No.517
2005年3月3日
「給与構造の見直し」など春闘要求で追及
= 第1次中央行動の前日に総務省・人事院と交渉 =
 05春闘の第1次中央行動を翌日にひかえた3日、公務労組連絡会は、総務省・人事院と交渉し、2月8日に提出した「05年春闘要求書」にもとづいて、賃金・労働条件の改善など公務労働者の切実な要求の実現を求めました。
 交渉では、とりわけ、人事院が「給与構造の見直し」をねらっているもとで、「平均12,000円以上、誰でも1万円以上」の水準引き下げ要求とあわせて、地域間の格差拡大、賃下げとなる「構造見直し」反対をあらためて強調しました。


総務省交渉−細田官房長官「給与引き下げ」発言を追及

 午前10時からの総務省との交渉には、公務労組連絡会は、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、新堰(全教)・篠原(自治労連)・山ア(国公労連)の各幹事が出席、総務省は人事・恩給局総務課の酒田総括課長補佐、笹森課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長は、「先月8日に春闘要求書を提出したが、その後、職場や地域では、要求実現をめざすとりくみがすすんでいる。とくに、『給与構造の見直し』では、先日も仙台で1,000名が集まる大集会が開かれるなど、地域から運動が大きく盛り上がっている。そうしたこともふまえて、要求に対する政府としての現時点での考え方を示していただきたい」として、回答を求めました。
 酒田総括補佐は、要旨、以下のように回答しました。
●「給与構造の見直し」は、現在、人事院で検討がすすんでいる。総務省としては、人事院から勧告が出されれば、その取り扱いについて検討する。その際、労働組合とも十分な話し合いをおこない、適切な対処をはかりたい。
●退職手当の改善については、本俸が算定のベースとなっており、人事院の見直しの結果が左右することとなる。その際、制度の見直しを検討する必要も出てくると考えるが、その際には、労働組合のみなさんと十分な話し合いをおこないたい。
●超過勤務の縮減については、政府としても重要事項として対策をおこなってきたが、今後とも積極的な対応をすすめたい。とくに、職業生活と家庭生活の両立のためにも、政府として、超過勤務の短縮策が求められており、各府省と連携して、地道な努力を重ねたい。
●メンタルヘルス対策については、現職の自殺が増えており、重要さは理解している。昨年はカウンセラーの講習会を16か所で開催した。また、早期発見にむけて、チェックシートの作成・普及などにつとめたい。
 これらの回答をふまえて、若井事務局長は、「『給与構造の見直し』問題では、細田官房長官が先月23日の記者会見で、国家公務員の給与を全国一律で引き下げることを検討することを発言したとされている。労働条件にかかわることを労働組合に提案することなく、あたかも既定事実かのように記者発表したことは不当だ」とのべ、見解を求めました。
 酒田総括補佐は、「そうした報道はあったが、その会見で、官房長官は、政府としてそのような方針を決めたという事実はないとのべている」と否定しました。
 若井事務局長は、「否定しても、テレビで報道されている以上、その報道が消えるわけではない。また、仮に政府のフライングだとしても、労働条件にかかわることを、使用者である政府が一方的に発言すること自体不当だ」として、重ねて抗議しました。
 また、若井事務局長は、「先日、各労働組合に示された評価制度の試行にかかわって、公務労組連絡会には、現時点でも何らの提示もされてない。差別的な取り扱いは不当だ」と指摘したことに対して、酒井総括補佐は、「連絡が遅れたのはこちらの不手際だった。公務労組連絡会とは、節々の交渉などを通して、内容を説明しつつ、話し合いをすすめたいと考えている」とのべました。

「人事院勧告待ち」の姿勢をきびしく批判

 「給与構造の見直し」にかかわっては、篠原幹事は「市町村合併など地域の切り捨てがすすみ、経済も疲弊している。この上、地域の公務員賃金が下げられたら、経済は衰退する。国家公務員が5%下がれば、地方公務員はさらに引き下げとなる。評価制度も、人間関係によって評価が決まるようになれば、公務の公正さが損なわれる」とのべ、また、新堰幹事は、「月40時間以上の超過勤務をしている教員が25%にもなる。賃金も要求額こそ下がったが、逆に切実さが増している。教員給与の国準拠制が廃止された後も、適正な賃金水準の維持とあわせ、義務教育費国庫負担制度の堅持を求める」とのべました。
 若井事務局長は、「安んじて職務に精励できるようにするのが使用者・政府の役割だ。給与が下がれば、職員はどんな思いで働くか考えるべきだ。昇給カーブのフラット化がすすめば、退職手当のダウンと合わせて中高年は大打撃だ。そうした見直しが検討されているとき、『勧告待ち』になるのではなく、使用者としてどのようにすべきなのかを考えるべきだ」として、「人勧が出れば検討」とする政府の姿勢をきびしく批判しました。
 最後に、石元議長が、「提出した要求は、みずからの要求であるとともに、地域の要求でもある。政府が、しっかりとした見通しを持って、給与制度などの検討をおこなってもらいたい。そのえで、後日、あらためて回答を求めたい」とのべて、交渉を閉じました。

