No.579 2006年7月24日 |
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「50人以上」への見直しの方向を強める | |
= 人事院「官民給与の比較方法在り方研究会」が最終報告を発表 = | |
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給与改善の見通しは楽観できない、扶養手当の改定を検討森永参事官は、今年の勧告をめぐる検討状況について、以下の通り明らかにしました。●( 勧告へむけた作業状況) 勧告作業は、今のところ例年ペースで順調に進んでいる。民間給与の実態調査は、全体でも90%程度の調査率を確保し、企業規模100人未満50人以上も85%の調査率を確保し、現在、集計・分析作業を急いでいるところだ。この夏の一時金については、なお調査を継続している。 今年の給与改善の見通しについては、春闘結果からみて楽観できないが、いずれにせよ民間給与の動向を精確に把握して公務員給与に反映するという基本姿勢に変わりはない。 ●(官民比較方法見直しにかかわって) 7月10日に官民比較方法についての検討事項を示したが、これまで研究会、懇話会において精力的に議論していただき、21日には研究会の報告書をいただいた。また、27日には懇話会の議論のとりまとめをお願いしている。この研究会等の検討状況をふまえ、みなさんの意見も十分に聞いて、第三者機関として責任もって判断したいと考えている。 ●人事院としては、公務員給与の水準は大企業など一部に偏っているのではないかなどの様々な意見に応えるには、官民の同種・同等の原則の下でいかに広く比較するかが求められると考える。同種同等比較の原則からすると、50人以上100人未満の企業規模の企業の相当数にも公務と同等の組織階層がみられ、同種・同等の職務を行う従業員が存在し、公務員と比較することは十分可能ではないのかという感触をもっている。 ●そのほか、公務における組織の構成員等の実態からは部長の部下数を30人から20人とすることなど民間従業員の職種の定義を見直すこと、民間の人事・組織形態の変化に対応してライン職と同等と認められる相当職を比較対象の従業員に加えることを検討している。 なお、これらの民間従業員の給与実態についても、本年の民間給与実態調査で十分に把握することができたのではないかという感触をもっている。また、本年の新設級、統合級を民間企業の従業員とどう対応させるのか、100人未満の企業の従業員を仮に比較に加えるとした場合に具体的にどう対応させるのかなどについても検討している。 ●(一時金について) これまで一時金は月例給と同じ調査対象事業所で比較してきたが、月例給において仮に100人未満の企業規模の事業所を比較対象とする場合は、特別給についても同様に100人未満の企業規模の事業所を対象とすべきかどうかということについて検討している。 ●(勧告・報告への検討課題) 今年の官民較差にもとづく改定内容については、官民較差がどうかにもよるが、俸給表の改定とともに、あわせて扶養手当の改定について検討している。 また、今年の勧告にむけては、昨年の報告にそって給与構造見直しの2年目として、広域異動手当の新設、特別調整額の定額化の勧告を行うことを予定している。また、スタッフ職俸給表の新設についても、成案を得られれば勧告すべく、なお、ぎりぎりの検討を行っている。なお、この関連では、来年度から実施予定の一般職員に対する新しい能力・実績の反映システムについて報告で論及することなども検討している。 今年の官民較差の取り扱いや給与構造見直しについては、みなさんの意見も踏まえて適切に判断していく。 ●(短時間勤務制度・自己啓発等休業制度など) 短時間勤務制度については、各府省、職員団体等の意見を踏まえ、検討しているところだ。近々にも、検討を踏まえ、再度、全体像を示したい。 以下、現時点の考え方をお話しする。 @ 介護を対象とすることについては、介護休暇の取得状況からは短時間勤務のニーズが少ないと見込まれること、育児とは休暇制度と休業制度と位置づけの違いがあり、介護休暇の取得期間も民間より長いことなどから、今回は対象外としたもの。今後、休業制度へ転換することも含め全体として制度設計をどうするか検討していく必要があると考えている。 A 短時間勤務職員の俸給については時間比例を原則とし、さらに生活関連手当の取り扱いなどについて検討している。 B 定員・共済・退職手当等の取り扱いについても、なお、関係省庁と調整している。 C 後補充の任期付短時間勤務職員については、元職員を除いて、厳格な能力実証を課すこととすること、常勤と同様の服務義務を課すこと、給与制度についてはできる限り常勤職員に近い制度とすることなどの方向で検討している。 