No.611
2007年5月16日

公務員制度「改革」、社保庁「改革」を許すな!
= 法案の廃案を求めて国会行動、「公務員制度シンポ」開催 =
 「公務員制度改革」関連法案の審議が開始されるもと、公務労組連絡会は16日、衆・参の内閣委員会を対象とした国会議員要請行動にとりくみました。
 昼休みには、全労連「公務員制度改革」闘争本部、労働法制中央連絡会と共同した衆議院議員面会所の集会を開き、終盤国会の焦点となる公務員制度「改革」法案、社保庁「解体」法案などの悪法阻止へたたかう決意を固めました。
 また、午後からは、「公務・公共サービスの切り捨てと労働基本権を考えるシンポジウム」が全労連会館で開催され、能力・実績主義の人事管理制度や「人材バンク」で「天下り」を自由化する「改革」法案の問題点や、公務員労働者にとっての労働基本権の重要性などについて議論を深めました。

23日にも社保庁「改革」法案の委員会採決をねらう自公政権

 昼休みの衆議院議員面会所の集会には約80名が駆けつけ、主催者を代表して労働法制中央連絡会の宮垣事務局長(全労連事務局次長)が、「国民の年金にかかわる社会保険庁『解体・民営化』法案を、与党はわずか3週間ほどの審議で衆議院を通過させようとしている。また、労働基本権問題を棚上げにした公務員制度法案も、断じて認められない。悪法阻止へ、共同をひろげてたたかいを強めたい」と決意を込めてあいさつしました。
 国会報告では、日本共産党の高橋千鶴子衆議院が、厚生労働委員会の合間をぬって集会に駆けつけ、社会保険庁「解体・民営化」法案について報告、「与党は、23日にも委員会採決をねらい、22日に参考人質疑を提案してきている。しかし、審議は尽くされておらず、政府答弁も矛盾だらけだ。参考人質疑を採決の条件にさせるわけにはいかない。みなさんとともにがんばりたい」と、最新の国会情勢が伝えられました。
 年金者組合の久昌(きゅうしょう)副委員長が連帯あいさつし、「社保庁法案は、年金者にとっては老後の支えにもかかわる問題だ。業務を民間にゆだねればますます信頼は揺らぐ。厳しい公務員攻撃だが、仕事に自信を持ち、胸を張ってたたかってほしい」と激励しました。
 各団体の決意表明では、「社保庁の不祥事を見直すのは当然だが、それを逆手にとって民間にすると良くなると言うのか。ますます年金の重要性が高まっている。各地で仲間の支援がひろがっており、法案阻止へ全力をあげる」(国公労連全厚生・飯塚書記長)、「社保庁・公務員制度・教育改革の『三本の矢』は、公務員だけでなく国民に放たれたものだ。過日の中央委員会で意思統一し、自治労連としても全力でたたかう決意だ」(自治労連・大黒書記長)、「14年ぶりのパート法の改訂となるが、法案の中身は、正規・非正規の格差を固定化する大変な問題がある。17日にも参議院でパート法案の採決がねらわれており、たたかいを強める」(パート臨時連絡会事務局長・井筒全労連常任幹事)など、重要段階にむけたたたかいの決意がのべられました。
 最後に、黒田公務労組連絡会事務局次長が行動提起し、今後の国会行動の強化、5月25日の「第1次中央行動」への参加などが訴えられ、これを参加者全員で確認し、集会を閉じました。
 なお、議面集会に先立って、全労連「公務員制度改革」闘争本部は、11時から「公務員制度改革」関連法案の廃案を求めて、衆・参の内閣委員会への国会議員要請行動にとりくみました。公務各単産で手分けして50人の議員事務所を訪問し、対応はほとんどが秘書でしたが、「大変注目している」「がんばりましょう」などと激励を受ける一方で、法案の審議が始まったことさえ知らない与党秘書もいました。
 こうしたことから、公務労組連絡会では、5月25日の中央行動の際に、「公務員制度改革」関連法案にかかわって、あらためて衆・参のすべての議員への要請行動を配置します。

