No.530
2005年7月6日
「給与構造の見直し」反対の地域の声に応えよ
= 「夏季重点要求」の実現を求めて政府・人事院と交渉 =
 公務労組連絡会は6日、「夏季重点要求」にかかわって人事院・総務省と交渉しました。
 この日の交渉は、6月8日の要求書提出からはじめてとなるもので、8月初旬とされる人事院勧告にむけて、「給与構造の見直し」などの賃金課題とともに、超過勤務縮減など労働条件の改善を求めて追及しました。
 交渉には、公務労組連絡会からは、石元議長を先頭に、若井事務局長、北村・黒田の両事務局次長、柴田・山アの各幹事が出席しました。

「給与構造の見直し」は「措置案」に沿って作業すすめる(人事院)

 午前10時15分からの人事院との交渉では、人事院側は、給与局給与第一課の幸課長補佐、職員福祉局職員福祉課の植村課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長が、「『給与構造の見直し』に反対する地方の声は、1か月前の要求書提出の際にも紹介したが、その後も、各地で集会などがぞくぞくと開かれ、職場の怒りはさらに高まっている。とくに、集会には民間労組からも参加があることが特徴だ。公務・民間が一緒になって『賃下げの悪循環』をやめろという声があがっている。こうしたことを受けとめて、真摯な対応を求める」とのべ、検討状況をただしました。
 幸課長補佐は、「みなさんの要求は重く受けとめている。勧告にむけて検討をすすめている段階だが、現時点での見解を示したい」として、以下のように回答しました。
●(賃金について)民間の状況を見ると、景気は回復してきているものの、賃上げに結びついていない。春闘結果は、ベアなしで定昇維持となっている。人事院の民間賃金実態調査(民調)は、5月の連休明けから8千事業所を対象として調査が開始され、現在、データのチェックと整理をすすめている。各種調査を見ると、ほとんど昨年と同様の賃金水準となっているが、民調は4月時点の民間と公務員の給与水準をラスパイレス方式で比較するものであり、民間の賃金動向だけに左右されるものではない。
●(一時金について)民間大手は、昨年の冬と今年の夏のボーナスがともに好調だ。ただし、二極化の傾向が見られ、中小企業の実態は厳しく、大手だけでは判断しきれない。民間では7月に支給されるところもあり、引き続き、ギリギリまで民間実態の調査をすすめ、正確な把握に務めたい。
 給与・一時金ともに、例年同様に、正確な調査で官民比較をおこない、諸情勢をふまえつつ、職員団体との話し合いのうえで勧告を出すこととなる。
●(給与構造の見直し)5月18日の「措置案」で示したとおりだ。公務員給与は、民間に比べて高く、地場賃金を反映すべきとの意見があるもとで、地域給与の見直しを今年の勧告にむけてすすめている。また、昇給カーブの見直しにかかわって、中高年齢層の給与が民間を相当程度上回っており、是正が必要だ。
 勤務実績の給与への反映については、公務能率の向上と公務員に対する信頼確保の面から先送りするわけにはいかない喫緊の課題だ。評価システムが整備されていないなかでも、従来の方法をベースにしていく。
 その他、本府省手当は、本省の人員確保が困難だとの声が各省から寄せられており、こうした状況に対応する手当として新設を検討している。
●(超過勤務規制)昨年7月に「多様な勤務形態に関する研究会」の「中間取りまとめ」が出されており、これをふまえ、今年2月には、「育児を行う職員の仕事と育児の両立支援制度の活用に関する指針」を出し、その中で超勤縮減に言及してきた。近日中に、研究会の最終報告が出される見通しにあり、その内容をふまえて、総務省をはじめ関係各省と連携して取り組みをすすめる。
●(育児休業・介護休暇制度の改善)昨年の勧告の報告では、研究会の中間取りまとめをうけて、子の年齢延長などを示した。最終報告をふまえて、今年の勧告の際に改善の方向を示したい。また、非常勤職員の休暇制度については、従来から民間動向をふまえ対処してきたところだ。今年4月からは、子の看護休暇が導入されており、引き続き、適切に対処したい。

