No.492
2004年8月11日
寒冷地手当改悪するな、労使合意の重視を
= 人事院勧告の取り扱いで厚生労働省・総務省に申し入れ =
 4日から炎天下のもと続いていた人事院前の座り込みは、のべ約900名が全国から駆けつけ、職場や地域からたくさんの激励メッセージが寄せられるもと、3日間の行動を貫徹しました。行動に参加されたみなさんの奮闘にあらためて感謝します。
 一方、本日午後、人事院勧告が出され、これを受けた政府は、給与関係閣僚会議を開き、今後の取り扱いについての議論を開始しました。
 こうしたもと、公務労組連絡会は、勧告後ただちに総務省・厚生労働省に対して、「公務員賃金等に関する要求書」を提出し、寒冷地手当法の改悪をおこなわないことなどを申し入れました。
 また、11日には、同様の申し入れを財務省に対してもおこないました。

寒冷地手当は当該地域の生活ふまえ慎重な審議を

 厚生労働省への申し入れには、公務労組連絡会から石元議長、若井事務局長、黒田事務局次長、柴田・新堰の両幹事、国公労連から山谷中執が参加しました。
 厚生労働省は、高橋満大臣官房審議官(労働基準・労使関係担当)ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長は、「本日、人事院勧告が出され、政府に判断がゆだねられることとなった。マイナス勧告こそ回避されたが、要求に照らせば満足できるものではない。とくに寒冷地手当改悪、給与制度見直しなどは認められない。公務労組連絡会の要求にもとづき、誠意ある対応を求める」とのべて、若井事務局長が要求の趣旨を説明しました。
 高橋審議官は、「要求の趣旨はわかった。勧告の取り扱いは公務員の生活に直結し、職員一人一人の士気にかかわる重要な問題だ。本年の勧告の内容については、人事院が民間賃金水準を調査したうえ、慎重に検討されて出したものと理解している。政府としては、給与関係閣僚会議を開催して、検討をはじめたところだ。労働基本権の代償措置である人事院勧告制度は、維持・尊重されるべきであり、完全実施を考えている」とのべ、現段階での見解を示しました。
 また、「公務員制度改革」にかかわっては、「関係者の理解と協力が大事だ。関係者間で十分な意見交換をしていく必要がある。ILOへの情報提供など誠実に対応していきたい」とのべました。
 石元議長は、「3日間連続の座り込み行動を通して、仲間たちの怒りをあらためて感じた。とりわけ、寒冷地手当の改悪はおこなわないよう求める。その立場からの慎重な検討を求める」とのべ、若井事務局長は、「俸給構造の見直しが報告として盛り込まれたが、人事院の検討過程は、強引で一方的なところがある。労使合意のもとですすめる必要がある」として、政府としての必要な対応を求めて申し入れを終えました。

「合意めざしてみなさんと意見交換していきたい」と表明

 引き続く総務省への申し入れには、公務労組連絡会から、石元・若井・黒田にくわえ、全教の東森書記長、自治労連の池田中執、国公労連の山谷中執が参加、総務省は、人事・恩給局総務課の酒田総括課長補佐、笹森課長補佐ほかが対応しました。
 厚生労働省と同様に要求の趣旨を渡し、総務省としての見解をただしました。
 酒田総括課長補佐は、「本日、勧告を受け取ったところであり、先ほど、給与関係閣僚会議を開き、取り扱いの検討に着手した。人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、政府として尊重することが基本姿勢だ。公務員給与を取り巻く環境は厳しいが、国政全般との関係を考慮しつつ、誠意を持って対応する。その過程のなかで、労働組合の意見を十分にうかがう。勧告が出たばかりで原則的な話しかできないが、要求の内容を受けとめ、今後ともみなさんとよく話し合っていきたい」と回答しました。
 これに対して、若井事務局長は、「寒冷地手当法の所掌は総務省だ。政府が判断すれば、寒冷地手当改悪は中止できる問題だ。切り下げられる地域の職員は、安んじて職務に精励できない。要求を受けとめるだけでなく、真剣な検討を求める。また、給与制度の見直しが人事院から明らかにされたが、これまでの制度とは根本的に異なるものであり、労使の十分な話し合いによる合意が必要である」とのべました。
 酒田総括課長補佐は、「即答できない問題であるが。合意をめざして、みなさんと話し合って検討をすすめたい」とのべるにとどまりました。
 国公労連の山谷中執は、「国公労連は権利裁判を争っているが、総務大臣は被告の立場だ。2002年の国会での付帯決議は、労働組合との合意を求めている。単に労働組合と話し合うだけではダメだ。使用者としての総務省の誠意ある姿勢を見せるべき」と迫りました。
 また、全教の東森書記長は、「多くの寒冷地に学校があるが、住民や子どもがいるからそこに学校が必要なのであり、教員も勤務している。また、地域経済にも影響することから、寒冷地手当の改悪はすべきではない。勧告尊重にとどまらず、政府として、イニシアティブを発揮せよ」と求めました。
 酒井総括課長補佐は、「寒冷地手当は、切実な要求であると受けとめた。使用者・政府としての議論のなかで、みなさんの要求もふまえて検討したい」と回答し、最後に石元議長があらためて誠実な対応を求めて申し入れを締めくくりました。

職員の士気の低下、地方交付税などへの連動を勘案せよ

 11日の財務省への申し入れには、公務労組連絡会から若井事務局長、黒田事務局次長、柴田(自治労連)・先水(国公労連)の両幹事が出席しました(全教は、全国教職員学習交流集会を開催中のため不参加)。財務省は、主計局給与共済課の飯塚厚課長が対応しました。
 はじめに、若井事務局長が別添の「要求書」を渡したうえ、「本俸・一時金とも据え置きで年収マイナスは回避できたが、寒冷地手当が削られる当該地域の職員にとっては、6年連続の年収減だ。職員の士気にもかかわる問題であり、寒冷地手当の取り扱いについては慎重な検討を求める。また、給与の地域間格差を拡大することなど、来年にむけて大幅な制度改変がすすめられようとしている。公務員労働者の労働条件に直結し、地域経済にも影響する問題であり、国民的にも議論を深め、合意形成につとめるべきだ」など要求内容を説明しつつ、要求に沿った給与関係閣僚会議での検討を求めました。
 飯塚課長は、「労働基本権制約の代償措置として人事院勧告制度があり、政府としては、これまでも勧告を尊重してきた。財政事情は引き続き厳しいが、勧告尊重との基本姿勢のもとで今後、給与関係閣僚会議で検討することとなる。まだ未定だが、9月頃のしかるべき時期に政府としての結論を出せるのではないか」と回答し、また、給与制度の見直しでは、「代償措置としての人事院勧告の内容をふまえて検討すべきであり、来年の勧告を見て判断したい」と見解を示しました。
 若井事務局長は、「寒冷積雪地域の仲間からは、強い不満の声が出ている。地方交付税などへの連動をはじめさまざまな影響を総合的に勘案して、慎重な検討が必要だ」とのべ、重ねて慎重な対応を求めて申し入れを終えました。
以 上