No.494
2004年9月6日
寒冷地手当見直しは合理性あると強弁
= 勧告の取り扱いをめぐって総務省と交渉 =
 公務労組連絡会は6日、04年人事院勧告の取り扱いにかかわって、総務省と交渉しました。
 交渉では、8月6日に提出した要求書にもとづき、公務労働者の生活・労働条件の改善にむけた使用者としての責任ある対応を重ねて求めました。とりわけ、寒冷地手当の改悪をしないよう強く迫りましたが、総務省は、「勧告尊重」の立場を変えず、人事院の手当見直しには合理性があるなどとする回答を繰り返しました。
 小泉内閣は、勧告実施にむけて今週中の閣議決定をねらっており、公務労組連絡会は9日にも交渉を配置し、使用者責任を徹底して追及していきます。

「勧告尊重の立場には変わりない」と従来どおりの回答

 総務省交渉には、公務労組連絡会から、石元議長、若井事務局長、北村・黒田両事務局次長、柴田幹事が出席、総務省側は、人事・恩給局の箕浦参事官補佐、笹森課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長が、「先月6日に要求書を提出した。その際にも強調したが、公務員賃金の動向は、750万公務関連労働者はもとより民間にも影響がおよぶ。賃上げで不況打開をはかっていくことが、政府として重要だ。その立場から、公務員賃金の改善を求める」とのべ、現時点での検討状況をただしました。
 箕浦参事官補佐は、「今年の人事院勧告では、6年ぶりに月例給・一時金ともに前年水準を維持する勧告となった。しかし、寒冷地手当の見直しが同時に勧告され、当該地域の職員のみなさんの生活を考えれば、引き続き厳しい内容だと認識している。8月6日に要求書をいただいたが、その後、政府で勧告の取り扱いを検討しているが、いまだに結論はえられていない。政府としては、従来からの勧告尊重の立場には変更はない。寒冷地手当についても、公務員給与の一部であり、民間から乖離(かいり)できない。人事院の見直しは、合理性のある方法だと考えている」と回答しました。
 また、地域給与の引き下げなどをねらう「給与構造の見直し」について、「人事院の報告は、たたき台と認識している。これにしたがって、人事院と各省当局や職員団体との間で協議されていくものと考えている。総務省としては、勧告が出されれば必要な対応をはかる。その場合、みなさんとも十分に話し合いをすすめたい」と見解をのべました。
 これに対して、若井事務局長は、「地域最低賃金では、44都道府県が時給1円以上の改善となっている。昨年と比較して大きな変化だ。マイナス勧告とならなかった影響がはっきり出ている。こうした影響力の大きさをふまえれば、勧告尊重とする回答だけでは、政府としての責任を果たしていない。とくに、寒冷地手当は、寒冷地での生活費を補填するものであり、もともと民間準拠で支給されていたものではない。気温と積雪で線引きする方法に合理性がないことも、公務労組連絡会などとの交渉を通しても明らかになった。そのことをふまえて、政府としてどのように検討してきたのか」とただしました。
 箕浦参事官補佐は、「寒冷地手当は、指摘の通り、議員立法にもとづく手当であり、寒冷生計増嵩費として支給されてきた。しかし、昨今の公務員をとりまく厳しい情勢のもとで、寒冷地手当だけを特別扱いできるのかということを検討した結果、情勢適応の原則をふまえ、民間準拠にもとづく手当見直しが必要と人事院が判断したものだ。総務省としても、その認識は同じだ」とのべ、あくまで勧告にもとづく手当改悪強行の姿勢を示しました。

自治体・地方議会の反対意見をどう考えているのかと追及

 若井事務局長は、「260を超える地方議会が寒冷地手当改悪反対の決議をあげ、青森県知事をはじめ自治体首長も手当削減をしないよう求めている。それが地域の住民の声だ。厳しい情勢と言うが、どこにも寒冷地手当への批判の声はない。恣意的に格差をつけようとしているとしか思えない」と指摘しました。
 また、柴田幹事は、「寒冷地手当が支給されている職場では、気象データによる手当決定に妥当性があるのかとの声がひろがっている。地方交付税への影響も懸念される。自治体では、まだ労使交渉にもなっていないが、給与本体と切り離して勧告されたり、総務省からも各自治体に早急な対応を求める指示が出ている。慎重にすすめるべきだ」と求め、北村事務局次長も、「国に準じた対応を求める総務省の指示にもとづき、地方では動いており、島根ではすでに寒冷地手当だけ切り離した勧告が出され、青森県などでも分離勧告の動きがある。労働組合との十分な話し合いもなく、手当改悪が強行されることとなる。総務省が果たしている役割は否定的だ。慎重な対応を求める」とのべました。
 箕浦参事官補佐は、「要請があったことは、公務員部に伝える。地方議会の陳情書は拝見しているし、当該の自治体からの要望も承知している。寒冷地での生活の厳しさも認識しており、生活費がかかることも否定していない。しかし、それらは、公務員だけの事情ではない。そうしたもと、公務員の給与制度をどう設計するかを検討していく必要がある」と回答し、民間準拠による手当見直しの妥当性を繰り返し強調しました。
 若井事務局長は、「分離勧告など乱暴なやり方で、地方自治体では混乱がおきている。また、市町村合併があれば、1つの自治体で寒冷地手当が支給される職員と支給されない職員が出るなどの矛盾もおこる。解決しなければならない問題は多い。そうしたことからも、勧告をそのまま実施するのではなく、使用者・政府として十分に検討せよ」と重ねて要求し、最後に、石元議長が、「本日の回答はきわめて不満なものだ。勧告実施の閣議決定むけて、要求をふまえた真摯な検討をあらためて求める」とのべ、交渉を閉じました。
以 上