No.563
2006年3月23日
「小規模企業」の実態調査開始を表明
= 06春闘要求をめぐり政府・人事院と最終交渉 =
 公務労組連絡会は23日、2月9日に提出した06春闘要求に対する最終交渉をおこないました。
 交渉では、すでに妥結がはかられた民間大手の集中回答もふまえつつ、職場の仲間が期待できる積極的な回答を迫りました。しかし、政府・人事院ともに、従来通りの回答に終始し、「月額で11,000円以上、誰でも1万円以上」との切実な要求に何ら応えない、きわめて不満な回答となりました。
 そのうえ、人事院は、20日に研究会から「中間取りまとめ」が発表されたばかりであるにもかかわらず、給与実態調査の対象を企業規模100人未満の「小規模企業」までひろげることを表明するなど、きわめて不当な回答を示しました。

「人勧制度の維持尊重」との従来の姿勢崩さず(総務省交渉)

 総務省・人事院との最終交渉には、公務労組連絡会からは、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、柴田、植西、山アの各幹事が出席しました。
 総務省交渉では、人事・恩給局総務課の酒田総括課長補佐、笹森課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長は、「3月中旬に民間大手の交渉が妥結した。全体的にプラス回答となっている。今年は、財界もベア要求に応えざるをえなかった。そうした春闘情勢をふまえて、今日は、要求に対する使用者としての誠意ある回答を示していただきたい」とのべ、回答を求めました。
 酒田総括課長補佐は、「公務員を取り巻く厳しい状況のもと、みなさんからいただいた切実な要求をふまえて、総務省として種々検討してきた。本日、最終的な回答を示したい。なお、使用者として、職員が安んじて職務に専念できるよう、適切な給与水準の設定に努めたいという気持ちに変わりがない」とのべたうえ、以下の回答を示しました。

【総務省最終回答】
1、(総人件費改革について)総人件費改革等の具体化にあたっては、総務省としても国家公務員の人事行政を所掌する立場から、内閣官房・内閣府などと連携をとりつつ、職員の雇用の確保などセーフーティネットの整備にむけ最大限努力する。
2、(給与改定について)人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
 平成18年度の給与改定については、この基本姿勢のもと、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
 なお、平成14年11月の衆参両院総務委員会付帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分に話し合い、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
 国家公務員の給与水準については、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、これまで同様に適切な給与水準が確保できるよう努力していく。
3、(ILO条約について)政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
 なお、ILO結社の自由委員会第329、331次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
4、(労働時間の短縮について)「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。
 なお、育児・介護のための短時間勤務については、人事院とも連携・協力しながら検討を進めてまいりたい。
5、(公務の高齢対策の推進について)再任用に関する実施状況を把握しつつ、その円滑な運用と定着にむけて、政府全体として必要な対策をすすめる。
 今後とも、雇用と年金の連携に留意しつつ、公務員の高齢者雇用の推進については、高齢者用継続制度の導入などの民間の動向の把握をはかるとともに、職員団体の意見を聞きつつとりくんでまいりたい。

職場の不安の声に応えることこそ使用者の責任だ

 これに対して、若井事務局長は、「マスコミの公務員バッシングなどのもとで、誇りを持って仕事をするためには、給与水準や職場環境を整えることが使用者としての責任だ。ところが、政府は、公務のリストラへ『行政改革推進法案』を国会提出し、さらに不安をあおっている。また、賃金に対しては、民間が5年ぶりのベアを獲得しているもと、職場には期待もひろがっている。評価制度は、恣意的な評価がされるのではないかとの不安が残る。労働基本権問題は、連合との『政労協議』がはじまっているが、主張には乖離がある。超過勤務縮減対策では、職員を増員する抜本的な対策が必要だ」などの点を指摘しました。
 酒田総括課長補佐は、「国会に『行政改革推進法案』が提出されているが、指摘されたように、職員の士気が低下したり、不安のないようにすすめたい。当然、検討にあたっては、みなさんの意見を十分にうかがっていきたい。評価制度は、試行がすすんでいるが、納得性のある評価制度を確立するために努力したい。労働基本権をめぐっては、20日の政労協議で、『検討の場』を設けられることとなったが、今後、みなさんの意見もふまえて議論をすすめていく」と答えました。
 最終回答をうけて、石元議長は、「回答は不満が残るものだ。今後、さらに夏にの人事院勧告期にむけて交渉をすすめたい」とのべ、交渉を閉じました。

「研究会」報告をふまえて調査対象拡大を判断(人事院交渉)

