No.539
2005年8月17日
「給与構造見直し」を地方自治体に導入するな
= 地方公務員の賃金改善を求め全人連へ申し入れ =
 公務労組連絡会は16日、全教・自治労連とともに、05年の地方勧告にかかわって、都道府県・政令市などの人事委員会で構成する全国人事委員会連合会(全人連)に申し入れました。
 この申し入れは、15日の人事院の05勧告を受け、今年の地方での給与勧告にあたって、地方公務員の賃金改善にむけて要請を行ったものです。

「マイナス勧告」に追随せず地域の実情ふまえた対応求める

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、石元議長、若井事務局長、新堰・植西・柴田の各幹事、全教から日高教藤田執行委員、自治労連から川俣副委員長、池田執行委員が出席、全人連は、内田会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、泉川(北海道)大立目(宮城県)、大河原(群馬県)、井上(横浜市)、帯野(大阪府)、丸山(広島県)、平田(福岡県)の各人事委員会委員長、また、木村(愛媛県)、佐宗(愛知県)の各人事委員会委員ほかが出席しました。
 はじめに、石元議長より内田会長に要請書(別掲)を手交し、「4月に要請を行った際、給与・勤務条件の適正な確保は、人事委員会の使命との表明があった。昨日の勧告は、一時金は微増だが本俸マイナス・不利益遡及、給与構造の見直しが示された。その影響は甚大であり、地方勧告にあたって公務員はもとより、各地域の実情を踏まえた対処を求めたい」とのべました。
 若井事務局長が、「要請項目は7点あるが、その趣旨は、地方公務員の給与・勤務条件は、@公務関連労働者・民間労働者の給与水準、ひいては地域経済にも影響を与えるという単に職員の給与水準、制度に止まらない大きな影響力を持っている、Aさらに地方自治の有り様、行政や教育内容、人事管理等とも密接不可分に結びついており単に高い低いという問題ではない、B労働基本権剥奪のもとで給与・勤務条件をいかに確保するかが根本問題で、従って従来からの労使の約束、交渉の経緯等を十分に尊重する必要がある。全人連としての誠実な対応を要請したい」とのべました。

 これに対して、内田会長は、以下のように回答しました。
(全人連会長回答)
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
 さて、皆様既にご承知のとおり、昨日15日に本年の人事院勧告が行われました。景気は、引き続き緩やかな回復基調であったもの、短期的な業績の配分を一時金に反映させるなど民間企業の賃金体系の変化、地域別の経済状況の相違、国家公務員の平均年齢の上昇など、給与の実態の諸要素を反映し、官民較差は0.36%のマイナスとなり、俸給表及び配偶者にかかわる扶養手当の引き下げが勧告されました。
 一方、特別給については、民間の支給割合が公務の支給月数を上回り、0.05月分を引き上げることとしております。
 懸案となっております給与構造の基本的見直しについては、俸給水準の引き下げ、級構成、号俸構成の見直し、地域手当の新設など具体的な内容が提示されております。
 詳細につきましては、これから人事院の説明を受けるところですが、各地方自治体、とりわけ各人事委員会にとりまして、人事院の勧告は、必ずしも、直ちに、これに追随すべきものというものではありませんが、今後に影響を及ぼす重要な要素を含んでいるものと考えられます。
 また、先日8月11日に総務省の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」がこの問題について基本方向性を報告しておりますが、全人連といたしましても、これらを参考にしつつ、地方公務員の給与構造の見直しについて、鋭意取り組んでまいりたいと考えております。
 さらに教員給与につきましては、各自治体の主体的な取り組みを支援していくために、各自治体が参考とし得るような教育職給料表の作成を目指して、鋭意準備を進めてまいります。
 現在、各人事委員会では、秋の勧告に向けて、作業を進めているところであります。今後は、皆様からの要請の趣旨も十分考慮しながら、それぞれの人事委員会が、各自治体の実情を踏まえ、主体性を持って対処していくことになるものと考えております。
 以上でございます。