  人事院交渉−「給与構造の見直し」は仕事への意欲なくす

 午前11時からの人事院との交渉は、人事院側は、給与局給与第1課の幸課長補佐、職員福祉局職員福祉課の植村課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、過日提出した要求書に対する現時点での見解を石元議長が求めました。
 幸課長補佐は、賃金問題にかかわって、以下のように回答しました。
●民間労組は、大企業を中心に一部を除いてベア要求を見送っている。企業の業績は、トヨタをはじめボーナスに反映させる方式が定着しており、今後も、これがすすむのではないか。妥結状況に注目しているところだ。ただし、人事院としては、官民給与の較差を見ており、妥結額だけでは判断できない。官民の給与較差解消、社会・経済の情勢、職員団体との話し合い、各方面の意見をふまえて、公務員給与の適切な決定をはかる。
●「給与構造の見直し」については、11月に「素案」を提示し、労働組合、各府省と意見交換をすすめている。労働組合の理解と納得が重要であり、引き続き意見交換をすすめる。
●非常勤職員の賃金改善要求については、職務内容がさまざまであり、常勤職員との均衡を考慮して適切な対処が必要と考える。
●教員給与に関する要求については、現時点では対応が決まっていない。人事院としても、みなさんの要望もふまえつつ、何ができるのか判断していきたい。
 また、勤務時間関係などで、植村課長補佐が以下のように回答しました。
●長時間勤務の解消は、重要な課題であり、超過勤務の縮減へ政府全体でとりくむよう、人事院として要請してきた。そのなかで、「国家公務員の労働時間短縮対策」が改正され、また、昨年7月には、「多様な勤務形態に関する研究会」の中間取りまとめが示された。引き続き、総務省はじめ関係各省と協議し、いっそうの超過勤務縮減をはかるよう適切な措置を講じたい。
●メンタルヘルスは、昨年3月に人事院として指針を出したところであり、各省庁と連携して、施策を推進するため、専門家などの協力もえながら、具体的に作業をすすめている。
●男女平等・母性保護の要求については、昨年末、育児休業制度を改善し、男性の育児参加、休業取得の促進を期待している。
 若井事務局長は、「『給与構造の見直し』に対しては、職場からの反発は大きい。地域にいけば、5%の格差にとどまらない。影響力の大きな問題を短期間で強行すれば、労働基本権剥奪の代償措置としての人事院の役割からも問題だ」と指摘したうえで、「すでに先週の新聞で、5%の給与引き下げが取り上げられ、既定事実のように報道されたことは認められない」とのべ、人事院としての見解をただしました。
 幸課長補佐は、「新聞記事は、あくまでもマスコミの報道であり、勝手なことを書いている部分もある。人事院としては、現在、労働組合との話し合いの段階で、そのなかでの内容を制度検討にいかしていきたい」と回答しました。
 新堰幹事は、教員給与にかかわって、「教員給与の国準拠制が廃止され、各都道府県の条例で手当が下がるなど、懸念されたことがすでに起きている。あらためて、全国一律の適正な給与水準の確保にむけて、人事院としての努力を求めたい」とのべました。
 若井事務局長は、「『給与構造の見直し』では、明らかに個々の賃金が下がる。そのことが、職員の仕事に対する意欲の低下にもつながる。仕事への誇りを土足で踏みにじるようなものであり、決して賃金だけの話ではない。何パーセントなどという数字だけではなく、職員の気持ちを人事院は考えるべきだ。評価制度も、かつての勤評闘争のように、不信感だけが残ればプラスにはならない。そうした点からも、労使合意、納得性を大切にしてすすめるべきで、拙速に今年の勧告でおこなうべきではない」と求めました。
 最後に、石元議長は、「人事院は、地方の生の声をできるだけ聞く機会を持つべきだ。そうした努力がなければ、人事院としての存在意義が問われることとなる。要求に耳を傾け、そのうえで、さらに検討をすすめ、誠意ある回答を求めたい」とのべ、交渉を終えました。
以 上