No.553
2005年12月9日
数あわせの「実行計画」策定をやめよ
= 「総人件費改革」にかかわって行革推進事務局に申し入れ =
 政府が「小さな政府」にむけた総人件費削減をねらうもと、公務労組連絡会は9日、行革推進事務局に対して、人件費削減の「実行計画」を策定しないよう求めた「要請書」を提出、労働組合の十分な意見反映などを申し入れました。
 これに対して、行革推進事務局側は、11月に経済財政諮問会議で決定された「総人件費改革基本指針」にもとづき、12月下旬にも「実行計画」を閣議決定することを明らかにするなど、総人件費削減の強行を表明しました。

政府方針を自治体・教員・特殊法人に押しつけるな

 この日の要請行動は、11月14日に経済財政諮問会議が決定した「総人件費改革基本指針」で、今後の「実行計画」の取りまとめ作業を行革推進事務局がおこなうとされていることから、公務労組連絡会としての申し入れにとりくんだものです。
 公務労組連絡会からは、若井事務局長、黒田・新堰の両事務局次長、柴田・篠原両幹事が参加、行革推進事務局は、公務員制度等改革推進室の稲山企画官ほかが対応しました。
 はじめに、若井事務局長は、「経済財政諮問会議の『基本指針』は、国・地方の公務員の定員・給与にかかわる事項が盛り込まれた。今後、その『実行計画』策定に加えて、来年の国会には、『行革推進基本法案』の提出も伝えられている。国民にサービスするという公務・公共業務のあり方の議論を抜きにして、数あわせの議論がすすんでいることは問題だ。公務サービスのあるべき姿について、政府としても明らかにしながら議論する必要がある」とのべ、現段階の作業状況をはじめとして見解を求めました。
 稲山企画官は、「『基本指針』にもとづき、政府としての『実行計画』を年内に取りまとめることが決定されている。12月下旬の閣議決定をめざして、行革推進事務局として検討作業をすすめている。『基本指針』に即して、定員・給与・その他の特殊法人や独立行政法人などの問題を柱にして、今後、すすめるべき事項を盛り込む。省庁別の削減数など具体的なものは示さないつもりだ。市場化テストについては、行革推進事務局が担当していないが、公務員の仕事の改革にむけて政府として作業をすすめている。要請にあるように、必要なものについて、おたがいに意見交換するのは大事なことだ」と答えました。
 その後、参加者からは、地方公務員の定員削減の強要、義務教育費国庫負担金縮小による教員の削減、特殊法人や独立行政法人に対する政府の人件費削減の押しつけなどの問題について指摘し、機械的な「総人件費削減」はおこなわないよう求めました。
 最後に若井事務局長は、「日本の公務員は決して多くはない。国民の行政需要との関係からの議論が必要だ。耐震強度偽装問題に象徴されるように、『小さな政府』は、かえって大きな国民負担となって返ってくる」と指摘したうえで、「総人件費の問題は、公務労働者の勤務条件と密接不可分だ。その点からも、労働組合と十分な交渉・協議をすべき」と求めました。
 稲山企画官から、「必要があれば、みなさんとも会って話し合いたい」との回答をうけ、申し入れを終えました。

(資料:行革推進事務局への要請書)

  2005年12月9日

内閣総理大臣    小泉 純一郎 殿
行政改革担当大臣  中馬 弘毅  殿

公務労組連絡会
議長 石元 巌

「公務員総人件費改革」等にかかわる要請書

 経済財政諮問会議は11月14日に「総人件費改革基本指針」(以下、基本指針)を決定しました。その内容は、国家公務員定員の5%以上の純減や、「新地方行革指針」に示された4.6%以上の地方公務員定員純減の上積みを求めるとともに、国・地方の公務員給与の「抜本的改革」で、定員・給与の両面からの人件費削減を打ち出しています。
 「基本指針」では、今後、行政改革担当大臣がとりまとめ大臣となり、政府としての「実行計画」を年内に策定するとしており、現在、その作業が行革推進事務局を中心にしてすすめられていると承知しています。
 公務員定員の削減は、「小さな政府」をめざす「構造改革」の重要事項に位置づけられるものですが、しかし、人口千人あたりの日本の公務員数は、欧米の先進諸国と比べて半分にも満たず、これ以上の公務員削減は、公共サービスの後退を招き、結果的には国民に新たな負担を押しつけるものでしかありません。
 また、この間の経済財政諮問会議の審議経過を見れば、民間議員主導で公務員の定員削減や給与の見直しが議論され、「官から民へ」とする「改革」だけが前面に立ち、本来、公務に求められる公共性や公務・公共業務が国民に対して果たす役割、さらには、労働基本権制約のなかでの公務員労働者の労働条件決定のあり方などの議論が後景に追いやられてきました。その結果、「対GDP比で半減」などといった削減数のみを目的化する乱暴な議論がすすめられてきたことは、きわめて重大です。
 こうしたもと、最近の耐震強度偽装問題も、「官から民へ」とする流れにあらためて疑問を投げかける事態となっています。国や自治体の国民・住民に対する責任をふまえれば、公務員総人件費削減や、その具体策として「市場化テスト」導入、独立行政法人化、民営化などをおこなうのではなく、真に必要な公務・公共サービスを拡充すべきです。
 今後の「総人件費改革」をはじめとした「構造改革」の方向が、国民生活に重大な影響を与える観点をふまえ、下記の点について要請いたします。

1、公務員の大幅な削減を企図する「総人件費改革基本指針」にもとづいた「実行計画」を策定しないこと。

2、「市場化テスト」導入、政策金融「改革」をはじめ、公務・公共業務の営利企業化・商品化をすすめ、国民・住民サービスの後退につながる施策をおこなわないこと。

3、特殊法人、独立行政法人、公益法人などが国民生活に果たす重要性を認識し、人件費削減や補助金・運営費交付金の抑制をおこなわないこと。

4、公務員の定員・給与にかかわる問題については、十分な交渉・協議など労働組合の意見反映をはかること。
以 上