No.480 2004年7月5日 |
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賃金改善、寒冷地手当などで政府・人事院を追及 | |
= 夏季重点要求の実現求め公務労組連絡会が交渉 = | |
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「勧告尊重」を繰り返す誠意の見られない回答(総務省) |
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15時からの総務省との交渉には、公務労組連絡会からは石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長と、柴田(自治労連)、八巻(全教)、先水(国公労連)の各幹事が出席、総務省は、人事・恩給局総務課の笹森課長補佐ほかが対応しました。 はじめに石元議長が、「春闘での最終回答は、政府としての使用者責任を果たさないきわめて不満な内容であり、その際、夏の段階での要求実現にむけた努力を求めた。今日は、すでに提出してある重点要求書について第1回目の交渉としての回答を求めたい」とのべ、現時点での検討状況をただしました。 笹森課長補佐は、「いただいた重点要求書は、みなさんの切実な要求として受けとめたい。人事院の勧告作業がこれからとなり、見えない部分もあり、あくまで中間的なものとして考え方を示したい」と断りつつ、おおむね以下のように回答しました。 ●本俸・一時金などは人事院が勧告にむけて作業中であり、まだ勧告が出ていない段階での総務省としての見解表明は差し控える。勧告が出れば、政府として、勧告尊重の立場で適切に対処したい。 ●地域に勤務する公務員給与の見直しについては、03勧告の報告で触れられ、現在、人事院で検討されている。また、寒冷地手当についても今年の勧告にむけて作業がすすめられている。これらについて、使用者として、また、公務員給与を所管する立場として、強い関心を持って見守っているところだ。勧告がでれば、適切に対処したい。 ●その他の要求にかかわっても、現在、人事院で勧告作業がすすめられており、十分に見えないものもあり、しかるべきタイミングであらためて回答を示したい。 これに対して若井事務局長は、「適切に対処するというのは、勧告が出ればそれにしたがうという意味か?春闘の民間賃金妥結額は昨年と同水準であり、今年もマイナス勧告の危険性が強まっている。使用者として、それを唯々諾々と受けとめるのか」と追及すると、笹森課長補佐は、「情勢適応の原則によって、給与が決定されるのが人事院勧告制度であり、総務省としては勧告制度を尊重する立場だ」とのべ、従来どおりの回答を示しました。 若井事務局長は、「民間賃金に準拠するだけが情勢適応の原則ではない。3年連続で本俸マイナスとなる重大な事態を、勧告が出たからと言って総務省はそれにしたがうのか。公務員労働者へのマイナス勧告が民間にも否定的な影響をあたえ、職場の仲間の労働意欲や志気にかかわってくる。そうした現状を総合的に考えて、政策的に判断するのが使用者としての役割だ。過去の例を見ても、政府の政策判断で勧告実施が凍結されたこともあり、マイナス勧告を凍結するという判断もありうるはずだ」とのべ、使用者としての責任を果たすよう厳しく迫りました。 しかし、笹森課長補佐は、「今のところ人事院の検討を見守りたい」「人事院勧告を見て適切に対処する」など同じような発言を繰り返すだけで、回答には使用者としての誠意は感じられませんでした。 こうしたなか、交渉参加者からは、それぞれの職場の状況がのべられ、「長時間・過密労働がすすむ大変な状況のなかで、職員は歯を食いしばってがんばっている。そうした実態を解消するため、政府が使用者としての責任を果たせるのかどうかが問われている。職場の不満は高まるばかりだ」など、要求の切実さが示されました。 最後に石元議長は、「今日は夏季要求でのはじめての交渉だが、回答はきわめて不満なものだ。次回の交渉では、納得できる誠意ある回答を求める」とのべて交渉を閉じました。 「現状の官民比較方法に納得性があるのか」と問題提起(人事院)総務省に引き続いておこなわれた人事院との交渉では、石元議長を先頭とする交渉団に対して、給与局の幸課長補佐、職員福祉局の酒井課長補佐が対応しました。