No.588
2006年8月24日
人事院総裁、「見直し」の妥当性を強調
= 06年人事院勧告をめぐって衆議院総務委員会で閉会中審査 =
 衆議院総務委員会は24日、「官民比較方法の見直し」を強行した06年人勧にかかわって質疑(閉会中審査)をおこないました。
 委員会では、各党から、比較方法を見直した理由や経過の説明を求められ、谷人事院総裁は、政府の要請や国会での議論をふまえ、研究会での検討結果もうけて結論を出したものだとして、「50人以上」への引き下げの妥当性を強調しました。
 これに対して、各議員からは、「40年以上つづいてきたものを変更した理由が理解できない」「政府の圧力に屈したのではないか」など厳しい意見が出されました。
 公務労組連絡会は、緊急に傍聴行動を配置、5人(国公労連3、自治労連1、事務局1)が参加し、臨時国会の「前哨戦」となった質疑の行方を見守りました。

「労働組合とは150回交渉した」と強弁する人事院

 総務委員会では、葉梨康弘(自民)、富田茂之(公明)、福田昭夫(民主)、吉井英勝(共産)、重野安正(社民)の各議員が質問に立ち、とくに、「官民比較方法の見直し」について質問が集中しました。
 「池田・太田会談以降、40年以上つづき、人事院も、『100人以上』での比較の妥当性を主張してきた。なのに、昨年の勧告以降、なぜ人事院の考え方を変えたのか?」と質問する公明党の富田議員に対して、谷人事院総裁は、「かつては、『100人以上』での社会的コンセンサスがあった。しかし、国会での議論や政府の要請もあるなかで、研究会を設置して検討し、人事院としてみずから判断したものだ」とのべたうえ、「官民比較の基本の第一は『同種・同等』の比較にあり、規模問題はその次だ」などと答弁しました。
 また、民主党の福田議員も、「人事院みずからが見直しを判断したというが、経過を見れば、政府の圧力に屈したものだ」と追及すると、谷総裁は、「『同種・同等』の原則を崩さずに、比較方法見直しを決めた」と同様の答弁を繰り返し、最後には、「真摯にとりくんできた。研究会の議論もうけて、人事院として自信を持って判断した」と強弁しました。
 共産党の吉井議員は、「小泉内閣は、昨年9月、12月、今年7月に3度にわたって閣議決定で官民比較方法の見直しを人事院に要請し、その政府方針どおりの勧告となった。労働組合が反対しているのに、閣議決定だけに従うのなら、『第三者機関』としての人事院の独自性が確保できるのか」とのべ、労働基本権制約の「代償措置」としての人事院の姿勢を質しました。
 谷総裁は、「閣議決定だけではない。国会議論、報道機関の意見、地方でのヒアリングなどをすべて勘案して、人事院として技術的に判断した。もちろん、そのなかで職員団体(労働組合)の意見も聞いてきた」と答弁しました。これに対して、吉井議員は、「労働組合に聞いたというのなら、どれほど話し合いをしたのか?」と質すと、人事院の関戸給与局長は、「今年の1月から勧告直前まで150回(本院55回、地方事務局95回)、職員団体と会見(交渉)している」と答弁しましたが、「今も労働組合は反対している。たとえ150回話し合ったとしても、結果的には、政府方針どおりに押し切った。人事院の中立性に疑問符がつく。人事院勧告制度そのものが危うくなっている」と厳しく指摘しました。

「国に準じた地方公務員の見直しは必要」と竹中大臣が答弁

 民主党の福田議員は、「42年前は、政労トップ会談で比較方法が見直された。ふたたび見直すのなら、政労会談で決めるべきだ」と求めると、谷総裁は、「かつての池田・太田会談は、三公社五現業の見直しにかかわるものだ。その非現業への適用を決めたのは人事院の判断だ。また、その頃からはずいぶん時間が経ち、社会状況も大きく変化した」などとのべ、また、政府も、「政府としての勧告の取り扱いにあたっては、組合の意見を十分に聞く。政府として、政労会談は考えていない」(鈴木内閣官房副長官)とし、要求を拒否しました。
 「ベアゼロ勧告」の社会的な影響について、共産党の吉井議員は、「物価指数が0.4%、賃金も0.6%上がっている。税金や社会保障保険料が増えて、消費支出は減っている。この上に、公務員賃金の抑制は、経済にマイナス効果をおよぼす。『賃下げの悪循環』への道だ」と指摘しましたが、谷総裁は、「人事院として、日本経済を考える立場にない」と答弁を避け、竹中総務大臣も、「景気は上向きになっている。政府としては、勧告を尊重する基本姿勢には変わりない」との答弁にとどまりました。
 人事院勧告の地方公務員への影響について、民主・福田議員は、総務省が23日に比較企業規模引き下げを求める通知を地方に出したことに触れ、「政府でも人勧の取り扱いを決定していないときに、通知を出すのはいかがなものか」と質しましたが、総務省の上田公務員部長は、「人事院と人事委員会は一体で作業している。その結果は、パラレルで活用すべき」なとどのべ、また、竹中総務大臣も、「国に準拠した見直しは必要だ」と、地方での比較方法見直しを肯定しました。
 また、公務職場の人材確保の観点から、社民党の重野議員は、「民間との均衡だけで公務員賃金を判断していいのか。優秀な人材を確保するためには、それに見合った給与水準が求められる。『50人以上』に引き下げていいのか」とのべ、民主・福田議員も、「公務員の人材確保の面から、いたずらに給与を引き下げるべきではない」と指摘しました。
 これらの質問に対して、谷総裁は、「人材確保の観点は重要だ。結果的には、『100人以上』とくらべて較差は少なくなったが、給与水準を下げるために見直ししたものではない」と主張しました。
以 上