No.580
2006年7月24日
「人勧尊重」との従来通りの不満な回答
= 「夏季重点要求」で総務省と勧告前の最終交渉 =
 夏季闘争最大の第2次中央行動を前に、公務労組連絡会は24日、「夏季重点要求」にかかわって総務省と交渉しました。
 この日の交渉は、人事院勧告前の最終的な交渉となるもので、人事院の研究会報告が出され、さらには、公務員総人件費の削減を求める「骨太の方針2006」が閣議決定されるもとで、公務労働者の生活と仕事を守るため、使用者としての誠意ある回答を求めました。

賃下げねらわれるもと使用者として責任ある回答を求める

 総務省との交渉は、公務労組連絡会からは石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、熊谷・蟹沢の各幹事が出席、総務省側は人事・恩給局総務課の酒田総括課長補佐、相米課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長は、「今年の勧告で官民比較方法見直しなどが検討されるもと、従来通りの『人勧尊重』の回答では、賃下げ容認となりかねない状況だ。職員が希望と意欲を持って仕事をしていくためにも、使用者としての前向きな回答を示していただきたい」とのべ、6月に提出した「夏季重点要求書」に対する最終的な回答を求めました。
 酒田総括課長補佐は、「この間、みなさんからは、さまざまな意見をいただいてきた。みなさんの要求は、例年以上に切実なものであると受けとめる。総務省として、職員のみなさんが安んじて職務に精励できる環境の整備にむけて、努力するとの姿勢には変わりない」とのべ、主に以下のような回答を示しました。
●(賃金要求にかかわって) 夏の勧告にむけて人事院で作業がすすめられている。総務省としては、労働基本権制約の代償措置として根幹をなす人事院勧告制度を尊重することが政府の基本姿勢であり、国政全般との関係を考慮したうえ、みなさんとも意見交換をしながら、適切に対処していきたい。ただし、公務員の給与水準は、国民に理解される内容であるべきことはご理解いただきたい。
●(休暇制度拡充・労働時間短縮にむけて) 総務省として、従来から超過勤務縮減や年休取得促進などにつとめてきた。今後とも、コスト意識を持った勤務時間管理の徹底、早出遅出の活用などを促進していく。また、各省庁の担当者による連絡会の場を活用し、徹底をはかるなど、地道な努力をすすめていく。
●(家庭生活との両立支援について) 重要な課題であり、現在、今年の勧告にむけて短時間勤務制度が検討されており、人事院とも連絡を密にして検討する。その段階で、みなさんの意見も十分にうかがっていく。
●(非常勤職員の労働条件改善にむけて) 公務の職場には多種多様な雇用・勤務形態があり、一律で管理することは難しい。各省では、給与法の趣旨に沿った適切な措置がなされているものと考える。
●(男女平等の課題について) 政府の「男女共同参画基本計画」や、人事院の「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」をふまえ、総務省としてフォローアップのとりくみをおこなっている。なお、育児休業について、今後とも、活用しやすい制度にするため、環境整備にとりくんでいく。
●(職員の健康・安全) 災害の未然防止にむけて、健康管理計画、疾病予防などを推進していく。心の健康の問題では、「国家公務員福利厚生増進基本計画」にも沿って、総務省として、メンタルヘルス対策を促進する。
●(再任用制度) 雇用と年金の連携にむけて、再任用制度は基本的な方策であり、各府省ともに制度の拡充にむけて努力している。総務省としては、関係機関との連携を取りながら、高齢国家公務員の雇用促進をはかりたい。
●以上をもって最終的な回答としたいが、今後とも、安定した労使関係の確立へ、みなさんとも誠意を持って話し合いをすすめ、意思疎通につとめたい。

誠意が感じられない回答に交渉団から不満の声

 回答をうけて、若井事務局長は、「前回(7/6)の交渉と何も変わっていない。極めて不満な回答だ」とのべたうえ、「今月7日に閣議決定された『骨太の方針2006』では、公務員の5.7%純減が打ち出され、また、先週は人事院の研究会の報告が示された。前回の交渉から、これだけ情勢が変化しているにもかかわらず、回答はまったく同じだ。職員が安んじて職務に精励できるよう努力すると言うが、使用者として、本当に誠意を持って検討してきたのか」と厳しくせまりました。
 酒田総括課長補佐は、「公務員削減が示されるもと、雇用や賃金に対するみなさんの懸念は承知している。回答だけみれば不満な内容かもしれないが、総務省として十分に努力して検討した結果だ」とのべたことから、若井事務局長は、「これから5.7%もの公務員が削減されていく。そのなかで、安心して仕事ができない現場の思いを理解しているのか。毎日、超過勤務でサービス残業が押しつけられている職場の状況を知っているのか。とても、努力した結果とは思えない」と詰め寄りました。
 また、交渉参加者からも、「この回答では、職場のやる気もなくなる。6月からの住民税引き上げで、住民からの怒りの声や問い合わせに忙殺されながらも、職員は、最前線でがんばっている。また、公務の非正規職員は、時給で民間より100円も安く、最低賃金ギリギリとの調査もある。こうした実態を改善するため、使用者としてきちんとした仕事をしてもらいたい」「地方の学習会に行くと、今年は、これまで以上に賃金に関心が高い。『骨太の方針』の公務員削減にくわえて賃金引き下げは、後から刀で切るつけるようなものだ。公務員が誇りを持って働くにはほど遠い状況のなかで、総務省として、どうやって職場を激励できるのかを考えるべきだ」など厳しい意見が出されました。
 酒田総括課長補佐は、「最前線の大変さはよくわかっている。そのなかで、魅力ある職場づくりが重要であり、そのための処遇の改善は必要だ。みなさんが100%満足できないかもしれないが、総務省としてきちんと努力したい。給与については、人事院勧告をふまえて検討する」とのべるにとどまりました。
 若井事務局長は、「まともに検討していないと言わざるをえない。きわめて不誠実だ。とくに、優秀な人材確保は、国家百年の大計にかかわる問題であり、人勧が出れば対応するとの姿勢は、政府としての責任を果たしていないに等しい」と指摘し、最後に石元議長が、「今日の回答は、きわめて不満足なものだ。勧告が出れば、その取り扱いにかかわってあらためて要求書を提出する」とのべ、交渉を締めくくりました。
以 上