No.604
2007年3月22日

従来の枠を出ずきわめて不満な回答
= 07年春闘要求に対して、政府・人事院が最終回答 =
 公務労組連絡会は22日、「07年春闘要求書」への回答を求めて、総務省・人事院との最終交渉にのぞみました。
 民間大手組合の賃金交渉がほぼ妥結するもと、公務員労働者の賃上げや労働条件改善にむけた誠意ある回答を求めましたが、「人事院勧告制度の維持・尊重」(総務省)、「官民較差にもとづく適正な給与水準の確保」(人事院)など、従来の枠内の不満な内容にとどまりました。

使用者として職員が安心できる職場環境をつくれ

 総務省・人事院との最終交渉には、公務労組連絡会からは、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、柴田・蟹澤の各幹事が出席しました。
 総務省の交渉は、人事・恩給局総務課の酒田総括課長補佐、相米課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長は、「3月14日の大手の集中回答を見ると、労働者の要求に応えるものとはなってはいないが、2年連続で賃上げされている。一方、公務員賃金は、2年続いて実質的な賃下げとなっており、そのこともふまえて誠意ある回答を求める」として、最終回答を求めました。
 酒田総括課長補佐は、「公務員をとりまく環境はきびしいが、みなさんからの要求や交渉での意見をうけて誠意をもって検討してきた。総務省として、職員のみなさんが安んじて職務に精励できる勤務環境を確保していくとの基本姿勢は変わらない」とのべたうえ、以下のように回答しました。
【総務省最終回答】
1、(総人件費改革について)総人件費改革にともなう配置転換等のとりくみにあたっては、総務省としても国家公務員の人事行政を所掌する立場から、内閣官房などと連携をとりつつ、職員の雇用の確保に最大限努力する。
2、(給与改定について)人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
  平成19年度の給与改定については、この基本姿勢のもと、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
  国家公務員の給与水準については、これまで同様に、職員団体とも十分に話し合い、適切な水準が確保できるよう努力する。
3、(退職手当について)国家公務員の退職手当の支給水準については、官民均衡を図る観点から、現行の国家公務員共済年金の職域部分(3階部分)に代わる新たな公務員年金制度(新3階部分)の議論の動向等を踏まえつつ、必要な検討を行ってまいりたい。
  退職手当は職員の重要な関心事項であり、検討に際しては職員団体からのご意見は十分伺っていく。
4、(ILO条約について)政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
  なお、ILO結社の自由委員会第329、331、340次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
5、(労働時間の短縮等について)労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」にもとづき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努めるとともに、関係機関とも連携しながら、政府一体となってさらに実効性のあるとりくみをすすめる。
  育児休業法改正法案および自己啓発等休業法案の審議動向をふまえつつ、育児短時間勤務制度および自己啓発等休業制度の円滑な実施にむけた準備を着実にすすめる。
6、(公務の高齢対策の推進について)公務員の高齢者雇用については、再任用制度を基本的方策と位置づけ、関係機関と密接な連携をとりつつ、政府全体として高齢国家公務員の雇用の推進をはかるとともに、その現状もふまえ、雇用と年金の連携に留意し、職員団体の意見を聞きつつ、高齢国家公務員の雇用のあり方について検討していく。
7、(男女共同参画社会の実現について)男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画(第2次)」「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実にとりくむ。
8、(評価の試行について)新たな人事評価システムの構築に向け、現在実施中の第2次試行に加え、地方機関や専門職種等に対象範囲を拡大して試行を実施し、透明で納得性があり信頼性の高いシステムを目指して取組を進める。
  また、開示の在り方や苦情処理システム及び活用の在り方について、関係機関とも連携しつつ検討をすすめる。
  とりくみにあたっては、職員団体とも十分意見交換し、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
9、(安定した労使関係の維持について)安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意志疎通に努めたい。

 酒田総括課長補佐は、「最前線の職員は、国民の要請に応えるものために奮闘しており、その努力に感謝したい。職員のみなさんの苦労に応えるため、総務省として、主張すべきところは主張し、勤務環境の改善に努力していきたい」と、つけ加えました。
 これに対して、若井事務局長は、「回答内容は、昨年とほぼ同様であり、きわめて不満なものだ。社保庁解体法案が提出されるなど、雇用不安をかかえて仕事をしている。また、2兆6千億円の公務員総人件費削減が打ち出されている。そうしたなか、言葉だけではなく、使用者として安心して仕事をできる環境をつくるべきだ」と追及しました。
 また、交渉参加者からは「非正規職員の改善が急務であり、国の改善内容は、自治体に影響することからも早急な対応を求める。また、民間では、初任給の改善や育児手当引き上げなど子育て支援もすすんでいる。総務省としても、問題意識を持った対応を求める」「民間賃金がプラスの方向にあるとき、単に勧告制度尊重などではなく、踏み込んだ回答が示されるべきだ。職員の働く意欲ともかかわる問題だ」などとのべ、使用者責任を追及しました。
 これに対して、酒田総括課長補佐は、「社保庁の雇用確保は、任命権者が努力することとなる」とのべ、また、賃金改善については、「国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処したい」との回答をくり返しました。
 最後に石元議長は、「最終的な回答は示されたが、不満な内容であり、引き続き、人事院勧告期にむけて要求の実現を求めていく」として、交渉を閉じました。

