No.602
2007年3月5日
賃金改善、労働時間短縮など要求実現を迫る
= 第1次中央行動を前に総務省・人事院と交渉 =
 公務労組連絡会は5日、「3・6第1次中央行動」を翌日に配置するもとで、総務省・人事院と交渉しました。
 交渉では、2月に提出した「07年春闘要求書」にもとづいて、賃金引き上げ、労働時間短縮などの要求実現を強く求めました。
 今後、3月下旬の最終回答にむけて、要求実現を強く求めていきます。

景気回復のもとで職員の期待に応える賃上げを(人事院)

 人事院との交渉には、公務労組連絡会は、若井事務局長を先頭に、黒田事務局次長、熊谷・蟹沢の各幹事、また、国公労連からは小倉中執が出席、人事院側は、給与局給与第1課の幸(ゆき)課長補佐、職員福祉局職員福祉課の植村課長補佐が対応しました。
 はじめに、若井事務局は、「給与構造の見直し、比較企業規模の見直しで2年連続で事実上の賃下げとなり、公務員労働者の生活は厳しい状況だ。一方で、民間のベースアップにむけた流れは大きく、賃金改善にむけた期待も高まっている。また、労働時間短縮の課題では、06勧告で公務の所定内労働時間が民間よりも長いことが報告されており、これをふまえた時短は急務の課題だ」と指摘し、現時点での検討状況をただしました。
 幸課長補佐は、賃金問題にかかわって、以下のように回答しました。
●景気は回復傾向にあり、民間大手の組合のベア要求は、昨年よりも増額している。しかし、横並びの賃上げ要求ではなく、ばらつきもみられる。3月14日が集中回答日となっている民間大手の妥結状況に注目していきたい。また、毎月勤労統計調査を見ると、昨年11・12月は、対前年比でマイナスとなっており、4月にむけて注視が必要だ。
●官民比較は、4月時点での公務と民間の給与を比較するものであり、人事院としては、例年と同様に、精確な官民比較にもとづき、その較差の解消をはかりたい。
●一時金については、大企業の妥結額は4.43月と増加率が低く、公務とわずかの差しかない。一時金の動向についても、引き続き民間動向に注視していく。
 また、勤務時間・休暇制度など労働条件では、植村課長補佐が回答しました。
●勤務時間の短縮にむけて、単に勤務時間の長さだけでなく、企業としての具体的な方策を含めて、民間の実態を調査していく。また、時短による行政サービスへの影響などについて、各省に調査を依頼しているところだ。
  07勧告の際に報告した「超過勤務の縮減に関する指針」について、今年の夏の勧告にむけて検討していきたい。
●介護をおこなう職員への支援については、民間の状況をふまえて検討を続けていく。なお、民間の介護休暇の平均日数は93日間となっており、それも留意して検討をすすめる。
●休暇制度の改善は、情勢適応の原則をふまえ、民間の状況もみながら検討をすすめる。また、育児休暇制度は、復職時調整などについて改善がはかられてきたが、民間動向をふまえて育児休業手当金の支給額の引き上げをはかっていく。
 この回答に対して、若井事務局長は、「休憩・休息時間の見直しによって、子育てに影響が出たり、昼休みも余裕がなくなるなど、労働条件は確実に後退している。民間との比較だけでなく、幅広い検討が必要だ。また、長時間勤務によってメンタルヘルスもひろがっているが、個人だけの問題ではなく、組織にとってマイナスとなる。人事院として真剣な検討が求められる」と指摘しました。
 また、交渉参加者からは、「賃下げや年金改悪のもと、春闘アンケートの結果では、将来への不安がひろがっている。安んじて公務に専念できるような対応が、使用者として求められている。休憩・休息時間の見直しによって、ある県庁では、昼休み時間が短縮されたことで外食もできず、近隣の食堂の売り上げが半分に減るなど経済的にも悪影響が出ている。これは一例にすぎないが、そうした影響も考えるべきだ」「公務員や教員への志望者が確実に減ってきている。賃金や労働条件悪化の反映だ。最低賃金引き上げのマスコミ論調が目立ってきているもとで、人事院として、積極的な賃金改善をおこなうべきだ」などと人事院を追及しました。
 人事院側は、「賃金をはじめ、総合的にみなさんとも意見交換していきたい。所定内労働時間の短縮は、みなさんをふくめ多方面の意見を聞き、時間をかけて検討していきたい」と回答しました。
 若井事務局は、「次回の交渉にむけて、さらに検討をすすめ、誠意ある回答を求める」とのべて、交渉を締めくくりました。

