給与・労働条件の改善を全人連に申し入れ |
=「給与構造見直し」などによる地方への影響の大きさを強調= |
公務労組連絡会は11日、全教・自治労連とともに、地方公務員の給与勧告にかかわって、都道府県・政令市などの人事委員会で構成する全国人事委員会連合会(全人連)に申し入れました。
申し入れでは、人事院が俸給水準の5%程度引き下げ、査定昇給など「給与構造の見直し」をねらい、総務省が研究会で地方公務員給与のあり方の検討をすすめるもと、地域での影響の大きさをふまえて、こうした「見直し」をしないよう求めました。 |
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現状をふまえて従来の延長線にとどまらない対応を求める
全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、新堰・篠原(勇)の各幹事、自治労連から川俣副委員長、東京自治労連の野村書記長、水村執行委員、全教から植西執行委員がが出席、全人連は、内田会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、泉川(北海道)、大立目(宮城県)、堀内(山梨県)、井上(横浜市)、那須(愛知県)、帯野(大阪府)、丸山(広島県)、川田(徳島県)、平田(福岡県)の各人事委員会委員長ほかが出席しました。
はじめに、石元議長が、「毎年、この時期に要請をおこなっており、今年も12項目にわたる要請(別添資料参照)を提出する。今年は、人事院が「給与構造の見直し」を検討しているが、もしこれが勧告されれば地方への影響は大きい。さらに、総務省でも地方公務員給与のあり方を研究しており、従来の延長線上ではすまない環境にある。こうした状況をふまえた対応を要請する」と求めました。
つづいて、若井事務局長が、以下のように要請の趣旨をのべました。
○今年の地方公務員給与をめぐる状況は、昨年までとは大幅に異なっている。とりわけ、人事院の「給与構造の見直し」と総務省の「地方公務員給与のあり方研究」の影響は大きい。人事院は、俸給水準を約5%引き下げ、官民比較で上回っているところには地域手当を支給し、市町村単位で給与水準の指数を公表するとしている。賃金センサスによれば、賃金格差は、都道府県の間でも40%あり、市町村ではさらに大きいと推測される。したがって、人事院の「給与構造の見直し」は自治体に導入しないよう求める。
○同時に、総務省研究会の「中間報告」でものべられているように、地方公務員の給与は、「行政の有り様」と密接不可分に結びついているので、単純に官民比較だけで勧告しないよう求める。
○地方では、「三位一体の改革」と地方財政危機とがあいまって、勧告を無視した切り下げなどが散見されるが、労働基本権制約のもとで許されることではない。人事委員会の存立ともかかわって、使用者に対して毅然とした対応を要請する。また、「成果・業績主義」「競争原理」の導入の動きがあるが、公正であるべき行政をゆがめるおそれが多々あるので、こうした導入をおこなわないよう求める。
○その他、健康で働き続けられる労働環境の整備について要請しているで、これらをふまえて地方で具体化されるよう要請する。
「公務員の給与・勤務条件の適正な確保は人事委員会の使命」と回答
これに対して、内田会長は、以下のように回答しました。
(全人連会長回答)
ただいまのみなさんからの要請の趣旨については、確かにうけたまわった。さっそく、全国の人事委員会に伝える。
回答としては以上だが、せっかくの機会であり、本年の民間給与調査をむかえる状況認識等を話したい。
まず、最近の経済情勢を見ると、3月16日の月例経済報告では、「景気は、一部に弱い動きが続いており、回復が緩やかになっている」とし、先行きについては「企業部門の好調さが持続しており、世界経済の着実な回復にともなって、景気回復は底堅く推移すると見込まれる」としつつも、「情報関連分野で見られる在庫調整の動きや原油価格の動向には留意する必要がある」としており、警戒感も示している。
一方、雇用情勢は、「完全失業率が高水準ながらも、低下傾向で推移するなど、雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善している」としている。
このような状況のなか、民間における賃上げ交渉は、企業業績を特別給に反映させる動きがいっそう明確になるなど、統一ベア交渉が中心であった従来の春闘とは様相が大きく異なっている。
定期昇給の見直しと成果重視型の人事制度への移行が並行する形ですすむなど、現下の情勢からは、例月給をとりまく状況は今年も厳しいものと考えざるを得ない。
特別給についても、本年夏分は、自動車・電機など大手企業の多くで増加するものと見られるが、全体的な支給水準の回復には、なお時間がかかるものと考えられ、景気回復のすそ野の広がり具合等を注視していく必要がある。
一方、地方公務員給与を取りまく状況は、ほかの要因もあって、かつてないほど厳しいものがあり、多くの国民が地方公務員給与のあり方に厳しい目を向けていることはご承知のとおりだ。このような状況のもとでは、よりいっそう職員と住民の双方の理解を得ていくことが必要であり、民間給与とのいっそう的確な比較や給与制度の見直しもますます重要なものとなっている。
また、教員給与については、昨年の国立大学法人化により、各自治体が教員給与を自主的に決定することとなった。したがって、教育職員の給料表も、最終的には各自治体がその実情に応じて決定するものとなったところだ。
全人連としては、各自治体の実情をふまえ、17年の給与勧告にむけた各自治体の主体的なとりくみを支援し、各自治体の参考となるように、教職員の給料表作成の問題もふくめて調査研究をすすめていきたいと考えている。
