No.617
2007年6月6日

公務員制度改悪法案、内閣委員会で採択
= 「天下り」自由化など問題点が明らかになるなかで採決を強行 =
 国家公務員法改悪法案など「公務員制度改革」関連法案は、6日の衆議院内閣委員会で採決され、政府提出法案は、自民・公明両党の賛成多数で可決されました。法案は、7日の本会議に上程され、採決される見通しです。
 「天下り」を自由化し、公務職場に能力・実績主義を持ち込む「公務員制度改革」関連法案は、公正・中立であるべき公務の性格をゆがめ、公務労働者にとどまらず、国民の暮らしや公務サービスにも重大な影響を与えることから、十分な審議が求められていました。しかし、自民党と民主党との間で6日の委員会での採決が合意され、約40時間の審議を通しても数々の問題点が未解明のまま、採決が強行されました。
 こうしたもと、公務労組連絡会は傍聴行動にとりくみ、9名(国公労連6、自治労連・特殊法人労連・事務局各1)が参加し、最後まで法案審議を監視しました。

公務リストラのための「新人材バンク」と渡辺大臣が答弁

 6日の内閣委員会では、寺田学・武正公一・長妻昭・泉健太(以上、民主)、赤澤亮正(自民)、吉井英勝(共産)の各議員が質問に立ちました
 この間の内閣委員会の審議では、政府法案は、事前規制の撤廃や官民人材交流センター(新人材バンク)などによって、「天下り」をいっそう自由化するものであること、官民交流の名のもとに、「天下り」や「天上がり」を促進することで、全体の奉仕者としての公務員の公正性や中立性をそこなわせるものであることなどが、政府答弁などからも浮き彫りになってきました。
 この日の審議でも、こうした点を中心にして、政府法案の問題点が追及されました。民主党の長妻議員は、各省で関連企業への「天下り」が繰り返されている実例を示しつつ、「新人材バンクはまさに『天下りバンク』であり、これができれば、大手を振って天下りができるようになる。再就職先をあっせんするというのなら、ハローワーク(職業安定所)で十分ではないか」と追及しました。
 渡辺行革担当大臣は、「公務員は身分保障があり、新人材バンクが仲介しなければ、身分保障をタテにして役所にしがみつく。行政減量化のさまたげになる」などとのべ、「公務員の純減目標達成のため、これまでのような省庁のあっせんに代わる新たな仕組みが必要だ」として、公務員をじゃま者扱いしました。さらに、渡辺大臣は、「行政のスリム化のために再就職を支援する必要がある」と付け加え、新人材バンクが、天下りのトンネル機関となるばかりか、旧国鉄の「人材活用センター」をもイメージさせる答弁を繰り返しました。
 このことともかかわって、「公務のいっそうの効率化が必要であり、早期退職勧奨(肩たたき)は、リストラにつながるという良い側面もある」と主張する自民党の赤澤議員の質問に対して、渡辺大臣が、「指摘の通りであり、リストラ型の退職勧奨は否定すべきではない」と答弁するなど、公務員を能力・実績主義でふるいにかけ、早期退職へと追い込むねらいがいっそう鮮明になりました。

