No.568
2006年6月8日
賃下げにつながる「比較方法の見直し」に反対
= 人事院勧告にむけて「夏季重点要求書」を人事院・政府に提出 =
 公務労組連絡会は8日、06年人事院勧告にむけた「夏季重点要求書」を人事院・政府に提出しました。
 要求書提出にあたっては、中小をふくめた民間企業での06春闘での賃上げ状況が、昨年とほぼ同様の低額にとどまっているもとで、公務員賃金の社会的影響力もふまえた積極的な賃金改善をおこない、賃下げにつながる「官民給与費各方法の見直し」は断じてやめるよう求めました。
 今後、現在とりくみをすすめている「賃金改善署名」や、中央・地方での人事院・地方人事委員会への要求行動などを背景に、切実な賃上げ要求の実現を政府・人事院にせまっていきます。


中立機関としての人事院の役割発揮を強く求める

 人事院・総務省への要求書提出には、公務労組連絡会から、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、渡辺・蟹沢・山アの各幹事が出席しました。
 午前11時からの人事院への要求書提出では、職員福祉局の小林主任職員団体調査官、鈴木連絡調整官が対応しました。
 石元議長は、要求書の提出にあたって、「公務労組連絡会として、『比較規模100人未満』の民間給与実態調査の結果を勧告に反映させないよう求めてきた。比較方法見直しは、政府の公務員総人件費削減の方針にも沿ったものであり、認められない。公務員給与は、民間をふくめて圧倒的多数の労働者の生活にも影響するものであり、そのことをふまえた給与改善をおこなうべきだ」と求めました。
 また、若井事務局長は、賃金要求にかかわって、「民間の06春闘での賃上げは、昨年と比較して0.07ポイント程度の増で、ほとんど変わっていない。その上に、『100人未満』の小規模企業を調査に入れれば、さらに引き下がることは明らかだ。また、一時金でも、大企業と中小では大きな格差がある。『給与構造の見直し』によって、定年退職まで賃金が上がらない人もいるなかで、そのうえに、今年の勧告がマイナスとなれば、職員の働く意欲はなくなる。労働基本権制約の『代償措置』としての中立機関である人事院として、信頼を得るために給与改善にむけた努力を求める」とのべました。
 参加者は、「昨年の『給与構造の見直し』では、地方自治体では、今でも賃金改訂が決着していないところがある。それなのに、またも比較方法見直しがおこなわれようとしている。職員が誇りとやりがいを持って仕事ができる職場にしてもらいたい」「給与の地域間格差がひろがるなかで、比較方法見直しは、地方に行くほど大きく影響が出る。地方人事委員会も、人事院の動向を見ている。また、公務員給与が下がれば、地場賃金も下がり、賃下げの悪循環となる。比較方法の見直しはやめるべきだ」と求めました。
 これに対して、小林主任職員団体調査官は、「本日みなさんからいただいた要求書は、さっそく関係部局に伝えたい。検討したうえで、後日、回答したい」とのべました。
 最後に石元議長は、「現在、人事院総裁あての賃金改善署名にとりくんでいる。そうした署名にも込められた組合員の声を背景にして、さらに交渉をしていきたい」とのべ、勧告にむけて誠意ある回答を重ねて求めました。
 また、この日は、夏季要求とあわせて、「職域部分に代わる新たな制度創設にむけた人事院調査に関する申し入れ書」を提出しました。
 「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針」が4月28日に閣議決定されるもとで、政府は、これまで総務省(人事・恩給局)が担当していた民間企業の退職金の実態調査を人事院に委嘱しました。
 調査対象企業規模の変更をふくめて、調査方法が見直されるようなことになれば、公務労働者の退職金の額にも大きな影響をあたえることから、人事院に対して申し入れをおこなったものです。今後、夏季重点要求とあわせて、人事院への対応を強めていきます。

「人勧尊重」にとどまらず使用者としての責任ある回答を

 11時30分からの総務省への要求書提出は、総務省側は、人事・恩給局総務課の相米課長補佐ほかが対応しました。
 石元議長は、要求書提出とあわせて、使用者としての総務省からの誠意ある回答にむけた検討を求めました。また若井事務局長は、昨年とほぼ同様の民間の賃上げ状況を示しつつ、「こうした状況で、従来通りの『人勧制度の維持・尊重』の回答ならば、マイナスの勧告さえも甘んじて受けいれよと言うに等しい。職員が希望を持って仕事をできるようにするのが、使用者としての責務だ。そのことをふまえて、今後、公務労組連絡会との交渉に応じ、誠意ある回答を示すよう求める」とのべました。
 同席した各幹事からは、「文部科学省の勤務実態調査では、小中学校の4月の超過勤務は、校内での超勤と『持ち帰り残業』をあわせると1か月で80時間を超えている。まさに異常な実態だ。この現状を解消するとともに、この努力に報いる給与改善が重要だ」「職場では、非正規職員の数が増えている。正規職員の給与がマイナスとなれば、もともと賃金の低い非正規にはさらに大きな影響が出る。勧告尊重ではなく、使用者としての責任ある対応を求める」との要望がのべられました。
 相米課長補佐は、「要求書の趣旨はうけたまわった。今後、誠意をもって検討し、しかるべき時期に回答させてもらいたい」とのべました。

「賃金改善署名」を積み上げて賃下げ攻撃をはねかえそう

 要求書提出でも強調したように、人事院が小規模企業の給与実態調査を開始しているもと、今年の夏季闘争では、官民給与比較方法給与比較方法の見直しによる賃下げを許さないとりくみの強化が重要となっています。
 とくに、「賃金改善署名」は、職場・地域からの運動の柱であり、従来以上に集中したとりくみが求められています。
 署名は、100人未満の小規模企業の実態調査にもとづく賃下げ勧告に反対するとともに、人事院勧告の社会的影響力をふまえ、すべての労働者の生活改善にむけた給与勧告を要求しています。このことから、公務・民間の「賃下げの悪循環」に反対する立場から、署名運動をひろく民間組合にも協力を呼びかけるなど地域ぐるみのとりくみにしていく必要があります。
 公務労組連絡会では、6月23日の全労連「最賃デー」行動にあわせて、「賃金改善署名」の第1次提出行動にとりくみます。また、夏季闘争最大規模の行動として計画されている「7・25中央行動」でも、全国から多くの仲間の参加を背景に、署名を積み上げて人事院に賃金改善を強くせまっていきます。
 一人でも多くの人たちに署名への協力を呼びかけ、賃下げにつながる「給与比較方法の見直し」を許さず、「賃下げの悪循環」の攻撃をはね返しましょう。
以 上