No.557
2006年2月13日
地方公務員の給与改善を申し入れ
= 民間給与実態調査の「見直し」検討をふまえて全人連へ要請 =
 人事院が民間給与実態調査の「見直し」にむけた検討を開始するもと、公務労組連絡会は13日、自治労連・全教と共同して、全国人事委員会連合会(全人連)に対して、地方公務員給与にかかわって申し入れをおこないました。
 申し入れでは、民間給与と機械的に比較せず、地方公務員給与が、地方自治、地方公共団体のあり方などとも密接不可分であることをふまえて調査するよう求めました。

人材確保、公務サービスの面からの検討を求める

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田・新堰両事務局次長、蟹沢・熊谷の各幹事、自治労連から川俣副委員長、全教から藤田日高教中執が出席しました。全人連は、内田会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、泉川(北海道)、大立目(宮城県)、大河原(群馬県)、井上(横浜市)、佐宗(愛知県)、帯野(大阪府)、丸山(広島県)、青野(愛媛県)、平田(福岡県)の各人事委員会代表が出席しました。
 はじめに、石元議長は、内田会長に「要請書」(別掲)を手渡し、「人事院が06人勧にむけて、民間給与実態調査の比較対象企業を100人未満の小規模企業にまで拡大することについて検討に着手した。『給与構造の見直し』による地域間格差の拡大、中高年層の給与水準引き下げ、査定給導入の一方で、自治体が独自に賃金削減を行っているもと、地方公務員の生活改善にむけた全人連としての努力をお願いする」と申し入れました。
 また、若井事務局長は、「地方公務員の給与に関わっては、『地方公務員の給与のあり方に関する研究会』の『中間整理』では、人事行政運営に直接関わり財政運営とも密接な関連を有していることや、人材確保にも大きな影響をあたえ、公務サービスの質にも深く関わることがのべられている。単純に民間準拠のみでは決めることができない。本格的な地方分権時代に対応するためにも、より有為な人材の確保が必要となってくる。一方で、地域の民間給与水準にあわせるべきと『行政改革の重要指針』でも強調され、マスコミもふくめ給与水準引き下げの圧力が強い。今一度、自治体の100年の大計に立って考え、対応していく必要がある」とのべたうえ、要請項目の要点をのべました。

 これに対して、内田会長は、以下のように回答しました。
(内田全人連会長回答)
 ただいまのみなさんからの要請については、確かにうけたまわった。さっそく、全国の人事委員会に伝える。
 ご承知のように、官民給与の比較方法のあり方については、昨年末に閣議決定された「行政改革の重要方針」に比較対象事業所規模の見直し等が盛り込まれるなど、各方面の関心は、極めて高いものがある。
 現在、国においては、総務省の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」、人事院の「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」「給与懇話会」などで、地方公務員給与のあり方、官民比較のあり方等について検討がなされており、比較対象とする企業規模など、民間給与実態調査にかかる事柄についても議論されている。
 民間給与実態調査は、公務員の給与水準を民間と比較検討するための基礎資料を作成するため、人事院および各人事委員会が共同で実施している。調査内容の変更は、公務員の給与水準の決定に影響をおよぼすことも考えられることから、全人連としても、引き続き、これらの検討の状況を慎重に見守っていくとともに、必要な点については、人事院、各人事委員会とも十分な意見交換をすすめていきたい。
 また、各人事委員会においても、それぞれの自治体の実情をふまえ、調査の納得性、信頼性、客観性などをより高めていく観点から必要な検討をおこない、準備をすすめていくことになるものと考えている。
 申し上げるまでもなく、人事委員会の重要な使命は、精確な公民比較をおこない、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識している。
 公務員給与を取り巻く環境は引き続き厳しい状況ではあるが、本年も、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしていく所存である。
以 上

(別添:全人連への要請書)

2006年2月13日

全国人事委員会連合会
会長 内田 公三 様

公 務 労 組 連 絡 会
議 長  石 元 巌
日本自治体労働組合総連合 
中央執行委員長 駒場 忠親
全日本教職員組合     
中央執行委員長 石元 巌

地方公務員給与の改善についての要請書

 日ごろより地方公務員の勤務条件の向上にご努力頂いていることに敬意を表します。
 人事院は、今年の勧告をめざして、民間給与実態調査の比較対象企業を100人未満の「小規模企業」にまで拡大することについて、検討を開始することを明らかにしています。
公務員の給与水準については、勧告制度のもとで民間企業との適正な比較によって水準を決定してきたところです。ところが、昨年の人事院勧告の「給与構造の見直し」によって、地域間格差の拡大、中高年層の給与水準引き下げ、さらに査定給の導入などが行われました。一方で、「税財政の三位一体の改革」や地方財政危機を口実に勧告を超えて独自に賃金削減を行っている自治体が半数近くにも達しています。
 また、総務省は「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」(以下「研究会」と略す)の「報告」をこの3月に発表することを明らかにしています。地方公務員賃金は、「研究会」の「中間整理」で「それぞれの地方公共団体における人事行政運営に直接関わり、また財政運営とも密接な関連を有している。さらに当該地域における地方公務員の人材確保にも大きな影響を与えるとともに、地方公務員によって行われる公務サービスの質にも深く関わっていくものである」と述べているように、単に民間準拠のみで決定できない性格を持っています。
 さらに、賃金の独自削減は、地方公務員の生活を直撃しているだけでなく、地域の消費を冷え込ませ、地域経済にも大きな否定的影響を及ぼしています。
 地方公務員の労働条件に関わる重要な役割を担われている貴職がこうした認識にたって、厳しい地方の経済情勢の中で住民福祉の充実に日々努力している自治体・自治体関連職場で働く労働者の暮らしを改善するために、下記の要求事項を尊重し、人事委員会勧告にむけた調査にあたられることを要請するものです。

1.地方公務員の給与は、「研究会」の「中間整理」でも述べているように単に民間の給与水準と機械的に比較して決定すべき性格でないことに鑑み、民間給与実態調査に当たっては地方自治、地方公共団体のあり方等と密接不可分に結合していることに十分留意して調査すること。

2.近年、各人事委員会の調査対象企業が、労使交渉で賃金・労働条件を決定している一定の規模をもつ企業が対象から大幅に削減される一方、労働組合の組織率が相対的に低い小規模企業の割合が拡大されています。これは、労働基本権の「代償機関」とされる人事委員会の機能からすれば、その「代償性」を低下させるものと考えます。
  調査対象事業所は、労使交渉によって賃金等の労働条件を決定している企業を基本とし、公務労働者の生活実態や関係労働組合の要求を踏まえた調査を行うこと。
以 上