No.569
2006年6月8日
「100人未満」を勧告に反映させないよう要請
= 地方公務員の給与改善にむけて全人連に申し入れ =
 公務労組連絡会は15日、地方公務員・教員の給与改善を求めて、自治労連、全教とともに、全国人事委員会連合会(全人連)へ要請しました。
 この要請は、2月13日、4月10日につづくもので、人事院と地方人事委員会が協力して全国で民間給与実態調査がすすめられるもと、地場賃金に影響し、賃下げにつながる「企業規模100人未満」の調査結果を人事委員会勧告に反映させないよう申し入れました。

勤務実態や人材確保をふまえて給与改善を求める

 全人連への申し入れには、若井事務局長を先頭に、黒田事務局次長、新堰事務局次長(全教副委員長)、蟹沢幹事(同中執)、柴田幹事(自治労連書記次長)、渡辺幹事(同中執)が出席しました。全人連側は、佐藤広事務局長(東京都人事委員会事務局長)、齋藤進事務局次長(東京都人事委員会事務局任用公平部長)ほかが対応しました。
 若井事務局長は、「今春闘での民間の賃上げ率を見ると、昨年と比較して0.1ポイント増にも満たず、結果は良くない。その上に、『100人未満』の小規模企業を調査に入れれば、否定的な影響は避けられない。そのことをふまえて、『要請書』(別掲)にもとづいて、賃金改善にむけた全人連としての努力を要請する」と求めました。
 また、新堰事務局次長は、「人事院勧告で教員関係の給与表が廃止されるもと、昨年は、教員のモデル給与表が提示された。自治体の財政悪化で教員給与をめぐる状況が厳しいなかで、モデル給与表は意義があったと考えている。文部科学省がすすめている教員の勤務実態調査では、月に数十時間の『持ち帰り残業』など厳しい勤務実態が明らかになっており、こうした現状をふまえて、今年も、全人連として、モデル給与表の作成を要請する」とのべ、また、柴田幹事は、「地方公務員の人材確保もふまえた給与改善が必要だ。地域の公立病院では、医者が来ないなど、地域間格差が出ている。この上に、地域の民間給与をより反映させるならば、さらに格差が拡大することとなる。『100人未満』の調査結果の勧告への反映については慎重に検討をおこなうよう求める」と要請しました。

教員の「モデル給与表」作成は今年も引き続き検討

 この要請に対して、佐藤事務局長から、以下のとおり見解がのべられました。

 ただいまのみなさんからの要請については、全人連として、確かにうけたまわった。さっそく、会長ならびに全国の人事委員会に、本日の要請の内容を伝える。
 現在、各人事委員会においては、6月16日の調査終了日にむけて、鋭意、民間給与の調査をすすめているところだ。
 本日の要請の内容については、それぞれの人事委員会で、「官民給与の比較方法のあり方」に関する人事院の検討状況を注視するとともに、調査の結果や各自治体の実情等をふまえ、今後、具体的に検討していくことになる。
 全人連としても、必要な点について、人事院、各人事委員会と十分、情報交換がおこなえるよう努めていきたい。
 また、教員のモデル給料表の取り扱いについては、全人連給与部会において、引き続き検討していきたい。
 公務員給与を取り巻く環境は引き続き厳しい状況だが、本年も各人事委員会においては、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしていく所存だ。

 最後に若井事務局長は、「民間給与実態調査の比較規模の変更は、40年ぶりとなるものだ。将来の方向を決めるものであり、その取り扱いは、慎重の上にも慎重な検討が求められている。その点から、今後とも、十分に意思疎通できるよう要請したい」とのべ、申し入れを終えました。

以 上


【全人連への要請書】

2006年6月15日

全国人事委員会連合会
会長 内田 公三 様

公 務 労 組 連 絡 会
議  長  石 元 巌

日本自治体労働組合総連合
中央執行委員長 駒場忠親

全 日 本 教 職 員 組 合
中央執行委員長 石元 巌

地方公務員給与に関する要請書

 日ごろより地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けてご尽力いただいていることに敬意を表します。
 さて、人事院は、私たちの反対を押し切って今年度の民間給与実態調査において100人未満の小規模企業を調査対象にし、地方人事委員会の協力をえて調査を行っています。
 また、総務省の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」報告書は、「国公準拠の考え方を刷新し」、「地域民間給与水準のより的確な反映等」を求めています。この調査結果が「勧告」にそのまま反映するとすれば、日本の賃金構造、賃金水準等を鑑みれば、公務員全体の給与水準の引き下げと地方公務員給与のより低位への引き下げになることは火を見るより明らかです。今でさえ、地方交付税の削減など地方財政が厳しいもとで、人事委員会勧告に基づかない自治体独自の給与削減が多くの自治体で行われており、さらに地方公務員の給与水準は低下する一方になってしまいます。
 一方、教職員給与について全国人事委員会連合会(全人連)は、各自治体の実情を踏まえ、その主体的な取り組みを支援するため、各自治体の参考となるモデル給料表を作成・提示されました。そして圧倒的多数の地方人事委員会が、このモデル給料表に準じる教員給料表を勧告され、議会で特に問題とされることはなく条例化されました。
 周知の通り、経済財政諮問会議や財政制度等審議会において、地方公務員給与の削減、とりわけ人材確保法の廃止を含む見直し議論が行われており、都道府県における財政事情を理由とする賃金削減の広がりなどの状況のもと、教育職参考モデル給料表の提示は教員給与水準を確保する上で一定有意義であったと考えます。
 すでに2月13日及び4月10日、地方公務員の給与の改善及び勧告に当たっての要請を行って来たところです。
 つきましては、その具体化として、下記の通り要請するものです。

(1)労働基本権剥奪の「代償機関」とされる人事委員会の役割と機能を踏まえ、当該の労働組合との合意抜きに100人未満の調査結果を勧告に反映させないこと。

(2)勧告に当たっては、地方公務員の給与が「地方公共団体における人事行政運営に直接関わり」、「地方公務員の人材確保にも大きな影響を与え」、「行政サービスの質にも深く関わる」ことを踏まえ、単純な民間給与水準比較によらないこと。

(3)今年度も、都道府県人事委員会が参考にできる教育職モデル給料表を作成し提示すること。
 また、作成に際し、人材確保法の趣旨を尊重し、教職員の勤務実態と教職の専門性を踏まえ、次の要求事項を反映させること。
  @ 初任給部分など2級の若い号給や1級賃金水準を重点的に改善すること。
  A 労使協議を踏まえ、昇給カーブのフラット化の影響が大きいベテラン教職員の処遇を確保すること。
  B 勤務実態に見合った諸手当の改善をすること。
以 上