の年金が問題となるなか、国の責任で安心して暮らせる年金制度を実現しようと、各分野のシンポジストをむかえ、4時間にわたる熱心な討議が繰りひろげられました。
 労働組合、民主団体、一般市民など全国から240人が参加し、広い会場を埋め尽くしました。

今の年金制度の問題点、将来のあるべき姿を討論

 主催者を代表して公務労組連絡会の大黒議長は、「国民は大変な不安な気持ちをかかえている。年金問題の本質を突き止める必要があり、安心できる年金制度確立へ、国民世論を大きく高めていくことが大切だ。ぜひ、活発な討論をお願いする」とあいさつしました。
 シンポジウムは、朝日新聞記者の松浦新氏、中央社会保障協議会の山田稔事務局長、日本大学の永山利和教授、弁護士の菊池紘氏がシンポジストをつとめ、公務労組連絡会の黒田事務局長がコーディネーターとなって進行しました。
 はじめに、黒田事務局長が、シンポジウムの目的などをふくめて問題提起し、シンポジストに発言を求めました。
 松浦氏は、95年から年金の取材を開始し、2000年には厚生年金の空洞化を指摘するなど、現場の豊富な取材経験をふまえ、「厚生労働省は、制度の崩壊を隠し続け、ばれないようにするのが自分たちの仕事だとしてきた。嘘を嘘で塗り固め崩壊したら手がつけられない状態になる。現場に合った制度をつくってほしいという声を、職場からあげていくことが大事だ。いま、現場から立ち上がり、10年、20年後にこんなに良くなったと言えるようにしてほしい」と取材者としての熱い思いを込めて語りました。
 中央社保協の山田事務局長は、全労連と共同で作成したパンフレットを紹介しつつ、「2004年の年金大改悪で『100年安心』の年金制度にするために、年金保険料は引き上げて給付水準は引き下げられた。『構造改革』路線によって制度が破綻し、消費税によって年金の財源を確保しようとしているが、消費税ではなく一般税できちんと支える年金制度をつくれと主張していくことは、差し迫った課題だ」と、将来の年金制度のあるべき姿について語りました。
 行財政総合研究所理事長もつとめ、公務の民営化など「行政改革」にも詳しい永山教授は、今の年金制度の行政・構造「改革」から見た問題点をわかりやすく解説し、「年金制度を振り返ると保険料は当初戦費調達として、高度経済成長期には大型公共事業を支える財政投融資の財源とされてきた。社会保険庁の問題は、職員の勤務態度に問題があるわけではない。政府やマスコミは、職員を『悪代官』にして責任転嫁しようとしているが、本質的な構造に問題が生じている。いま重大な転機に来ており、国民的レベルで怒りを巻き起こすときだ」と指摘しました。
 自由法曹団の事務局長・幹事長を歴任してきた菊池弁護士は、JRによる不当労働行為や全動労採用差別事件など数々の労働事件を担当してきた経験から、社保庁職員の雇用問題を中心に発言し、「日本年金機構に引き継ぐ際に、職員を選別するというやり方は、国鉄民営化と同じだ。専門性・蓄積を抜きにして人数だけを決めることなどありえない。このような無法を許さないためには、年金のあり方をよく知っている職場のみなさんが、国民にどのように明らかにしていくかにかかっている」と、会場に訴えかけました。

