No.544
2005年9月29日
総人件費削減の「基本指針」は策定するな
= 第1次中央行動と連動して経済財政諮問会議に要請行動=
 第1次中央行動がとりくまれた29日、公務労組連絡会は、経済財政諮問会議を訪問し、総人件費削減の「基本指針」などにかかわって要請しました。
 9月27日の経済財政諮問会議で、民間議員から「小さな政府」の実現にむけていっそうの人件費削減の意見が集中するもと、要請行動では、公務の公共性をふまえた検討を求め、「純減」や公務員給与の引き下げを内容とした「基本指針」の策定をおこなわないよう要請しました。

「公務員が少なく、小さな政府ほど良いのか」と問題提起

 要請行動には、公務労組連絡会からは、若井事務局長、黒田事務局次長、自治労連・篠原中執、全教・北村書記次長、国公労連・浅野中執、特殊法人労連・中野幹事が参加、経済財政諮問会議側は、内閣府の政策統括官(経済社会システム担当)付参事官付の広瀬参事官補佐が対応しました。
 はじめに、若井事務局長が、「要請書」(別掲)でかかげる4項目にわたる要請の趣旨について説明し、「市場化テストなど公務のアウトソーシングが活発に議論されているが、何でも民間にまかせればいいというものではない。『小さな政府』をめざしたアメリカでは、災害予算が削減されるもと、今度のハリケーン災害で逆に大きな負担が強いられている。公務員が少ないほど良い、小さな政府ほどいいという議論で良いのか。そのうえ、日本の公務員数は、世界的に見ても少ないのが事実だ」とのべました。
 また、財界出身の民間議員が議論を主導してきたことにも触れ、「経済財政諮問会議は首相の私的な諮問機関ではない。公的に選ばれてもいない人たちが、どのような基準で選ばれ、あるいは、どのような資格で意見をのべているのか。そのこと自体、ルール違反ではないか」と指摘したことに対して、広瀬参事官補佐は、「民間議員は、ブレインの立場でものを言っている。確かに選任の基準はなく、首相が直に選び出している」とし、首相のトップダウンですすめられていることを否定しませんでした。

労働組合の意見反映など議論を尽くすよう求める

 要請行動参加者からは、「大幅な定員削減がねらわれ、給与・定員両面からの削減に対して、公務の職場はどうなるのかと職員の不安がひろがっている。マスコミ報道では、何パーセント削減などと数字だけが強調されている。公務の職場はどうるべきなのかをしっかりと議論すべきだ」(浅野国公労連中執)、「アメリカの要請によって借金をつくった責任はだれにあるのか。少なくとも、第一線の公務員ではない。『骨太の方針』では、教育問題で『人間力』をあげているが、これを主張した民間議員は、教育水準の引き上げという文部科学省の主張を抑える役割を果たした。未来を託す子どもたちを、こうした議論の中に押し込めていいいのか」(北村全教書記次長)、「特殊法人は、独立行政法人に移行してきた。労働基本権はあるが、給与は国の予算にしばられ、事実上、政府が労使交渉に介入している。市場化テスト法案が予定されているが、なぜ公共サービスが必要なのかという観点から、個々の業務について議論を尽くすべきだ。公共サービスは、国民の命を守っている」(中野特殊法人労連幹事)、「公共業務の民営化は、国や自治体のあり方にかかわる問題であり、単純なものではない。地方自治体の定員や給与が減らされるなか、地域はすさまじい勢いで衰退している。地方自治体がその役割を担えないことは重大であり、地方切り捨てをすすめる『三位一体の改革』に反対する」(篠原自治労連中執)など、職場の実態もふまえて要請しました。
 広瀬参事官補佐は、「みなさんのご意見は確かにうけたまわった。それぞれの分野で担当者がいるので、かならず伝える」と答えました。
 最後に、若井事務局長は、「公務員を減らすというのなら、当事者である公務労働者の意見をまっ先に聞くべき。そのためにも、労働組合が意見反映できる場をつくるべきだ」と要望をのべ、要請行動を終えました。


【資料:要請書】

公務員総人件費削減にむけた「基本指針」にかかわる要請

 6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針2005)」では、「小さくて効率的な政府」をめざして、郵政民営化をはじめ、「三位一体の改革」による地方交付税削減など地方財政の見直し、さらに、「官業の民間開放」にむけた市場化テストの本格導入などがあげられました。
 これらとともに、「公務員の総人件費削減」を重要課題に位置付け、国・地方ともに「純減目標」を設定した定員削減の断行や、民間賃金をふまえた公務員給与体系の見直しをすすめるとしています。今後、経済財政諮問会議での「基本指針」の策定をうけ、来年度予算や地方財政計画に順次反映させるため検討作業がすすめられると承知しています。
 しかし、この間の経済財政諮問会議の経過を見ると、今年2月に「公務員の総人件費の削減に向けて」とする文書が民間議員4人から提出され、その後も、民間議員主導で公務員の定員削減や給与の見直しが議論され、いっそうの民間開放を求める財界の「圧力」も背景に、「官から民へ」とする「改革」が声高に主張されてきたことも事実です。
 こうしたもとで、本来、公務に求められる公共性や公務員の果たす役割、労働基本権制約のなかでの公務員労働者の労働条件決定のあり方などの議論が後景に追いやられ、労働組合の意見反映の場もなく、きわめて乱暴な議論がすすめられてきたことは否めません。
 公務労組連絡会は、「骨太の方針2005」の閣議決定を前にして、全労連とともに、貴職に対して、国民本位の改革を要請してきました。9月27日の経済財政諮問会議にも見られるように、過日の総選挙の結果をうけて、財界からは、「改革」のスピードアップを求める声も出ていますが、たとえば、郵政民営化は数々の問題点を持っており、決して全面的な国民の理解を得たわけではありません。ましてや、公務員総人件費削減など「構造改革」のすべてにわたって国民が白紙委任したわけでもないはずです。
 私たちは、国民サービスにも直結し、重大な影響を与える公務員総人件費削減への「基本指針」にかかわって、下記の点について要請いたします。

1、公務員の「純減」や公務員給与の見直しなどを内容とした「基本指針」の策定をおこなわないこと。
2、公務員労働者の労働基本権が制約されている現状をふまえ、一方的な労働条件改悪や賃金引き下げを断じておこなわないこと。
3、市場化テストの導入など公務・公共業務の営利化・商品化をすすめ、国民・住民サービスの後退につながる施策をおこなわないこと。
4、特殊法人、独立行政法人、公益法人などが国民生活に果たす重要性を認識し、人件費抑制や補助金・運営費交付金の見直しをおこなわないこと。
以 上