戦後レジームの脱却と一体の「公務員制度改革」阻止へ

〜 「労働基本権を考えるシンポジウム」で活発な討論 〜

 午後2時から開催された「公務・公共サービスの切り捨てと労働基本権を考えるシンポジウム」は、全労連「公務員制度改革」闘争本部と公務労組連絡会の共催によるもので、会場となった全労連会館ホールには、公務単産をはじめ約100名が集まりました。
 主催者を代表して坂内全労連議長は、「改憲手続き法の強行成立など、自民・公明両党は、数の力で暴走を重ねている。改憲がねらわれるもと、労働基本権回復にほおかむりした公務員制度改革法案こそ憲法違反の法案だ。法案審議が始まるなかで、時宜にかなったシンポジウム開催となった。活発な議論をお願いする」とあいさつしました。
 その後、小田川闘争本部長・全労連事務局長がコーディネーターをつとめ、シンポジストに神戸大学の根本到准教授、自治労連の駒場忠親委員長をむかえたシンポジウムに移りました。はじめに、小田川本部長が、国会提出されている「国家公務員法改正法案」を中心に、キャリア制度や「天下り」を自由化する法案の問題点を指摘し、「天皇の官吏だった公務員の戦前への回帰をめざし、安倍首相が掲げる戦後レジームからの脱却を、公務員制度としても具体化するもの」と問題提起し、シンポジストの発言を求めました。
 労働法が専門の根本氏は、「労働法からみた構造改革・公務員制度」と題して、ドイツやフランスなど諸外国の公務員の労働基本権との比較や、勤務条件法定主義や公務員の範囲など日本での労働基本権議論の焦点、「官から民へ」とする攻撃への対抗戦略などを報告しました。根本氏は、「改革法案では、評価制度による分限(解雇)が記されているが、民間では、能力不足を理由にした解雇はできない。そうした民間法理の活用も重要」と指摘、「対立を煽るのが新自由主義の手法であり、それに対抗するには、民と官、公務員と住民などの間で連帯をひろげることが重要であり、共感・連帯感を得るための運動をすすめるべき」と助言しました。

「美しい国」「戦争をする国」の担い手としての公務員づくりをねらう

 自治労連の駒場委員長は、「現場から見た公務・公務員・労使関係のあり方」とのテーマに沿って、戦後レジームの脱却、改憲がねらわれるもとでの「公務員制度改革」をめぐる状況をはじめ、生活保護の拒否などで行政がワーキングプアをつくり出している現実、そうしたなかでの労働組合の役割について報告しました。駒場委員長は、「安倍首相の『美しい国』づくり、『戦争をする国』づくりの担い手として、それに協力する公務員をつくるのが『公務員制度改革』であり、その目的は、さらに危険な方向へと変化している」と指摘しました。
 その後、シンポジストの報告もおぎないつつ、会場から、国公労連の盛永副委員長、自治労連の林中央執行委員が発言し、「社保庁『解体・民営化』法案は、分限免職を結果として可能にするものであり、20年前の国鉄分割・民営化と同じやり方だ。個人情報の流出や、非正規職員の増大で公務職場に新たなワーキングプアをつくり出す。行政がゆがめられないように奮闘する」「夕張市の財政破綻は、マスコミはムダ遣いだけを強調してきたが、エネルギー政策の転換や、国策としてのリゾート開発の失敗、『三位一体の改革』による交付金削減など、国に責任がある。公務員の権利は住民生活と結びついており、住民の権利を守るためたたかう」など、決意も込めた報告がありました。
 その後、フロア発言やシンポジストの発言を通して議論を深め合い、「公務員改革法案の内容はきわめて抽象的であり、これに対抗するため、みんなで知恵を出し合って理論構築をすべき」などシンポジストからの意見もうけつつ、最後に小田川本部長が、「民間ではできない乱暴な公務員への権利侵害を許さず、法案阻止へたたかう重要性が明らかになった。労働基本権を手にしたときの具体的なイメージも議論し、権利回復の道筋を描いていこう。今後、『公務員制度改革』へさまざまな法律がねらわれており、それに対抗すべき運動の構築が求められている」と討論をまとめ、シンポジウムは閉会しました。
以 上