No.627
2007年6月28日
社保庁「解体・民営化」法案を強行採決
= 「公務員制度改革」関連法案も29日の本会議で採決ねらう =
 参議院厚生労働委員会は28日、社保庁「解体・民営化」法案、年金特例法案を審議し、午後7時前、委員長が一方的に「質疑終局」を宣言、自民・公明両党によって法案の採決が強行されました。
 また、同時に開かれていた内閣委員会では、6時間にわたって「公務員制度改革」関連法案が審議されましたが、与党は、明日の本会議で法案の審議状況の「中間報告」を求め、委員会の採決もないまま、本会議での採決を強行する構えです。
 自民・公明両党による暴走がつづくなか、国公労連は、国会前の座り込み行動でたたかい、また、公務労組連絡会は、内閣委員会への傍聴行動にとりくむなど、悪法阻止へ終日にわたって奮闘しました。

「天下り」はダメでも「横すべり」は自由と塩崎官房長官

 この日の内閣委員会では、主濱了、内藤正光、尾立源幸、直嶋正行(以上、民主)、亀井郁夫(国民)の各議員が質問に立ちました。
 主濱議員は、農水省所管の独立行政法人・緑資源機構の官製談合を例にあげ、談合の背景には天下りがあるとして、渡辺行革担当大臣に見解を求めました。渡辺大臣は、「農水省の天下りネットワークが根底にある。農水省の人事当局による押しつけ的あっせんが、固定的におこなわれていた。そのなかで、企業にカネが流れる仕組みがつくられていたものだ」としたうえで、「今回の法案で、こうした各省の司令塔機能にメスを入れる。罰則や監視の強化、ガラス張りのろ過装置である官民人材交流センターによって、天下りは根絶していく」と、壊れたレコードのようにこれまでと同様の答弁を繰り返しました。
 一方で、「法文では、利害関係のない営利企業への天下りは可能ではないのか」と追及されると、塩崎内閣官房長官は、そのことを認めたうえで、「再就職のすべてを『天下り』と表現するのは正確ではない。『天下り』あるいは『天上がり』は良くないが、官から民への『横すべり』は自由だ」などと答弁し、公務の公正性・中立性をゆがめ、財界が求めている官民交流の促進を合理化しました。
 内藤議員は、はじめに、「民主党が法案のすべてに反対しているとの報道があるが、能力・実績主義には反対していない。その部分は賛成している」と、あえて断ったうえで、天下り問題にかかわって、「各省の押し付け人事と言うが、天下りは、省庁と企業の『あうんの呼吸』で決まるものだ。むしろ企業側が再就職を取り仕切っている。組織と組織の問題であり、求職活動など個人への行為規制が有効なのか」と質問すると、渡辺大臣は、「法案は、まさに組織の行為を規制するものだ。その精神を理解してもらいたい」などとのべ、塩崎官房長官は、「人事は緻密なものであり、『あうんの呼吸』で決まるほど簡単ではないし、民間が仕切るなどありえない」と反論しました。内藤議員は、「天下りの本質は、組織と組織の問題だ。個人は、そこに当てはめられるだけ。そうした本質をふまえなければ、天下りは根絶できない」と法案の不備を指摘しました。