最低保障年金の確立を、消費税引き上げは断じて許さない

 フロアーからは、「社保庁の職場は、大変な状況にあるが、年金記録は国民の大切な財産だと思って、毎日、仕事をしている。25年も掛け続けなければ給付を受け取れない制度にも問題がある。安心できる年金制度にするため、全厚生として、全国津々浦々奮闘する決意だ」(全厚生大阪支部)との発言のほか、社会保険労務士、自治労連神奈川県職労からの発言がありました。
 また、女性・青年・年金者などを交えて、将来の年金制度のあり方にかかわる討論がひろがり、新婦人、首都圏青年ユニオン、日本年金者組合の代表など、国民世論を高めていく今後の運動の発展方向もふくめて、積極的な発言がつづきました。
 これらの発言も受けて、シンポジストからは、「民営化に反対する労働組合に責任をかぶせるのは不当労働行為だ。JRの分割・民営化と同様、年金問題もはねかえしていこう」(菊池氏)、「ドイツの制度にならって、年金記録がどこにいてもつながっていて個人の権利が守られているポータビリティ制度の導入を」(永山氏)、「社会保障制度は悪だという考え方が、政府の根底にある。政府・財界が、ごっそり消費税を取ろうとねらっているとき、これからの1年は大変な1年になる。いまがふんばりどきだ」(山田氏)、「会場のみなさんの発言は大変興味深く、取材してみたいところがいくつかあった。真実を伝えて、正々堂々とものを言っていくのは、マスメディアの責任だ」(松浦氏)など、感想もまじえた発言がありました。
 シンポジウムでは、「国の責任で、安心して暮らせる年金制度を実現しよう」と題したアピールを採択し、最後に国公労連の福田委員長は、「はっきりしたことは、社会保険庁の解体・民営化などではなく、国の責任で年金制度を確立することだ。国鉄の民営化によって赤字はさらに拡大した。すでに民営化路線は破綻しており、同じことを社保庁にさせてはならない」と、たたかう決意もこめて閉会あいさつし、シンポジウムを締めくくりました。

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「構造改革」で公務職場はどうなっているのか
= 千葉公務労組などが「2・17公務・公共を考えるシンポ」開催 =

 千葉県公務労組連絡会は17日、千葉県労連、千葉県自治体問題研究所と共同して、「2・17公務・公共を考えるシンポジウム」を千葉市内で開催しました。
 このシンポジウムは、公務・公共サービスの拡充、民主的公務員制度の実現にむけて、全労連が昨年から「市民対話集会」を提起するもと、この呼びかけにも応えて千葉公務労組連絡会が企画したもので、公務単産を中心に、民間組合・市民もふくめて約50人が参加しました。

 主催者あいさつした千葉県公務労組連絡会の山ア議長(県国公議長)は、県公務労組連絡会としては初めて開くシンポジウムであることを紹介し、「格差と貧困を招き、公務・公共サービスを破壊してきた『構造改革』を国民は望んでいたのか。公務の民営化は、サービス向上とはほど遠いものだ。職場から公務労働の意義を訴えよう」とのべ、積極的な討論を呼びかけました。
 シンポジウムは、自治労連本部から田中副委員長を招いて、問題提起もかねた基調講演をうけたあと、県内の公務職場代表4人によるパネルディスカッションに入りました。
 県国公の的場氏(全労働)は、職業安定行政の民営化の問題点などを報告しながら、「労働分野の規制緩和ではなく、働くものが大切にされる社会が必要であり、国としてセーフティネットを確立すべきだ」とのべ、千葉教職組の赤須氏は、教育「改革」のもとでの教育現場の実態を報告し、文科省による「よい子像」の押しつけや、過労死もまねく教職員の勤務実態を明らかにしました。
 自治労連千葉県本部の小林氏は、自治体病院、地域医療を取り巻く現状を報告し、構造的に医師・看護師不足を生み出してきた政府の政策、そのなかでの公立病院を守る地域でのたたかいを紹介しました。郵産労千葉の深山氏は、郵政民営化のもとで人減らしがすすみ、住民サービス低下を招くばかりか、過労によって現職死亡や病気が増えている郵政職場の実態を報告しました。
 フロアー発言では、公務組合だけでなく、千葉土建の参加者からは、公共事業にたずさわる下請けの建設労働者の賃金が、企業の「ピンハネ」によって下がり続けている実態が示され、公契約運動の重要性を指摘する発言もありました。
 4人のパネラーがふたたび発言し、コーディネータをつとめた田中自治労連副委員長が、「昨年の参議院選挙からの情勢の変化も確信にして、市民との対話もひろげながら、公務・公共サービスの拡充をすすめよう」と討論をまとめました。
以 上