これらの検討結果については、いずれ全体像の中で示したい。短時間勤務制度、自己啓発等休業制度は、制度設計が間に合えばこの夏の勧告の時点で「意見の申出」を行いたいと考えている。 ●(総労働時間の短縮について) 民間企業の所定内労働時間の実態を集計中だ。集計結果を踏まえ適切に対応したい。さらに、超過勤務の縮減や職場の健康管理などについても報告を行うべく検討している。 月例給・特別給ともに「50人以上」への見直しを最終報告人事院の「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」は、21日に最終の会議を開き、「報告書」を取りまとめました(概要は別掲のとおり)。報告書は、今年3月に示された「中間取りまとめ」もふまえて、その後、検討をすすめてきた結果をまとめたものです。 「中間取りまとめ」では、民間給与実態調査は、「企業規模50人以上」に拡大することが適当としつつ、その結果を人事院勧告に反映するかどうかは、「引き続き検討」としてきました。 最終報告では、84%をこえる事業所において調査が実施されており、できるだけ広く民間給与の実態を反映させるために、官民比較の対象を「企業規模50人以上」にすることが適当であると結論づけています。 また、特別給(一時金)についても、月例給において企業規模100人未満を加えることとの整合性を考えれば、特別給の比較にあたっても企業規模100人未満の調査結果をくわえるべきとのべています。 このように、研究会の報告は、「企業規模50人以上」の調査結果の勧告への反映に、研究会としてゴーサインを出したものと言えます。 人事院としての取り扱いの判断は、今後の検討にまかされていますが、森永参事官がのべたように、労働組合からの意見も十分に聞いて、第三者機関として判断していくとしていることからも、勧告ギリギリまでの人事院への交渉・行動がカギを握ることとなります。 8月2日に7時間の人事院前「座り込み行動」を配置賃下げにつながる「比較方法の見直し」を許さないためにも、現在とりくみ中の「賃金改善署名」に全力をあげるとともに、25日の第2次中央行動、各地での人事院地方事務局への要請行動などを、多くの仲間の参加で成功させる必要があります。こうしたもと、公務労組連絡会は、8月2日に人事院前「座り込み」を配置、12時から約7時間におよぶロングラン行動でたたかいを強化します。在京・首都圏をはじめ、各地からの代表参加など積極的な結集を呼びかけます。 以 上 【別掲:研究会報告】「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」報告書(概要) 平成18年7月 T はじめに○ 「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」は、国家公務員の給与決定の基礎となる現行のラスパイレス方式による官民給与の比較方法の在り方について、昨年11月よりこれまで9回にわたって議論を重ねてきた。 ○ この間、3月20日に公表した研究会の中間とりまとめ「論点整理及び当面の対応策」の中で、本年の人事院勧告の基礎となる民間給与実態調査の調査対象企業、調査対象従業員等に関して提言を行った。 その後、本年1月より開催されている「給与懇話会」での意見も参考にしつつ検討を重ね、以下の報告をとりまとめた。 U 検討に当たって ○ 現行の民間準拠方式による公務員給与水準の決定方法については、昭和34年の現行のラスパイレス方式による官民給与の比較の導入、昭和39年の現行調査対象企業規模への変更以来、調査方法や比較方法全般の基本的な見直しは行われてこなかった。 ○ 本報告書は、官民給与比較方法の在り方について改めて検証を行い、問題点とともに改善策等についてとりまとめたものである。 V 現行の官民給与比較方法 ○ 人事院は、毎年、「職種別民間給与実態調査」及び「国家公務員給与等実態調査」を実施し、個々の国家公務員及び民間企業の従業員の4月分の月例給を精確に把握している。そのうえで、公務の一般的な事務・技術職である行政職(一)通用職員と、民間においてこれと類似すると認められる事務・技術関係職員について、給与決定に重要な影響を与える要素(役職段階、勤務地域、学歴、年齢)を同じくする者同士の給与額の比較を行い、その結果を公務員の人員構成で加重平均する、いわゆるラスパイレス方式により官民較差を算定している。 ○ 昭和34年に「ラスパイレス方式」を導入した当初は、事業所規模50人以上との比較を行っていたが、昭和39年に、池田総理・太田総評議長会談を受けた公労委の仲裁裁定において、現業の国家公務員の比較対象が企業規模100人以上とされたことから、人事院は、これを踏まえて、人事院勧告における比較企業の規模も同様の取扱いとした。 