 人事院交渉は、給与局給与第1課の幸課長補佐、職員福祉局職員福祉課の植村課長補佐ほかが対応しました。
 石元議長が回答を求めると、人事院は、以下の回答を示しました。
【人事院最終回答】
1、官民較差にもとづき、適正な公務員給与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
2、公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で、適切に対処する。
3、官民給与の比較方法のあり方については、引き続きみなさんの意見を十分聞きつつ、研究会や懇話会の議論を踏まえて検討を進め、みなさんの納得を得るよう努める。
 本年の民間給与実態調査については、この官民比較のあり方の検討をおこなうため、100人未満50人以上の小規模企業も調査対象に加えることとする。
4、給与勧告作業に当たっては、較差の配分、手当のあり方などについてみなさんと十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
5、一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。
6、公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者およびみなさんの意見を聞きながら引き続き検討をすすめる。
 育児・介護を行う職員の短時間勤務制度については、本年夏の勧告時点を目途に成案を得るよう、制度導入に向けて必要な検討を急ぐ。
 超過勤務の縮減については、関係機関と連携して能率的な業務執行の確保と厳正な勤務時間管理に努めつつ、早期に実効ある具体策を取りまとめるよう検討を進める。
 所定内勤務時間のあり方については、民間企業の所定内勤務時間の精確な動向を速やかに把握し、民間準拠の原則に基づいて検討を進める。
7、自己啓発等のための休業制度についても、本年夏の勧告時点を目途に検討を急ぐ。
8、昨年末に改定された「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」にもとづく施策が着実に実行されるよう努める。
9、被用者年金一元化や国家公務員宿舎のあり方の検討に対しては、みなさんの意見も聞きつつ、適切に対応する。

 幸課長補佐は、「春闘のベアを見ると、電機で1,000円から500円、自動車では1,000円からゼロとなり、企業間でも格差がある。一時金は、企業の業績を賞与に反映させる傾向のもとで高くなっている。中小の妥結はこれからであり、人事院としては、実態調査を通して給与の実額把握に努めたい。比較方法の見直しは、3月20日の研究会の報告をうけて、人事院として、民間賃金実態調査の対象に小規模企業を加えることを判断した。比較方法は全般的に検討していくが、そのなかでみなさんの意見をうかがっていく」と補足しました。

労働組合の納得も合意もない「小規模企業」への拡大には反対

 若井事務局は、「比較対象企業に小規模企業を加えることは認められない。現行の100人以上の規模は、40年以上前に政労協議で合意したことだ。それを変更するならば、政労協議でやるべきであり、研究会の報告をうけて変えるのはおかしい。また、たとえ調査することになっても、取り扱いについては、人事院としての政策判断があってしかるべき。中立機関として、公務員の労働条件を確保するのが人事院の役割だ」とのべ、賃下げにつながる比較方法の見直しに反対しました。
 また、「現在の超過勤務の実態は、内部でやりくりできる範囲を超えている。増員など根本議論を抜きにしては解決は困難だ。年金や公務員宿舎の問題は、マスコミのバッシングが先行しているなかで、冷静な議論こそ必要だ」と指摘しました。
 また、交渉参加者は、「地域格差が拡大するなかで、比較方法見直しで国の公務員の賃金が引き下げられれば、地方自治体職員はさらに引き下がる。人事院は、政治的な圧力に屈するのではなく、専門機関として、賃金の理念を示すなど、毅然として対応すべきだ」「育児・介護のための短時間勤務制度などは、今後、女性からも十分に意見を聞いて、良い制度として確立してもらいたい。また、育児休業取得による昇給延伸は、完全復元を求める。そのほか、女性の管理職への登用については、いっそうの努力を求める」と追及しました。
 これに対して幸課長補佐は、「比較方法の見直しは、研究会などで検討してきたが、その過程では、労働組合からも意見を聞いてきた。指摘のあった通り、調査することと、その結果を使うことは別の問題であり、人事院として、これから検討することとなる。今後とも、みなさんの意見を十分にうかがっていきたい」とのべ、また、植村課長補佐は、「労働時間短縮は、政府としても重要課題と認識している。厳正な勤務管理につとめるなど、政府全体で取り組んでいく課題だ。その他、年金・宿舎問題などでの指摘はその通りだ。うかがったご意見についてはうけたまわった。各担当に伝える」と回答しました。
 これをうけて、最後に石元議長は、「小規模企業の調査結果を反映させるかどうかは、今後、検討すると言うが、調査を開始することは事実だ。結局は、賃下げや賃金格差の拡大につながることは明らかだ。地方からの怒りはいっそう大きくならざるをえない。『賃下げの悪循環』を加速させる点からも、対象企業の拡大に反対する」とあらためて表明し、交渉を締めくくりました。
以 上