民間賃金実態調査の開始を前に方向を示す
人事院の説明には、公務労組連絡会から若井事務局長、新堰・黒田の両事務局長、熊谷幹事が出席、人事院は給与局給与第一課の幸課長補佐が対応しました。
幸課長補佐は、「論点整理及び当面の対応策」(概要を別掲)の内容について、議論経過をふくめて説明しました。注目される比較対象企業の「見直し」について、報告は、部長・課長・係長など公務に対応する職務があること、民間従業員の3分の2(全国的には65%、都道府県別では最も低い県で49.2%)をカバーすることなどを理由にあげ、50人以上の企業にまで引き下げることは適当であると結論づけています。
研究会は、今年の人事院勧告にむけて引き続き検討をすすめることになっていますが、この時期にこうした報告をおこなったことについて、「今年の人事院勧告の基礎となる民間給与実態調査は、比較方法の検討に先行して、本年度中に調査方法、調査内容等を確定する必要がある」としており、すでに準備がすすんでいる今年の民間給与実態調査に間に合わすために中間的な報告を発表したものです。
そのことからも、企業規模を50人以上の「小規模」事業所まで調査対象にすることを「適当」とした報告は、今年の調査作業の方向を決めるうえで重大な意味を持っています。
賃下げすすめる比較方法「見直し」反対をあらためて表明
説明をうけて、若井事務局長は、「現在の比較方法は長年にわたり定着してきたものである。見直すならば、労働組合の納得と合意は不可欠であり、労働組合との十分な意見交換を求める」としたうえ、「公務員全体に影響する問題であり、地方自治体では、国以上に引き下げへの圧力が強まることは明らかだ。賃下げにつながる調査対象企業規模の引き下げには反対する。人事院は、政府や国会の声をうけて見直すのではなく、第三者機関として、職員の労働条件を守るため力を尽くすべきだ」と主張しました。
幸課長補佐は、「研究会の報告をうけて、『企業規模50人以上』を調査対象にするかどうかについて、3月中には結論を出したい」とのべ、また、調査対象にしたとしても、その結果をどこまで勧告に反映するかは、今年の勧告にむけて引き続き検討するとしています。
「格差社会」のもとで、大企業と中小との賃金格差がひろがるなか、比較企業規模の下げは、公務員給与の引き下げにつながることは明らかです。また、そのことが、人勧準拠の労働者をはじめ、民間賃金にも影響します。
こうした研究会の報告が発表されるもとで、公務員給与引き下げ、「賃下げの悪循環」を阻止するため、人事院に対するたたかいの強化が求められています。
以 上
「論点整理及び当面の対応策」(中間とりまとめ)の概要
官民給与の比較方法の在り方に関する研究会(平成18年3月)
論点1 調査対象企業の規模について
・民間給与実態調査は、企業規模50人以上の事業所に拡大することが適当。
(調査対象企業規模を50人以上とする理由)
@ 公務に対応する組織階層の有無、A 実地調査による精確性の維持、
B 民間従業員の3分の2をカバー、 C 公務採用者の民間企業との競合状況
・ 本年の人事院勧告に反映する比較対象企業の規模は、引き続き検討。
論点2 現行の官民給与の比較方式について
・ 同種・同等の者同士の比較という現行方式は維持すべき。
・ 「役職段階」、「年齢」、「学歴」、「勤務地域」は、引き続き比較要素とすることが適当。「勤続年数」を加えるかどうかは、更に検証。
・ 役職段階別の対応関係は、平成18年4月の俸給表改定に伴う見直しが必要。
論点3 比較対象従業員の範囲について
・ 賃金構造基本統計調査における取扱い等を考慮して、比較対象となる役職の要件の変更を検討。あわせて、スタッフ職も比較の対象に加えることを検討。
(例) 部長 : 構成員30人以上 → 構成員20人以上
論点4 比較職種について
・ 比較職種の細分化は、人事管理に大きな影響を与えるため、労使を始めとして幅広く各方面の意見を聴取した上で、比較職種の細分化の可否等を検討。
論点5 ボーナスの官民比較の方法について
・ 個人別のボーナス支給額の調査は、調査事業所の負担が増大し、当年夏のボーナスの実態が把握できなくなるため、当面は、現行の方式が適当。
・ ボーナスの比較方法は、引き続き検討。 |