W 官民給与比較方法の見直しに当たっての基本的な考え方 −同種・同等比較の原則と民間賃金実態のより精確な反映− ○ 我が国では、国家公務員の労働基本権が制約され、人事院勧告制度がその代償措置とされている。人事院は同勧告において、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づき、民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に、国家公務員の給与水準を設定している。 ○ 公務と民間企業では、それぞれ職種、役職段階の人的構成、年齢構成、学歴構成等が異なる。このように、異なる集団間での給与の比較を行う場合には、それぞれの集団における給与の単純平均を比較するこきは適当ではなく、一般的と考えられる給与決定要素の条件を合わせて、同種・同等の者同士の給与を比較すべきである。現行のラスパイレス比較の方法は、この同種・同等比較の原則に則った比較方法であると考えられる。 ○ 民間準拠を基本に給与水準を決定している理由は、職員の理解と納得を得つつ、納税者である国民の理解を得るための最も客観的な指標であるということにある。とすれば、民間準拠の方式は一定の社会的コンセンサスに裏打ちされている必要があり、同種・同等比較を行う上で必要とされる民間給与をできるだけ広く把握して、公務員給与水準にできるだけ広い民間給与の実態を反映させることが重要である。 ○ 官民給与の比較に当たっては、現行の実地調査の手法により得られている民間給与実態調査の精確性・信頼性を確保することも重要である。 X 論点ごとの検討と改善策 1、官民較差に反映させる民間企業の規模 ○ 国民の理解を得つつ、公務員の適正な給与水準を確保していくためには、同種・同等比較の原則を維持しながら、官民比較の対象となる企業の範囲について、現行の比較対象企業規模(100人以上)にとどまらず、同種・同等の業務を行う民間従業員の給与をより広く把握し反映させることが求められている。 ○ 一定の部下数等を基準として推定される役職の責任の大きさを基本に公務と民間の同種・同等性の判断が行われていることから、企業規模100人未満の企業を比較対象に加えるとしても、同種・同等比較を、行う上で、公務と同様の役職段階を有する規模の民間企業と比較する必要がある。そのような点では、企業規模100人以上と企業規模50〜99人では大きな差が見られない。 ○ 本年の企業規模50人以上100人未満の民間給与実態調査の状況をみると、84%を超える事業所において調査が実施されており、また、各役職段階別の調査実人員についても十分な人数が確保されていることから、企業規模50人以上の従業員の給与を含めても精確な官民比較を行うことは可能である。 ○ 以上のことから、由種・同等比較の原則の下で、調査の精確性を確保しながら できるだけ広く民間給与の実態を把握し反映させるためには、官民比較の対象を 企業規模50人以上とすることが適当である。 ○ この場合、官民較差に反映される企業のカバー率は、現行の55.0%から64.8%に拡大し、都道府県のうち最も低い県でもカバー率が約5割となることが見込まれる。 2、比較対象従業員 ○ 給与の官民比較ではラスパイレス比較によって公務と民間の同種・同等の者同士の比較を行い、両者の均衡を図るという原則を維持するべきであり、比較対象とする従業員は、引き続き、両者に共通の事務・技術関係職員(デスクワーク)とすることが適当である。 ○ 非正規社員及び派遣労働者については、昨年の人事院勧告の際の報告において指摘されているように、「短期雇用を前提に、時給制が多く、諸手当の支給割合が低いなど、雇用形態、賃金形態が常勤職員とは明確に異なっていることから、官民比較の対象とすることは困難」であり、同種・同奪比較の原則から、比較対象従業員に加えないことが適当である。 ○ ライン職の要件については、公務における平均部下数の現状や民間企業における組織上の位置づけなどを考慮して、変更することを検討すべきである。例えば、公務における本府省課長(9級、10級)について、比較対象とする民間の部長は、 ・公務の本府省課長の約3分の2が対象となる構成員「20人以上」とすることが適当であると考えられる。 ○ 民間企業ではスタッフ職の従業員が増えており、現行のライン職を中心とした比較対象従業員の範囲では、民間企業の人事・組織形態に関する変化(組織のフラット化の進展等)を十分に反映できていない。公務においては、部下教に関わらず役職者を比較の対象としていることを考慮すれば、要件を満たしているライン職の役職者と職能資格等が同等と認められをスタッフ職や要件を満たしていないライン職も比較の対象に加えることが適当である。 