No.501
2004年10月26日
寒冷地手当改悪法案が参議院総務委員会で可決
= 生活の困難さに目をむけず「民間準拠」を繰り返す政府・人事院 =
 22日に衆議院を通過した国家公務員一般職の給与法案、寒冷地手当改悪法案は、26日午前に開かれた参議院総務委員会で審議され、共産党をのぞく与野党の賛成多数により採択されました。
 質疑では、寒冷積雪地域の生計費を補填してきた手当改悪の問題点が追及されましたが、答弁に立った政府・人事院は、あくまでも民間準拠にもとづく措置であることを繰り返しました。
 県下各市町村で軒並み手当の削減・廃止がねらわれる新潟県では、続発する地震のもとで不安をかかえながらの避難生活が続いていますが、こうした困難さに追い打ちをかけるような手当改悪は認められません。
 公務労組連絡会は、総務委員会の傍聴行動にとりくみ、9名(国公労連5、自治労連・全教・郵産労各1、事務局1)が参加し、法案審議を監視しました。

「地域給与の見直しは人事院の役割放棄だ」と追及

 この日の委員会で質問に立ったのは、森元恒雄(自民)、水岡俊一(民主)、弘友和夫(公明)、吉川春子(共産)、又市征治(社民)の各議員で、このうち、弘友、吉川、又市の3議員が寒冷地手当問題で政府を追及しました。
 公明党の弘友議員は、「寒冷地手当は昭和24年から支給されてきたが、なぜいま大幅な見直しをおこなう必要があったのか。具体的な見直しの基準を示すべきだ」と質問しました。人事院の山野給与局長は、「北海道で8割、本州で2割以下という民間での同種手当の支給実態にあわせたものだ。ただ、公務の特殊性をふまえて、本州でも北海道と同等の気象条件の地域は残すことにした。基本はあくまでも民間準拠だ」と、これまでと同じ主張を繰り返しました。
 共産党の吉川議員は、地域給与の見直しにかかわって、「全体の俸給を5%下げて、地域間で20%もの給与格差をつけることが表明されたが、公務員は全国どこでも同じ仕事をしている。『同一労働、同一賃金』の原則にそむくことにならないか?」と、人事院を問い質しました。佐藤人事院総裁は、「たしかにその原則はあるが、それは基本給にあてはめるべきものだ。したがって、基本給は変えず、地域手当をつける方法を考えている」と答弁しました。
 吉川議員は、「給与が下がれば、退職金や年金にも連動する。仮にも人事院が労働基本権制約の代償機関であれば、公務員が安心して誇りを持って職務に専念できる環境をつくる責任がある。人事院の役割放棄だ」と追及しましたが、佐藤総裁は、「公務員の給与は、民間とくらべてずいぶん高いとの声が地域住民からあがっているもとでの見直しだ。もちろん、全体の給与を引き下げることは影響が大きい。したがって、今後、職員団体とも十分な意見交換をおこないたい」などとのべ、「住民の声」に応えた見直しであることを強調しました。

趣旨説明からわずか2時間半の「スピード審議」で法案採択

 寒冷地手当にかかわって、吉川議員は、「同じ気象条件でも、北海道は2級地で、本州では4級地となる。これでは、公平さを欠くこととなる。また、昭和24年に法律が制定されたが、当初の目的は生計費の補填にあった。民間準拠による今回の見直しは、手当の性格をゆがめるものだ。また、住民生活や地域経済にも大きな影響を与えることとなる」と追及しました。
 これに対して、麻生総務大臣は、「当初から、民間に準拠するとの考え方はあった。それが大前提だ。だから今回見直した。また、指摘されたような影響も考えて、6年間の経過措置を設けることにした」などと、「民間準拠」による手当見直しとの答弁に終始しました。
 社民党の又市議員が、「公務員給与は、交付金や生活保護費などさまざまな給付水準にも影響する。寒冷地手当の引き下げは、地方交付金の寒冷補正や、生活保護費の冬季加算に連動するのではないか」と質問したことに対して、「交付金の寒冷補正は、公務員給与とは別であり、見直しの対象外だ」(総務省・瀧野自治財政局長)、「生活保護費は、消費水準にもとづいて設定されている。したがって、寒冷地手当に連動して冬季加算を見直すことはない」(厚労省・小島社会援護局長)と、又市議員の指摘を否定しました。
 各議員による質問が一巡したのち、共産党の吉川議員が反対討論をおこない、あらためて、民間の支給実態にのみ着目した手当改悪の不当性や、地域経済への悪影響などを指摘しました。
 その後、ただちに採決に入り、自民・公明・民主・社民の各党の賛成多数により、法案は採択されました。趣旨説明から審議・採決まで約2時間半という超スピードで、寒冷地手当改悪法案は委員会で可決され、明日午前の本会議に上程されることとなりました。
以 上