No.591
2006年10月2日
「勧告制度の尊重」の回答に終始
= 06年人事院勧告の取り扱いをめぐって総務省と交渉 =
 公務労組連絡会は2日、06年人事院勧告の取り扱いにかかわって、総務省と交渉しました。
 地方では、国に追従して、「マイナス勧告」さえも出されるなか、9月29日の第1次中央行動で示された仲間たちの怒りと要求も背景にして、政府・総務省に対し、あらためて、「50人以上」の比較方法見直しにもとづく「ベアゼロ勧告」を実施しないよう求めました。

「ベアゼロ勧告」を尊重するとの姿勢を繰り返して表明

 総務省との交渉には、公務労組連絡会からは、若井事務局長、黒田事務局次長、熊谷・蟹沢・山アの各幹事が出席、総務省は、人事・恩給局の高尾参事官補佐、総務課の相米課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、若井事務局長は、「8月9日に要求書を提出したが、それから約2か月が経過している。現時点での検討状況について示していただきたい」として、回答を求めました。
 高尾参事官補佐は、以下のように回答しました。
● 勧告の取り扱いについては、8月15日に第1回の給与関係閣僚会議が開かれたが、勧告を尊重すべきとの意見がある一方で、なお慎重に検討すべきとの意見もあり、結論は持ち越された。その後、新内閣の組閣もあり、検討をすすめている段階だ。引き続き、誠意を持って検討をすすめたい。
● 賃金改善の要求については、人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置としての根幹をなすものであり、政府としてこれを尊重することが基本姿勢だ。本年も、この基本姿勢にもとづき、国政全般との関係を考慮しつつ、適切に対処するため検討をすすめる。いずれにしても、みなさんの意見を十分聞きながら、誠意を持って検討したい。
● 労使対等の交渉にもとづく賃金・労働条件決定の要求については、人事院が中立な第三者機関として勧告をおこなっており、政府としては、その勧告の実効性を高めるよう最大限努力する。みなさんからは、引き続き意見をうかがっていきたい。
● 前回の交渉では、職務に精励できるように使用者として努力する旨の厳しいご意見をいただいた。ご指摘の通りであるが、そのために必要なことは、給与改善だけではない。業務の見直しやメンタルヘルス対策など、労働環境の整備にむけた全体的な見直しが必要であり、その面からの努力をすすめたい。

「比較方法の見直し」をあくまで正当化する総務省

 この回答に対して、若井事務局長は、「前回の交渉と同じで、まともな回答になっていない」と厳しく指摘したうえ、「比較企業規模を『50人以上』に引き下げた見直しは、すべての公務員労働組合、ナショナルセンターが一致して反対してきた。その勧告自体、政府の要請をうけたものだ。それを受け取った政府が、勧告尊重というならば、論理矛盾でしかない。職務に精励できるように努力すると口だけでは言っても、国家公務員の採用試験の応募人数も、過去最低になっているもとで、これでどうして職務に精励できるのか」とせまりました。
 高尾参事官補佐は、「比較方法の見直しは、研究会や懇話会で人事院が自主的・具体的に検討してきたものであり、そのなかで、労働組合をふくめた関係者の意見も聞いて、中立な立場で判断したものと認識している。応募者の減少は懸念しているが、先ほどものべたように、業務の見直しなど全体的な対策が必要だ」と回答しましたが、若井事務局長は、「民間企業か、公務員かと進路を選択する際に、給与は重要な要素であり、そのとき、公務員給与が『50人以上』の中小企業と比較で決められているとなると、意欲のある人たちが、果たして公務の職場に来るのだろうか」とのべ、給与よりも「業務全体の見直し」で問題点をそらす姿勢を批判しました。
 高尾参事官補佐は、「公務員の給与は、国民の税金から出ており、国民の幅広い理解が必要だ。そのことをふまえて、比較方法が見直されたのであり、出された勧告は重い」などとのべ、勧告の正当さだけを強調しました。
 交渉参加者からは、「政令市の人事委員会勧告が出ているが、比較方法の見直しが影響して、約半数がマイナス勧告だ。見直しは、賃下げが目的であると指摘してきたことが、現実となった。公務職場に格差を持ち込むものであり、許されない。また、例年、取り扱いの閣議決定にあたって、総務事務次官の地方への通達が出されるが、労使自治の原則に立って、総務省の干渉はやめるべきだ」「業務の見直しと言うが、逆に、定員削減で仕事は忙しくなっている。国際的にも公務員の数が少ない中で、高度な行政の仕事をこなしている。公務員バッシングなどあるが、胸を張ってそのことをアピールするのが使用者の仕事だ」「勧告前の交渉では、人事院の検討状況を見守ると回答し、勧告が出れば、それを尊重すると言うだけで、それで使用者と言えるのか。今後の公務職場のあり方も考えて、幅広い視点で検討すべきだ」など、厳しい意見が出されました。
 若井事務局長は、「日本の行政能力の高さを支えているのは、第一線で働く職員だ。その職員を激励し、どうやって誇りを持って仕事をしてもらうのかを考えるのが使用者の責任だ。『ベアゼロ勧告』になったことで、経済への影響も出る。行政に対する国民の不満はあっても、公務員給与に対する不満ではない。その点での取り違えをしている」と指摘し、閣議決定にむけて誠意を持って検討するよう求めました。
 高尾参事官補佐は、最後に、「厳しい指摘があったことは、十分に受けとめたい。勧告の取り扱いは、引き続き検討していく」と回答しました。
以 上