以上、基本的事項についての状況認識等を話した。言うまでもなく、公共のため職務に尽力している公務員について給与等の勤務条件を適正に確保することは、人事委員会の重要な使命であると十分に認識している。
本年も、各人事委員会において、5月初旬から民間給与実態調査を予定している。みなさんの要請の内容については、その調査結果等もふまえて、具体的に検討していくことになる。
この回答をうけて、最後に、石元議長は、「地方公務員の給与をめぐる環境を見たとき、従来の延長線ではすまないと考える。地方人事委員会のみなさんのいっそうの役割発揮、奮闘を期待したい」とのべ、要請に対する努力を求めて申し入れを終えました。
以 上
(資料:全人連への要請書)
地方公務員の「給与勧告」についての要請書
日ごろより地方公務員の勤務条件の向上にご努力頂いていることに敬意を表します。
人事院は、今年の勧告をめざして、給与水準を引き下げ、地域間格差を導入することや中高年層の給与水準を引き下げる給料表の改訂、さらに査定給の導入などを柱とする「給与構造の見直し」を検討しています。
また、総務省は昨年、「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」を立ち上げ、3月30日に「中間整理」を発表致しました。
一方で、「税財政の三位一体の改革」や地方財政危機を口実に勧告を超えて独自に賃金削減を行っている自治体が40%にも達しています。
さらに一部自治体による不適正な給与制度の運用を口実にマスコミ等による自治体、地方公務員に対するいわれなきバッシングも激しいものがあります。
地方公務員賃金は、「中間整理」で「それぞれの地方公共団体における人事行政運営に直接関わり、また財政運営とも密接な関連を有している。さらに当該地域における地方公務員の人材確保にも大きな影響を与えるとともに、地方公務員によって行われる公務サービスの質にも深く関わっていくものである」と述べているように、単に民間準拠のみで決定できない性格を持っています。
さらに、賃金の独自削減は、地方公務員の生活を直撃しているだけでなく、地域の消費を冷え込ませ、地域経済にも大きな否定的影響を及ぼしています。
地方公務員の労働条件に関わる重要な役割を担われている貴職がこうした認識にたって、厳しい経済情勢の中で住民福祉の充実に日々努力している自治体・自治体関連職場で働く労働者の暮らしを改善するために、下記の要求事項を尊重し、人事委員会勧告にむけた作業にあたられることを要請するものです。
記
1.近年、各人事委員会の調査対象企業が、労使交渉で賃金・労働条件を決定している一定の規模をもつ企業が対象から大幅に削減される一方、労働組合の組織率が相対的に低い小規模企業の割合が拡大されています。これは、労働基本権の「代償機関」とされる人事委員会の機能からすれば、その「代償性」を低下させるものと考えます。
調査対象事業所は、労使交渉によって賃金等の労働条件を決定している企業を基本とし、公務労働者の生活実態や関係労働組合の要求を踏まえた調査を行うこと。
2.本年度の勧告にあたっては、地方公務員の生活改善につながる賃金水準を確保できるものとすること。また、政府・総務省の不当な干渉を排除し、地方自治を守り、中立機関としての独立性を堅持すること。
3.人事院の検討している「給与構造の見直し」を一方的に地方自治体に導入しないこと。 人事院の「地域給」の導入は、地方公務員給与の水準を下げ、「同一労働同一賃金」の原則を崩し、給与の地域間格差をいっそう拡大させるとともに、地域経済を疲弊させ、均等な日本経済の発展を阻害するものであり、見直し改悪は行わないこと。
4.公立学校教職員の給与について、公教育の果たすべき役割を踏まえ「同一労働・同一賃金」の原則を堅持し、人事院と必要な連携を図り、適正な給与水準を確保すること。
5.人事委員会勧告事項にない、財政危機などを口実にした自治体独自の賃金引下げや、勧告を無視した給与制度の改悪などについては、公平・中立の第三者機関として、使用者に毅然とした対応を行うこと。
6.国民に信頼される中立・公正な行政を確保する観点から、競争原理、「成果・業績」にもとづく給与・人事管理制度実施などの勧告をおこなわないこと。
7.臨時・非常勤(教)職員の賃金を抜本的に改めること。当面、常勤職員との均等を図ること。
8.すべての公務職場における年間総実労働1,800時間を達成するための必要な措置をとるよう勧告すること。同時に、違法なサービス残業を根絶する抜本的改善を勧告するとともに、公務員労働者の生活・労働実態を無視した勤務時間割り振り、裁量労働制の導入などの制度改悪を行わないこと。
9.介護休暇制度について、日数の増加や対象者の拡大、休業手当金の上限規制の撤廃、十分な所得保障など、改善を行うこと。子どもの看護休暇制度の拡充、家族看護休暇制度、子どもの幼稚園・保育園、学校の行事等への参加のための休暇制度を新設し、仕事と家庭の両立支援に有効な制度を確立すること。また、関連労働者にも同様な制度を確立すること。特に「非常勤(教)職員の子どもの看護休暇」を有休とするよう措置すること。
10.育児休業制度の無給規定を撤廃し、十分な所得補償を行うこと。当面、取得者全員に1歳6か月までの休業手当金を支給すること。代替要員の確保や部分休業も含めた男性の取得促進など、男女とも取得しやすい制度に改善すること。また、臨時・非常勤(教)職員の休暇等について、常勤職員に準じた制度とすること。
11.公務における真の男女平等をはかるため、募集・採用・任用・昇格をはじめ雇用の全ステージにおける直接・間接の男女差別を禁止し、その実行を図るための必要な整備を行うこと。
12.職員の健康・安全を確保するため、長時間・過密労働をなくし、過労死・自殺、疾病、労働災害の予防など福利厚生施策を含めて万全の措置を講じること。あわせて、労働安全衛生法を厳格に遵守するよう強く指導すること。 |
以 上 |