切実な要求に応えず、きわめて不満な回答 |
= 2005年春闘要求で政府・人事院と最終交渉 = |
公務労組連絡会は22日、「12,000円以上、誰でも1万円以上」の賃上げ要求などを柱とする「05年春闘要求」に対する、政府(総務省)・人事院との最終交渉をおこないました。
示された最終回答は、「勧告制度の維持尊重」(総務省)、「官民較差にもとづく適正な公務員給与の水準確保」(人事院)とし、要求に何ら応えない従来どおりの内容にとどまりました。
とくに、人事院との交渉では、「給与構造・地域給与の見直し」の検討をすすめることがあらためて表明されるもと、今年の給与勧告にむけて、署名運動をはじめ、職場・地域からのたたかいが引き続き重要となっています。 |
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総務省・新たな人事評価システムづくりへ「評価の試行」を検討
政府・人事院との交渉には、石元議長を先頭にして、若井事務局長、黒田事務局次長、篠原幹事(自治労連)、山ア幹事(国公労連)が出席しました。
総務省との交渉では、人事・恩給局総務課の酒田総括課長補佐、笹森課長補佐ほかが対応、はじめに春闘要求に対する回答を求めました。
酒田総括課長補佐は、「2月8日に提出のあった要求書については、公務員の給与等を取りまく厳しい状況をもふまえ、種々検討をおこなってきた。本日、それらの要求について回答する。なお、使用者として、職員が安んじて職務に専念できるよう、適切な給与水準の設定に努めたいという気持ちには変わりがないことを、あらためて申し上げる」とのべ、以下のとおり回答しました。
【総務省最終回答】
1、(給与改定について)人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
平成17年度の給与改定については、この基本姿勢のもと、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
なお、平成14年11月の衆参両院総務委員会付帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分に話し合い、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
国家公務員の給与水準については、人事院勧告制度尊重の基本姿勢のもと、これまで同様に適切な給与水準が確保できるよう努力していく。
また、国家公務員の給与については、誤解にもとづく議論等に対して毅然として対応し、正確な情報提供に努める等により、国民の理解が正しく得られるよう一層努力する。
2、(「評価の試行」について)新たな人事評価システムの構築にむけた「評価の試行」の検討にあたっては、職員団体とも十分意見交換し、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
3、(ILO条約について)政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について、職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
なお、ILO結社の自由委員会第329、331次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
4、(労働時間の短縮について)労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」にもとづき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用に促進に努める。
5、(男女共同参画社会の実現について)男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画」(平成12年12月閣議決定)にもとづき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。
次世代育成支援対策推進法にもとづく行動計画の円滑な実施がはかられるよう、関係機関と協力しつつ、適切に対応する。
6、(公務の高齢対策の推進について)公務員の高齢者雇用については、再任用に関する実施状況を把握しつつ、その円滑な運用と定着に向けて、政府全体として必要な対策をすすめる。
今後とも、雇用と年金の連携に留意しつつ、公務員の高齢者雇用の推進については、民間の動向の把握をはかるとともに、職員団体の意見を聞きつつとりくんでまいりたい。
以上が回答であるが、いずれにしても、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話し合いによる一層の意思疎通に努めたいので、引き続きよろしくお願いしたい。
勧告制度が形骸化されるなか「人勧尊重」だけでいいのか
この回答に対して、若井事務局長は、「要求アンケートの結果からすれば、『12,000円以上』の賃上げは最低ぎりぎりの要求だ。また、『誰でも1万円以上』の要求も、常勤・非常勤など格差の拡大を埋めるなど、安定した社会を求める立場からのものだが、回答は、これらの切実な要求に何ら応えていない。安んじて職務に精励できるよう努めるとした熱意が感じられないものだ」とのべ、また、人事院の「給与構造の見直し」とも関連する評価制度について、「地方公務員や教員にも影響する問題であり、回答でものべられているように公務労組連絡会との意思疎通こそ必要だ。とりわけ、担当部局との十分な話し合いを求めたい」と強調しました。
また、交渉参加者からは、「地方公務員は、自治体の財政難を口実とした一方的な賃金カットが横行している。交渉もなしに給与条例が議会に提案されるようなルール違反がまかり通っている。労働基本権制約の代償措置として尊重するというが、その勧告制度自体が形骸化されつつある」と指摘し、単なる「人勧尊重」ではない使用者としての役割発揮とともに、労働基本権回復など公務員の権利拡充を求めました。