要求に背をむけ「50人以上」の比較を今年も継続

 人事院交渉では、人事院側は、給与局給与第一課の幸課長補佐、職員福祉局職員福祉課の植村課長補佐が対応しました。
 石元議長が回答を求めると、幸課長補佐は、以下の通り回答しました。
【人事院最終回答】
1、官民較差にもとづき、適正な公務員給与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
  人事院としては、現行の官民給与比較基準によって、公務員の給与水準が適切に確保されていると認識しており、これを変更することは考えていない。
2、公務員の給与改定については、初任給を含め民間給与の実態を精確に把握した上で、適切に対処する。
3、給与勧告作業にあたっては、較差の配分、手当のあり方などについてみなさんと十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
4、一時金については、民間の支給水準等の精確な把握をおこない、適正に対処する。
5、公務員の勤務時間・休暇制度の充実にむけて、関係者およびみなさんの意見を聞きながら引き続き検討をすすめる。
(1) 超過勤務の縮減については、関係機関と連携して能率的な業務執行の確保と厳正な勤務時間管理に努めつつ、早期に実効ある具体策を取りまとめるよう検討をすすめる。
(2) 所定内勤務時間のあり方については、本年の民間給与実態調査において引き続き民間企業の所定内労働時間の精確な動向を把握するなど、民間準拠の原則に基づいて検討をすすめる。
(3) また、育児休業の取得を含め男性職員の育児参加の促進に向け、引き続き努力する。
6、一昨年末に改定された「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」にもとづく施策が着実に実行されるよう努める。
7、心の健康づくりについては、「職員の心の健康づくりのための指針」にもとづいて、研修の充実、健康管理医による職場復帰相談室の拡充などのとりくみをすすめる。
8、非常勤職員については、何が問題でどのようにとりくむべきか、各府省の運用をふまえて検討する。

 幸課長補佐は、これに加えて、「民間の春闘情勢を見ると、月例給は昨年に引き続き賃上げ回答となったが、ベアは1,000円を超えず、一部は手当に回されており大幅なものではない。また、一時金は、業績を反映させて昨年を上回る妥結状況だ。これから中小組合が妥結していくが、これらの内容を勧告に反映させ、水準、手当、休暇などの改善を引き続き検討していく」とのべました。
 若井事務局長は、「昨年は、官民比較方法の見直しで比較対象企業規模を『50人以上』に引き下げた。それを今年も継続していくとの回答は不満だ。民間は、少なくとも賃下げとはなっておらず、初任給はかなり改善されている。公務員賃金も引き上るべきだ。また、勤務時間は、民間よりも公務が15分間長い」とのべ、早急な改善を求めました。
 また、交渉参加者からは、総務省交渉と同様に、大量退職をひかえて優秀な人材確保のための初任給引き上げや、公務職場に働く非正規職員の賃金改善、メンタルヘルスと一体の長時間にわたる超過勤務の是正などについて、さらなる検討を求めました。
 幸課長補佐は、「初任給は、民間給与実態調査のなかで把握していく。給与構造の見直しでは、若年層の引き上げを重点に改善をはかってきたところだ。非正規職員は、職種も多く、勤務内容もさまざまであり、そのこともふまえつつ、人事院として何ができるか検討していきたい」とのべ、また、植村課長補佐は、「超過勤務の縮減は、これまでもとりくみを強めてきたが、なかなか実効が上がっていないのが現実だ。実効をあげるため検討していきたい」と回答しました。
 若井事務局長は、「超勤縮減がすすまないのは、仕事が増えて人が減っているという根本的な問題がある。掛け声だけでは改善はすすまない。職場では、今年こそは賃上げをという期待が強い。職員は、国民のために働きたいという思いで仕事している。崇高な使命に応えるような改善をはかるべきだ。公務員賃金のあるべき姿を、人事院としても検討すべき時期に来ている」と指摘し、最後に、石元議長が、人事院勧告にむけて引き続く検討を求めて交渉を終えました。
以 上