No.554
2005年12月26日
ILO本部を訪問、「追加情報」を提出・要請
=「総人件費削減」など最新情報を伝えて労働基本権回復求める=
 「構造改革」の名のもとに、公務員総人件費削減が一方的にすすめられるようとしているもと、全労連は、公務員の労働基本権保障を求めた2度のILO勧告をふまえて、新たな「追加情報」をILO結社の自由委員会に提出しました。
 また、「追加情報」の提出にあたって、公務単産代表による「ILO要請団」を編成し、ILO本部を訪ねて、労働基本権を踏みにじりながら強行されている労働条件改悪など、日本の公務労働者の実態を直接伝えました。
 結社の自由部への要請に加え、ILO労働者グループなどの代表との懇談、国連人権委員会への訪問など、今後のたたかいにつながる有意義な行動となりました。

「きちんとした交渉・協議は不可欠」とILO労働者理事が指摘

 ILO要請団(団長−大黒自治労連書記長)は、スイス・ジュネーブのILO本部にむけて12月16日に日本を出発し、22日に帰国しました。10名の要請団は、全労連の岩田事務局次長・国際局長をはじめ、自治労連から東京・愛知・大阪・京都の職場代表をふくめた7名、全教からは蟹沢中執(公務労組連絡会幹事)が参加、公務労組連絡会からは黒田事務局次長が随行しました。
 19日にILO本部を訪問した一行は、はじめに、ILO理事会労働側グループ書記で国際自由労連ジュネーブ事務所のアンナ・ビオンディ所長と約1時間にわたって懇談しました。ビオンディ所長からは、最近のILO理事会での動きなどが紹介されました。
 要請団からは、「追加情報」のポイントを説明し、賃金決定における政府の自治体当局への介入・干渉、「給与構造の見直し」にあたっての地方自治法の一方的な改悪強行、さらには、労働基本権を制約したまま、公務員総人件費削減の「実行計画」を決定しようとしている実態を報告しました。
 これに対して、ビオンディさんは、「国の経済政策から人件費削減が必要な場合もあるが、その際でも、きちんとした交渉・協議が不可欠だ。一方的な決定は、こうした原則からもはずれるものだ」と明確にのべ、今後ともぜひ情報をILOに提供してもらいとの要望ものべられました。

来年3月の委員会での日本案件審議を示唆

 その後、ILO結社の自由部の担当責任者のカレン・カーチス・ILO労働基準局副局長と面会し、「追加情報」の内容をあらためて伝え、日本政府が2度のILO勧告をただちに履行するようILOとしての対応を要請しました。
 また、意見交換では、「追加情報」に関連して、各参加者が、教員の人事考課制度などの問題点や、大阪・東京などの自治体職場の実態をまじえた権利破壊の現状を伝えました。
 カーチス副局長は、これらの話に真摯に耳を傾けながら、「いただいた追加情報は、とても重要な文書だと受けとめる。この他にも、新しい展開があれば、どんなことでもいいので詳しい情報を伝えてほしい」とのべました。
 また、日本の「公務員制度改革」にかかわる結社の自由委員会での審議が、来年3月にも予定されていることが明らかにされました。
 ILOからは、勧告が出される直前の2002年のILO要請団が面会した結社の自由部上席法律担当官のパトリック・キャリエール氏も同席し、約1時間30分にわたって、熱心な意見交換が続きました。
 ILO本部では、最後にILO労働者活動局のダン・クニヤ次長に会い、労働組合運動などさまざまな活動にかかわって交流しました。かつて国際自由労連のジュネーブ事務所長をつとめていたクニヤ氏は、総選挙の結果や小泉「構造改革」など日本の政治・経済の情勢にもとても詳しく、日本国内での政府との対話、世論を高めるための「キャンペーン」の重要性など示唆に富んだアドバイスがのべられました。
 一行は、翌20日には、ジュネーブ市内にある国連人権委員会を表敬訪問し、公務員の政治的活動への弾圧事件などもふくめて、人権委員会からの今後の協力を要請しました。対応したパトリック・ギルバート氏からは、国連人権委員会のシステムの詳細な説明をはじめ、さまざまな方法で国連人権委員会への提訴が可能なことも紹介され、さらに、資料の提供もうけるなど有意義な懇談・交流ができました。
 要請団は、一連の行動の成果を確認しつつ、日本政府が労働基本権の回復要求に背を向けているなかで、今後とも、ILOをはじめ国際社会に訴えていくとともに、労働基本権回復にむけた国内の世論と運動をさらにひろげていく重要性を確認して帰国しました。
以 上