酒田総括課長補佐は、「財政事情などから地方公務員の給与が削減されているのは承知している。その場合でも、制度を無視して一方的にすすめるのではなく、制度に則ってやることが必要だと考える」とのべるにとどまりました。
最後に、若井事務局長が、「不満な最終回答だ。厳しい情勢は理解できるが、厳しいときこそ労使の信頼関係が必要だ。その点で、これからも引き続き交渉をすすめていく必要がある。情勢の変化もふまえた使用者としての検討を求めたい」とのべ、交渉を閉じました。
人事院・「給与構造の見直し」をあらためて表明
人事院との交渉は、人事院側は、給与局給与第一課の幸課長補佐、職員福祉局職員福祉課の植村課長補佐ほかが対応しました。
石元議長が最終回答を求めると、幸課長補佐は、以下の通り回答しました。
【人事院最終回答】
1、官民較差にもとづき、適正な公務員給与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
2、公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で適切に対処する。
3、給与勧告作業に当たっては、較差の配分、手当のあり方などについて職員団体のみなさんと十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
公務員の給与構造・地域給与の見直しについては、職員団体のみなさんの意見を十分聞きつつ、検討をすすめ、その納得を得るよう努める。なお、新たな人事評価システムの確立に向けて、関係者とも連携し、とりくみをすすめる。
4、一時金については、民間の支給水準等の正確な把握をおこない、適正に対処する。
5、公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者の意見を聞きながら引き続き検討をすすめる。
超過勤務の縮減については、育児・介護をおこなう職員の上限規制、目安時間を中心とする指針などの実施状況をふまえつつ、一層の縮減に向けて努力する。
育児・介護をおこなう職員の短時間勤務制の導入等については、関係機関との調整をはかりながら、できるだけ早期に実現できるよう検討をすすめる。
6、多様な勤務形態の検討に当たっては、研究会の検討状況をふまえ、関係機関との連携を取りつつ、みなさんの意見を十分聞き具体的な検討をすすめる。
7、「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」にもとづく施策が着実に実行されるよう努める。
また、これまでの交渉における公務労組連絡会の追及点にかかわって、幸課長補佐は、「民間大手ではベアゼロ回答となり、一方で、一時金は昨年を上回っている。こうした民間の支給状況に注視したい。勧告にむけては、人事院としては、民間給与の支給実額をラスパイレス方式で精密に比較し、官民の較差を解消するため水準を決定する。配分や手当については、職員団体のみなさんとも十分に意見交換していきたい。『給与構造・地域給与の見直し』では、これまでも意見をいただいてきたところだが、検討課題は幅広く、今後ともみなさんの意見を聞き、納得が得られるよう努力したい」とのべました。
また、植村課長補佐は、「超過勤務の縮減は、総労働時間短縮の柱であり、人事院として各省の協力を求めてきた。また、『多様な勤務形態に関する研究会』の中間取りまとめでも指摘されたところだ。勤務時間の管理が重要であり、研究会の今後の議論の推移を見ながら、適正な勤務時間管理をすすめたい。メンタルヘルス対策については、昨年3月に指針を出し、4つの専門家会議で検討するなど、各省の対策に役立てられるよう、人事院としてもとりくんでいる。職業生活と家庭生活の両立支援については、2月に指針を出し、また、パンフレットも作成した。研究会の議論を受けて、残された課題について検討をすすめているところだ」と回答を補足しました。
格差拡大の「給与構造・地域給与の見直し」に反対する
これに対して、若井事務局長は、「回答は、公務労組連絡会の賃上げ要求に誠意をもって応えた内容ではない。民間動向に注視すると言うが、それならば、ベアゼロにしかならない。また、民間では成果主義賃金や年俸制が導入され、雇用形態や賃金の二極化がすすんでいる。格差拡大がいっそうすすむもとで、安定した社会をつくるうえで、『民間準拠』ではなく、労働基本権制約の『代償機関』としての人事院の役割発揮が必要だ」と指摘し、また、交渉の焦点となってきた「給与構造の見直し」については、「交渉でも数々の問題点が出てきている。本当に人事院が納得を得るように努力しているのか見えてこない。また、新たな人事評価システムも確立されないもとで、今年の勧告でやるというのはあまりにも性急だ」として、賃下げや格差拡大につながる「給与構造の見直し」に反対であることをあらためて強調しました。
幸課長補佐は、「『12,000円以上』の賃上げなどみなさんの要求の切実さについては、十分に認識している。民間の実態についても認識しているが、一方で、公務員に対する批判も強まっている。そのなかで、民間準拠がもっとも納得が得られる方法であると考えている。給与構造の見直しは、まだスタートラインに立ったばかりであり、今後とも十分な議論をしていきたい。評価システムの確立は、まだしばらく時間がかかる。現行の仕組みのなかでできる範囲ですすめたい」と回答しました。
最後に石元議長は、「これが春闘期での最終回答となるが、とうてい納得できる回答ではない。その点からも、今日の交渉は、『給与構造・地域給与の見直し』も重点にした勧告期にむけた交渉への出発点と言える。人事院に対しては、労働基本権制約の『代償機関』として、今後とも誠意ある対応を求めたい」とのべ、春闘期の最終交渉を締めくくりました。 |
以 上 |