No.634
2007年10月12日
労働基本権をめぐる議論が大詰めむかえる
= 政府の専門調査会が19日にも「最終報告」の取りまとめへ =
 労働基本権のあり方を議論してきた行革推進本部の専門調査会は、10月5日に14回目の会議を開き、最終的な報告にむけて議論を深め、19日にも結論が取りまとめられることとなっています。
 「最終報告」がどのような内容になるかは明らかにされていませんが、労働協約締結権を付与する方向で取りまとめがはかられる見通しです。その一方で、消防職員や行刑職員(刑務所など)の団結権とともに、非現業国家公務員のストライキ権は、結論が先送りされる公算が大きくなっています。
 こうしたもと、公務労組連絡会は、全労連と共同して11月から「公務職場の働くルール署名」を開始し、労働基本権の回復を求めて、国民世論の拡大をめざしてたたかいます。

ストライキ権の扱いは「両論併記」の可能性も

 中間的な報告が出された4月以降、専門調査会では、労働三権が回復された場合の「シミュレーション」などを作成し、さまざまな場合を想定して検討を深めてきました。こうした検討結果を受けて、10月5日の専門調査会では、「最終報告」の内容の「原案」が示され、それを中心に議論された模様です。
 この間の議論では、各委員から、「消防職員などの公共性の強さは、争議権について一定の制約が許される根拠となっても、団結権までも否定する論拠にならない」「労働協約締結権を付与する職員には、原則としてストライキ権を付与すべき」などの意見がある一方で、「消防職員の団結権は、国民の治安や財産を守るという点からも、警察と同様に付与しない方が良い」「第三者機関等による仕組みを担保することで、争議権は付与しなくてもよい」などの意見が出され、各委員の間でも見解にかなりの隔たりが見られました。
 これをうけた「最終報告」は、労働協約締結権の付与は盛り込みながらも、消防職員や刑務所などで働く行刑職員の団結権、および、非現業国家公務員の争議権については、「両論併記」の形で取りまとめられる見通しが強くなっています。
 政府の専門調査会は、2006年5月に成立が強行された「行政改革推進法」に明記された公務員制度の「改革」をすすめるうえで、その根幹でもある公務員の労働基本権のあり方を議論するために設置された機関です。
 その後、先の通常国会では、専門調査会の結論を待たず、労働基本権の取り扱いは棚上げにされたまま、能力・実績主義にもとづく人事管理を強化する「公務員制度改革」関連法の成立が強行されました。
 一方、ILO(国際労働機関)からは、3度にわたって、労働基本権の回復を求める勧告が出されており、日本政府は、こうした国際世論への誠実な対応が求められていました。
 こうした国内外の一連の経過からしても、消防・行刑職員の団結権、一般職員のストライキ権をふくめて、専門調査会での踏み込んだ議論こそ求められています。

「公務サービス拡充、働くルール確立」署名の目標達成へ

 全労連「公務員制度改革」闘争本部では、専門調査会の動向に監視を強めつつ、19日に「最終報告」が出されれば、行革事務局からは、その内容について正式な説明を求めるとともに、報告の取り扱いをふくめて、交渉や申し入れを通して、今後の方向について労働組合との誠意ある対応を求めてきます。
 公務員の労働基本権の回復は、賃金・労働条件を改善するだけにとどまらず、民主的な行政・教育を確立するうえでも、重要な課題となっています。
 こうした観点から、公務労組連絡会では、100万人からの集約を目標にした「公務・公共サービス拡充、公務職場の働くルール確立を求める国会請願署名」を11月からスタートさせ、来年の通常国会への提出にむけて、目標達成へ全力をあげます。
 労働基本権問題の議論が重要局面をむかえるもと、引き続き、民主的公務員制度の確立、ILO勧告にもとづく労働基本権の確立を求めて、職場や地域からいっそう奮闘していくことが求められています。
以 上