石元議長がはじめに、「佐藤人事院総裁の就任時の記者会見などからも、3年連続のマイナス勧告が懸念されているが、労働基本権制約の『代償措置』としての人事院の役割発揮が求められており、とくに、寒冷地手当にかかわっては、対象地域の代表をまじえて繰り返し改悪をしないよう要請してきた。そうしたこともふまえて回答を求める」とのべ、見解をただしました。 人事院側は、「みなさんの生活の厳しさなどは承知しており、それをふまえた切実な要求であると受けとめる。例年と同様、民間実態をふまえつつ、労働組合ともよく話し合い、国民の理解と納得の得られる勧告を出す」とのべ、おおむね次のように回答しました。 ●(賃金について)景気は着実に回復しているが、雇用情勢は依然と厳しく、賃上げにも結びついていない。春闘結果を見ると、組合がベア要求せず、定昇維持となっている。人事院の民間賃金実態調査(民調)は、現在、整理中だ。一方、各種調査を見ると、昨年なみの賃金水準となっているが、民調は4月時点の民間と公務員の給与水準を比較するものであり、民間の賃金動向だけに左右されるものではない。 ●(一時金について)民間の傾向は、昨年と今年の夏のボーナスが改善され、昨年の年末は悪くなっている。これら3回のボーナスが公務の一時金に反映されることを考えれば、昨年のように非常に厳しい状況ではない。民間では7月に支給されるところもあり、ギリギリまで民間実態の正確な把握に務めたい。 ●(超過勤務規制)各府省に対して、超過勤務縮減にむけた努力を求め、人事院として、「超過勤務縮減対策連絡会議」への協力をはかっている。昨年、「国家公務員の労働時間短縮対策」が3年ぶりに改定されたもと、各省と連携して指導をすすめる。 ●(勤務時間の弾力化)昨年の勧告にもとづき設置された「多様な勤務形態に関する研究会」で、勤務時間の弾力化などが検討されている。効率的な勤務時間配分を促すことで、実労働時間の短縮、健康管理をすすめることを視野に置いて検討している。 ●(男女平等について)「多様な勤務形態に関する研究会」でも議論され、男性の育児参加をひろく考える方向で検討されている。同研究会の「中間取りまとめ」をふまえて人事院として検討をすすめる。 ●(メンタルヘルス対策)自殺者や長期病休者の急増をうけて、「メンタルヘルス対策のための研究会」が人事院に設置され、総合的に対策を検討している。3月に指針が出されたところであり、今後いっそう対策強化に務めたい。 これらの回答をうけて若井事務局長は、「民間実態の厳しさを示されても、それだけで納得できるものではない。過去とくらべれば、民間で正常な労使交渉がおこなわれていないこと、産業再生法や持ち株会社など新しい国の制度が賃金にも影響していること、さらに、年功賃金から成績反映になっていることなど、民間の賃金決定システムが公務と根本的に違うにもかかわらず、賃金水準だけを比較するのは納得性に欠ける。今日的な社会情勢をふまえ、人事院の果たす役割を原点に返って考えるべきだ」と追及しました。 また、寒冷地手当改悪にかかわっては、「人事院がみずから判断したものではなく、外圧に動かされている。したがって、冷静な議論もなく、切り捨てることが前提となっている。地域からの怒りは高まっており、今夏勧告での見直しにあらためて反対する」と改悪作業の中止を迫りました。 これに対して、幸課長補佐は、「現行の官民比較方法については、時代の流れのなかで変えていく必要性が出てきているとの問題意識を持っている。また、寒冷地手当は、春闘期から話し合いをすすめ、6月には支給地域の考え方を示したところだ。その後も当該地域から要望が出されており、さらに検討をすすめている段階だ」と回答しました。 交渉参加者からは、「寒冷地手当は、はじめに改悪ありきで、そこにデータをあわせたことは明らかだ。豪雪地域の怒りはひろがっている」「出生率が1.29まで下がるもと、抜本的な解決にむけた対策が必要だ。男性の育児休業取得促進とあわせて、男性の保育時間の取得、入学式など学校行事参加のための休暇新設なども必要だ」など、重点要求にかかわって人事院としての検討を求めました。 最後に石元議長が、今日の交渉もふまえた十分な検討を人事院に求め、交渉を締めくくりました。 |
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以 上 |