将来にむけた展望が見える誠意ある回答を示せ(総務省)

 総務省との交渉は、人事・恩給局総務課の酒田総括課長補佐、相米課長補佐ほかが対応しました。
 若井事務局が現時点での検討状況をただすと、酒田総括補佐は、要旨、以下のように回答しました。
●総人件費削減にむけては、給与・定員の両面からの削減をすすめているところだが、昨年6月に閣議決定された「国の行政機関の定員の純減について」にしたがって、定員純減にあたっては、配置転換や採用抑制等で対応し、雇用確保にむけて行革推進事務局と連携してとりくんでいく。
●公務員給与について、総人件費改革がすすんでいるが、低ければ低いほど良いというものではなく、公務員としての適正な水準があってしかるべきだ。また、公務員給与の動向が民間にも影響することも留意すべきだ。
●公務員制度改革では、能力・業績重視の人事制度、再就職管理などが喫緊の課題であり、総務省としても、公務員制度を所管する立場から必要な改革をすすめる。労働基本権問題は、現在、専門調査会で議論をすすめており、総務省として必要な協力をはかる。
●労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度を維持尊重することが、政府としての基本姿勢だ。この基本姿勢のもと、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。なお、使用者として、職員が安んじて職務に専念できるよう、適切な対処をはかる。
●労働時間の短縮にむけては、「国家公務員の労働時間短縮対策」にもとづき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用に促進に努めてきた。各府省でも、さまざまな具体的方策がはかられている。地道な努力が必要であり、今後とも各府省と連携して超過勤務縮減へとりくんでいく。
●メンタルヘルスへの対応では、総務省として管理者を対象としたセミナーなどを実施してきた。今後、さらにメンタルヘルス対策を推進していきたい。
 これらの回答に対して、若井事務局長は、「職務に安んじて専念できるようにするというが、昨年の『骨太の方針』では、すでに2.6兆円もの人件費削減が決まっている。メンタルヘルスの背景には、仕事だけが増えて、それに対応するだけの人が足りないことがある。公務員試験の応募者が減るなど、魅力のない職場になっており、将来の展望もなくなっていることをどう考えるのか」と迫りました。
 酒田総括補佐は、「魅力のある職場にするために改善が大切だが、賃金が高ければ高いほどいいわけではなく、その点を苦慮しているところだ」などと答えました。
 交渉参加者は、「国際的に見ても先進諸国のなかでは、日本は公務員の数が少ない。少ないなかで、現場の職員はがんばっている。しかし、それもギリギリの状態であり、教員の長期病休の6割がメンタルヘルスで占めている。使用者として、この状態を改善することが、職員を激励することになる」「査定制度の導入には、本当に、正しく評価されるのかと半数以上が反対している。処遇が下げられれば、職員の士気も下がる。第一線で働いている公務員を激励するような誠意ある回答を示せ」などと追及しました。
 酒田総括補佐は、「みんなががんばっていることは理解しており、何とかしたいという意識を持っている」などと回答しましたが、具体的な内容は何ら示しませんでした。
 若井事務局は、「今が苦しくとも、先が見えれば職員もがんばれる。そうした方向を示すべきなのに、今日の回答からは、それがまったく感じられない。職場で日夜奮闘している職員が、将来に展望を持てるような回答を示せ」とのべ、最終交渉にむけた検討を求めて交渉を終えました。
以 上