長期病休が増加している職場の現状を認識せよ

 これらの回答をうけて、若井事務局長は、「労働基本権制約の『代償措置』としての人事院の存立の基盤は、職員が安心して仕事ができる環境をつくり出すことにある。圧倒的多数の職員が反対している『給与構造の見直し』は、やめるべきだ。また、民間賃金にあわすというが、民間賃金は、正当なルールに沿って決まったものなのか。検証が必要だ。査定昇給も、恣意的な判断がかならず入る。きちんとした評価システムが確立しないままに具体化することには大きな問題がある」と追及しました。
 柴田幹事は、「人事院の措置案では、試算すると、生涯賃金で1千万円をこえる削減となる。この見直しが、労働者全体の賃下げを促進するのではないかという危機感が民間からも共通して出されている。その点で、日本の労働者の賃金の有り様におよぶ問題だ」と指摘しました。
 また、北村事務局次長は、「『給与構造の見直し』では、全教として9万を超える署名が集まっている。かつてない状況であり、それだけ反対の声が強いことを証明している。教育の職場では、成績主義の強まりのなかで、長期の病気休暇が増えており、その半分はメンタルヘルスだ。そうした状況を人事院は認識しているのか」と人事院の姿勢をただしました。
 最後に、石元議長は、「『骨太の方針』では、公務員総人件費削減が示されたが、こうした小泉内閣の『構造改革』の方針と一体となって勧告を出すことは、国民的にも重大だ。その点を十分に考えて勧告作業にあたっていただきたい」と求めて、人事院との交渉を閉じました。

「勧告制度の尊重」を繰り返す政府の姿勢を追及(総務省)

 11時10分からの総務省との交渉は、人事・恩給局総務課の笹森課長補佐ほかが対応しました。
 石元議長は、「要求書の提出の際にも、使用者としての政府の誠意ある対応を求めてきた。本日は、中間的な交渉となるが、要求書にかかわる現時点での検討状況を示していただきたい」と回答を求めました。
 笹森課長補佐は、「6月8日にも話をうかがってきたが、いただいた要求書は、みなさんの切実な要求として受けとめている。人事院の勧告作業がこれからであり、あくまで中間的なものとして考え方を示したい」とし、以下のように回答しました。
●(給与について)総務省として、職員が安んじて職務に精励できるための環境整備に努めたい。ただし、公務員の給与水準は、国民に理解される内容であるべきだ。本俸・一時金などは人事院が勧告にむけて作業中であり、総務省としての見解表明は差し控えるが、勧告が出れば、政府として、勧告尊重を基本姿勢にして、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。また、人事院で「給与構造の見直し」の検討がすすめられているが、これらについても、勧告が出れば、適切に対処したい。
●(退職手当)国家公務員制度改革における指摘や給与構造の基本的見直しの状況などをふまえ、貢献度をより的確に反映し、人材流動化や在職期間長期化にも対応できる制度となるよう見直しをすすめている。みなさんの要求については、その見直し作業のなかで検討をすすめたい。
●(労働時間短縮)国家公務員の勤務時間短縮については、総務省として、超過勤務縮減や年休取得促進などにつとめてきた。2003年に改正された「国家公務員の労働時間短縮対策について」の見直し内容にも沿って、職業生活と家庭生活の両立にむけて、さらなる労働時間の短縮に取り組む。
●(非常勤職員の労働条件改善)非常勤職員の育児・介護休暇については、民間での動向をふまえて人事院で検討されている。総務省としても、その動向を見守っていきたい。
●その他の要求にかかわっても、現在、人事院で勧告作業がすすめられており、十分に見えないものもあり、今後、あらためて回答を示したい。
 回答を受けて若井事務局長は、「人事院の『給与構造の見直し』には、30万を超える署名が集まっており、圧倒的な反対の声がある。そのような勧告を尊重するなどとして、どうして、職務に精励できる環境をつくることができるのか。矛盾した回答であり、納得できない。総務省は、使用者として、本当に職員の生活を考えているのか。『勧告尊重』ではなく、総務省としての考えを示すべきだ」と厳しく追及しました。
 柴田幹事も、「『給与構造の見直し』は、民間労働者からも驚きと怒りの声があがっており、大変重大な内容だ。総人件費削減が政治の立場から叫ばれているが、職員の賃金・労働条件の改善にむけて検討するのが、使用者である総務省の役割だ。『勧告尊重』ではすまされない」と迫りました。
 これに対して、笹森課長補佐は、「現時点では、人事院勧告が出ていない段階であり、総務省としての見解は差し控えさせてほしい」との対応に終始しました。
 また、北村事務局次長は、「『骨太の方針』で示されるように、公務員賃金が政治の道具にされるのは認めがたい。職場で一生懸命に働いている職員の労苦に応えて、賃金を改善するのが使用者としての役割だ。公務員の労働基本権が制約されているなかで、職員への責任を果たすために総務省がふんばるべきときだ」とのべました。
 最後に、石元議長は、「今日もたびたびのべられたように、『人勧が出れば』との見解にとどまらず、次回は真摯な回答を求める」とのべて交渉を終えました。
以 上