3、比較要素 ○ 計量経済学の手法を用いて改めて検証を行った結果、現行の「役職段階」、「勤務地域」、「学歴」、「年齢」は、引き続き、比較要素とすることが適当であると認められる。 ○ 「勤続年数」を比較要素とすることについては、調査技術上の問題等が存在しており、さらに、必ずしも「勤続年数」を給与比較の際の比較要素に入れる必要はないとする検証結果が出ている。このことを踏まえると、これまでと同様に「勤続年数」は比較要素としないことが適当であると考える。 ○ 「性別」については、「性別」要素によって給与に差を生じさせるべきものではなく、男女格差を解消することを目指して、男女雇用機会均等法の制定等、様々な敵軍が行われている。このような背景を踏まえれば、今後、新たに「性別」を官民給与の比較要素に加えることは適当でない。 4、役職段階別の対応関係 ○ 官民比較の対応関係については、本年4月から実施している給与構造の改革における俸給表の級の新設・統合に伴う整理の必要があるほか、100人未満の小規模企業を比較対象企業に加える場合には、その対応関係を設定する必要がある。 ○ 企業規模100人未満の企業のライン職要件及び対応関係については、企業規模100人以上の企業における500人以上の場合と500人未満の場合との関係や、企業規模100人未満の企業の調査実員数の状況、組織段階数等を考慮して設定すべきであり、少なくとも、部長等や課長については、100人以上企業との一定の段階差を設けることが適当である。 ○ 本府省職員の職務の特殊性・困難性を考慮すると、例えば現行の「東京23区本店・企業規模500人以上」の従業員との比較について、企業規模を1,000人以上に引き上げることについても更に検討していく必要がある。 5、特別給(ボーナス)の官民比較の方法 ○ 月例給は、個人別の4月分の給与額を調査して官民比較を行っているのに対し、特別給(ボーナス)は、事業所単位で前年冬と当年夏の支給総額を調査して官民比較が行われており、月例給と異なり、同種・同等の者以外も含めて月数を算出している。 ○ 同種・同等に限定する手法としては、月例給と同様に個人別特別給を把握することが考えられ、同種・同等比較の原則を維持する観点からはこの方式を目指すべきとも考えられる。 ○ 個人別に特別給の支給額(年2回分)を調査することは、調査が煩雑となり、事業所の協力を得ることが困難となることが予測されるほか、一昨年から行っている当年夏季の特別給の実態把握が夏の勧告に間に合わないという問題が生じる。 ○ 民間企業におけるボーナスは、今日でもなお生活補給金としての性格を有しているものの、企業全体の利益を反映し、企業利益が個々人の実績により配分されており、公務との厳密な同種・同等比較を行って原資を決めるという方式になじまないという側面も有している。この点からは、事業所単位でボーナスの原資を把握する現行の官民比較方式を直ちに改めることは適当でないと考えられる。 ○ 以上を踏まえると、当面、特別給の官民比較について、現行の調査の基本的な枠組みは維持することが適当である。また、月例給において企業規模100人未満を加えることとの整合性を考慮すれば、特別給の比較に企業規模100人未満を加えることが適当である。 ○ 企業規模100人未満の特別給を比較に加える場合には、今後の課題として、月例給の比較の場合との整合性を考慮しながら、本府省職員の比較対象を例えば「東京23区・企業規模500人(又は1,000人)以上」とすることについても更に検討していく必要がある。 ○ 中長期的課題として、個人別支給額の把握を含む特別給の調査方法や、官民比較の在り方について、引き続き検討を行っていくことも必要である。 6、その他 ○ 比較職種の細分化は、国家公務員の仕事の在り方や、現行の各府省の人事管理の変更にまで踏み込むこととなり、そのような検討を行うときには、各府省はもちろん、職員団体も含めて幅広く議論されるべきである。 ○ 行政職(一)以外の職種については、民間給与実態調査で調査した相当職種の給与を参考にしつつ、基本的には行政職(一)との職務の違いに基づいて、行政職俸給表(一)の給与水準との均衡を考慮して、俸給表水準を定めることが適当である。 Y 結び 本研究会においては、現行の官民比較方法について検証及び検討を行ったが、人事院が、この報告を受けて、官民比較方法の内容や合理性について、国民に十分理解されるよう、説明責任を果たすとともに、改善すべき事項については、職員団体等関係者と意見交換を行いつつ結論を得て、必要なものについては本年の官民較差から反映されることを期待したい。 |
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以 上 |