官民人材交流センターは新たな「リストラセンター」

 午後からの審議で尾立議員は、質問の冒頭、社会保険庁職員の「ボーナス返納」問題について、「返納を再雇用の条件にしようとするのか?」と政府の見解を質しました。塩崎官房長官は、「記者会見で触れたものだが、不正確な報道で迷惑している。返納は、あくまで個人が自主的に決めることであり、指摘の件とは関係がない」と否定しました。
 官民人材交流センターにかかわって尾立議員は、「天下りバンクであり、実効性に疑問がある」と指摘したことに対して、渡辺大臣は、「職員を定年までかかえこむ必要はない。仕事をしない公務員に給料を出す必要などない。能力・実績主義によって『肩たたき』は自然になくなるが、行政のスリム化が必要であり、官民人材交流センターは、新たなリストラセンターとして機能する」などと答弁し、あらためて、「新人材バンク」を公務員削減のためにも利用していくことを明らかにしました。
 直嶋議員は、事前規制の撤廃で天下りが自由化される点を追及すると、塩崎官房長官は、「事前規制より行為規制の方が人材を活かしていける」として、国からNGOへの再就職など出入りが自由におこなわれているアメリカの例も示しながら、「その一方で、アメリカでは、官民の癒着を刑法で厳しく取り締まっている。国家公務員法などというなまっちょろい規制ではない」などと持論を展開すると、「なまっちょろいとは何事か」と自民党議員からも抗議の声があがり、発言を撤回する一幕もありました。こうした官房長官の答弁からも、与党が「改革」でめざしている中心が、官民交流促進であることがいよいよ明らかとなっています。

連日の国会座り込みが委員会審議にも影響

 最後の亀井議員は、質問の中で、法案作成の過程での労働組合との対応について質しました。林内閣府副大臣が、「労働組合とは、今年に入ってから17回会うなど、頻繁に協議してきた。いろいろなレベルで話し合っており、一定の理解はもらっている」と応え、亀井議員が「労働組合からの了解は得ているのか」と重ねて追及すると、林副大臣は、「労働組合の納得は必要だが、それが法案提出の要件ではない」などとし、納得も合意もないままのの一方的な法案提出であったことを暗に認めました。
 亀井議員からは、「労働組合は、毎日のように国会前に座り込んで、法案反対の声を上げている。労働組合の了解があったのか疑問に思っている」とのべられるなど、国公労連などの連日の座り込み行動は、国会審議にも着実に影響を与えています。
 亀井議員の質問終了後に、与党議員が採決を主張しましたが、藤原内閣委員長が散会を宣言し、内閣委員会は17時前に閉会しました。
 与党は、29日の参議院本会議で、内閣委員長から「中間報告」を求め、その後、法案採決の緊急動議を提出、委員会採決のないまま、法案を強行採決する構えです。しかし、審議をすればするほど、天下りを自由化するばかりか、官民交流の促進、能力・実績主義の強化によって、「全体の奉仕者」としての公務員をゆがめる法案の内容が明らかになっています。
 「中間報告」がされても、審議は不十分であり、引き続く委員会での徹底した議論こそ求められています。与党の暴走を許さず、本会議採決を断固阻止していく必要があります。

昼休みの国会行動で悪法阻止への奮闘をあらためて確認

 社保庁「解体・民営化」法案の採決がねらわれるもと、国公労連は、28日に昼休み国会行動にとりくみました。
 福田委員長は、審議のヤマ場を迎えるなかで、最後までの奮闘を訴えつつ、「参議院選挙で自公政権に審判をくだそう」とあいさつしました。
 河村書記次長の情勢報告のあと、日高教の加門書記長が連帯あいさつし、「教育改悪3法案が多数の力で強行された悔しい思いを力に、参議院選挙で勝利しよう」とのべ、また、郵産労の日巻書記次長は、「郵政も10月に民営化されるが、すでに民営化したらダメになるという声もあがっている。最後まで連帯してたたかう」とエールをおくりました。
 決意表明で、全厚生の杉下委員長は、「国民の権利保障である年金問題などわずかな審議での強行採決は絶対に認められない。社会保障にかかわる労働者として全力をあげる」とのべ、これに続き、全労働の山口中執、全国税の長谷川書記長からそれぞれたたかう決意がのべられました。
 日本共産党の小池晃参議院議員が、厚生労働委員会から駆けつけ、国会での審議内容を報告し、参加者を激励しました。
 その後、参加者は、蒸し暑さを跳ね返して座り込み行動を続け、午後7時前、厚生労働委員会での社保庁「解体・民営化」法案の強行採決が伝わると、抗議行動に切り替え、日本共産党の議員団の参加も得ながら、十分な審議もないまま採決を強行した自公政権へ怒りのシュプレヒコールをぶつけました。
以 上