公務の公正性・中立性を確保するためにも規制を強化せよ

 共産党の吉井議員は、金融庁から銀行、国土交通省から建設会社などへの天下りは現行法では禁止されていても、新たな法律では可能となること、現行法で離職後2年間の関連企業への天下りが禁止されているが、「新人材バンク」を通せば退職した翌日でも再就職できることなど、現行法と「改正」法案の条文を一つ一つ比較対照して、「天下り」がさらに自由化することを具体的に示し、「法案のどこに『天下りの根絶』が書かれているのか」と政府を厳しく追及しました。
 これに対して渡辺大臣は、「法律の精神をふまえて、有識者懇談会で具体的に検討する。条文にはないが、法の精神はある」など意味不明な答弁に終始し、助け船を出した林内閣府副大臣も、「今後、詳細なルール作りをしていく。随意契約の見直しや、公益法人改革などを総合的にすすめるなかで、天下りの根絶をめざす」とのべるにとどまり、法案自体は、きわめてあいまいな内容であることが明らかになりました。
 吉井議員は、法案に示す「行為規制」や中立機関による監視体制などは、事前承認制の撤廃の代わりにはならないことを指摘し、「天下り根絶どころか『天下り自由化』法案であり、これでは官製談合はなくならない。公務の公正性・中立性も維持することはできない」と批判しました。
 さらに吉井議員は、「離職後2年間の再就職禁止の規制撤廃などは、天下り規制を180度転換させるものだ。企業への働きかけには刑罰が課せられるが、わずか罰金10万円だ。国民が求めている方向とはあべこべだ」とのべ、「公務の中立性・効率性を確保するため、規制を強化することこそ必要だ」と追及しました。
 塩崎内閣官房長官は、「社会を活性化するうえで、官民交流のプラス面を考えるべきだ。他の国でも民間の優れた人材が公務の場で有効に活用されている」などとのべ、こうした答弁からも、民間(=大企業)のための「公務員制度改革」であることが、いよいよはっきりしてきました。
 吉井議員は、最後に、「まだまだ審議は途中であり、資料ももっと充実させたうえ、さらに審議を深めるよう委員長に求める」と要求し、採決すべきではないと主張しました。

政府法案を賛成多数で採択、民主党案は否決

 午前9時から休憩を取らずにつづいた内閣委員会は、午後1時20分に河本委員長が質疑終局を宣言、その後、自民・民主・共産の各党代表による討論に入りました。
 反対討論に立った共産党の吉井議員は、採決の強行に抗議したうえ、政府案にかかわって、@天下りの原則禁止の現行法から、原則自由化へと180度の転換をはかるものであり、官民人材交流センターも、「天下り推進センター」にすぎないこと、A能力・実績主義の人事管理は、公務員にノルマ主義を押しつけて職員間の競争を煽る一方で、国民サービスを切り捨てるものであること、B公務員の労働基本権回復は改革の要であり、ILOの度重なる勧告もあるにもかかわらず、法案ではまったく言及していないことなどを指摘し、廃案を求めました。また、民主党提出法案にかかわっても、「政府案と同様に能力・実績主義の強化をめざすものであり、民主党案にも同意できない」と反対しました。
 討論終了後、ただちに採決に入り、民主党提出の法案は、民主党だけの賛成で否決され、政府法案は、自民・公明両党の賛成多数で採択されました。
 また、自民・公明が共同で提出した「附帯決議」も、両党の賛成多数で採択されました。

すべての悪法の廃案めざして6者共同の国会前行動

 衆議院内閣委員会の審議がつづくなか、昼休みには、すべての悪法に反対して国会前行動がとりくまれました。公務労組連絡会、全労連「公務員制度改革」闘争本部、労働法制中央連絡会とともに、国民大運動実行委員会など6団体の共催で280人が参加しました。
 行動では、日本共産党の井上さとし参議院議員から、最終盤をむかえる国会情勢の報告をうけました。
 各界からの決意表明では、日高教の加門書記長からは、「『靖国DVD』を入手し書記局全員で観たところ、その内容は中学1年生の女生徒を主人公に据え、青年の亡霊が過去の戦争は国を守るたたかいであったと語るひどい内容だった。教育基本法の改悪につづく教育3法案の廃案にむけて全力をあげる」とのべ、国公労連の福田委員長は、「社会保険庁解体では、安倍首相は、『親方・日の丸』などと公務員を攻撃しているが、当の本人が『親方』ではないか。国家公務員法についても、結局は天下りを自由にして、試験以外でも公務員になれる天上がりの自由化だ」とのべ、特別な闘争体制もとって廃案をめざしてたたかう決意を表明しました。その他、年金者組合、東京土建、都生連から決意表明がありました。
 また、全労連「公務員制度改革」闘争本部では、「公務員制度改革」関連法案に反対して、参議院の内閣委員会とともに、地方公務員法改悪法案の審議が予定される衆議院の総務委員会のすべての議員への要請行動にとりくみました。
以 上