 この回答を受けて、最後に、石元議長は、「公務員給与にとって、厳しい環境にあるが人事委員会の役割発揮を求めたい」とかさねて要望をのべ、申し入れを終えました。

(資料)

2005年8月16日

全国人事委員会連合会
  会長  内田 公三 様
                      

公務労組連絡会議長  石元 巌
日本自治体労働組合 総 連 合       
中央執行委員長  駒場 忠親
全 日 本 教 職 員 組 合
中央執行委員長   石元 巌

地方人事委員会の勧告に関する要請書

貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善・向上に向けたご努力に敬意を表するものです。
今年の人事院勧告は、本俸のマイナス及び不利益の遡及、一時金の微増、「給与構造の基本的見直し」という構造そのものを見直す根本的な「改革」の内容となっています。
 ここ数年の間、地方財政危機を口実に人事委員会勧告に上乗せして独自カットを行う自治体が40%を超え、さらに地方議会が勧告や労使合意を無視して給与切り下げを提案するなど、給与切り下げの流れが強まり、地方公務員の生活水準は低下をしています。
 さらに、地方交付税等の大幅な削減、税財源の「三位一体の改革」等によって、民営化等による住民サービスの縮小・削減、人件費の削減など、地方における困難さが増大しています。
 さらに、政府の「骨太方針2005」では、地方行政の営利企業化、切り捨て・減量化、公務定数の削減などいっそう踏み込んでいます。地方自治体を営利企業的に運営することは、その役割と責務の放棄、地方自治の変質化を促し、それを支える地方公務員の適切な処遇等を一方的に否定するもので、認められるものではありません。
 また、今年の人事院勧告で、給与水準を4.8%も一方的引き下げる地域給与の見直し、俸給構造の見直しなどは、地方公務員にも重大な影響を及ぼすものです。
 私たちは、地方公務員の給与・勤務条件が地方自治の有り様とも不可分に結びついていること、さらに地域での給与水準において「標準性」を持っており、地方の公務・公共関連労働者の給与等の水準、年金・生活保護をはじめとした社会保障の給付水準、最低賃金など「ナショナルミニマム」のあり方、それらを通じて住民の暮らしに重大な影響を及ぼし、地域経済にも大きな影響を与えるものと考えます。
これから各地の人事委員会においても本年の勧告にむけた作業にとりかかられるものと考えますが、各地の人事委員会勧告にあたっては、こうした見地から下記事項を十分に尊重いただき、その実現に向けて努力いただくことを強く要請するものです。

1.地方公務員・関連労働者の暮らしを守り、「全体の奉仕者」として職務に専念できるよう各地の労働組合の要求に応え賃金・労働条件の改善・充実を図ること。
2.人事委員会の勧告と関わりなく行われている「賃金カット」などの労働条件の切り下げに対しては、毅然とした対応を行うこと。
3.独自に「賃金カット」を行っている自治体は、実態賃金との比較で公民較差に基づく賃金改善を行うこと。
4.地方公務員の給与水準問題について、「骨太方針2005」や05人事院勧告に追随せず、「同一労働・同一賃金」の立場に立ち、地方公務員給与の水準を守り、地域間格差拡大を行わないこと。
5.給料表については、職務による格差の拡大、中高年層の給与の抑制をやめ、生計費原則に立った構造とすること。査定昇給及び勤勉手当の格差拡大の導入は、人事評価制度の未確立の状況、当該労働組合との交渉経過等を尊重し、慎重に対処すること。
6.教員の給与勧告に当たっては、「同一労働・同一賃金」と教育条件のナショナルミニマム確保の立場に立ち、賃金・諸手当の改善を図り、少なくとも現行水準を維持すること。また、委託先である財団法人人事行政研究所が作成した給料表を参考にしつつも、水準の低下や地域間格差の拡大が生じないようにすること。
7.憲法とILO勧告に基づき公務員労働者の労働基本権を保障するなど民主的公務員制度確立にむけ積極的に政府に働きかけること。
以 上