No.450
2004年3月4日
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中央行動を前に政府・人事院と交渉
= 「民間準拠・勧告尊重」の回答に終始 =
 「3・5中央行動」を翌日にひかえて、公務労組連絡会は4日、総務省・人事院と交渉し、2月に提出した要求書にもとづき、賃金・労働条件の改善を迫りました。
 5年連続の年収ダウンのもと、生活改善にむけた賃上げの実現を強く求めましたが、「民間の賃金実態をふまえた適切な給与水準確保」(人事院)、「人事院勧告制度を尊重」(総務省)との従来どおりの回答に終始しました。
 公務労組連絡会では、3月中旬の最終回答にむけてさらに交渉を積み上げていきます。
民間の春闘動向に注目している(人事院)
 15時30分からの人事院との交渉は、公務労組連絡会からは、石元議長、若井事務局長、黒田事務局次長、柴田(自治労連)、新堰(全教)、先水(国公労連)の各幹事が参加、人事院側は、勤務条件局の幸(ゆき)課長補佐、酒井課長補佐が対応しました。
 はじめに石元議長が、「2月の要求書提出からおよそ1か月が経過した。明日は、全国から仲間が駆けつけ、人事院への要請行動などをとりくむ。現時点での検討状況を示してもらいたい」とのべ、若井事務局長が、以下の点を強調し、人事院の見解をただしました。
○政府統計でも、労働者全体の賃金水準は5年前にもどった。公務員も同じであり、要求は切実だ。とりわけ国家公務員の初任給は14万円にも満たず、決して公務員の賃金が高いとは言えない。「平均12,000円以上」の賃上げ実現を強く求める。
○「地域給」など俸給構造の見直しは、職員間の賃金格差を拡大する点から反対する。とりわけ、寒冷地手当の「見直し」改悪の作業はただちに中止せよ。
○国立大学の法人化により公立学校教職員賃金の国準拠制が廃止されるが、適正な教員賃金水準を確保するためにも、人事院として必要な役割を果たすべきだ。
○不払い・サービス残業が公務職場でも横行している。実効ある超過勤務規制にむけた対策の強化を求める。
○増加するメンタルヘルスに対応して必要な施策の充実をはかるよう求める。とくに、人事院の「メンタルヘルス研究会」との意見交換などにむけて努力してもらいたい。
 これに対して、人事院側は、「みなさんの要望をふまえて、さらに検討をすすめたい」とのべたうえ、現時点での中間的な見解を示しました。
●民間の春闘は、ベースアップ見送りや定期昇給の廃止・縮小などきびしさが伝えられている。今後とも民間企業の妥結状況に注目したい。人事院としては、民間賃金の実態を正確に把握しつつ、経済状況や労働組合からの要望、各方面からの意見などをふまえつつ、適切な給与水準の確保にむけて努力する。
●公務員の初任給は、民間給与との均衡とともに、優秀な人材確保の観点から総合的に勘案して決定していく。
●地域に働く公務員給与の見直しは、俸給構造の全般的見直しのなかで作業をすすめる。現在、たたき台をつくるなどして勉強しているところだ。
●勤務時間管理は、政府全体でとりくむべき課題だ。昨年、国家公務員の労働時間短縮対策が改定され、「コスト意識を持った勤務時間管理の徹底」などが盛り込まれたところだ。各省担当者による「超過勤務縮減連絡会議」のなかで改善にむけた議論をすすめる。
●メンタルヘルス対策は重要であると認識している。人事院としても、本院と各地方事務局に相談室を設け、研修制度もつくった。専門家による研究会を設置し、対策を強化していきたい。
 回答をうけて、若井事務局長は、「民間賃金の動向だけに注目すれば、結果は賃下げにしかならない。職員の暮らしを守ることが人事院の役割であり、その点からの検討があって当然だ。俸給構造の見直しは、研究会報告にもとづいて着々と作業をしているが、公務内部の配分問題にとどまらない。地域経済への影響などを考慮し、その是否をふくめて議論すべきだ」と指摘しましたが、人事院側は、「俸給構造の見直しは、部内で勉強している段階であり、今後、みなさんとも十分に意見交換したい。民間の給与実態を調査し、官民較差を解消するのが人事院勧告の役割だ」とのべ、あくまで「民間準拠」のもとでの給与決定という基本的立場を繰り返しました。
 若井事務局長は、最後に、「民間賃金との均衡はわかるが、財界による一方的な賃下げが続く今の状況をそのまま公務に引きうつすと、官民の賃下げ合戦になる。人事院は、賃金のあるべき姿、規範性を示すべきではないのか」とのべ、要求書にもとづいてさらに検討を深めるよう求め、交渉を閉じました。
きびしい声があるときこそ勧告制度尊重が重要(総務省)
 16時30分からの総務省との交渉は、人事・恩給局の箕浦参事官補佐、山石課長補佐ほかが対応しました。
 若井事務局長は、人事院と同様に要求の重点項目を示したうえで、見解を求めました。
 総務省側は、要旨、以下のように回答しました。
●みなさんの賃金改善要求は、切実な要求として受けとめる。政府としては、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重し、国政全般との関連を考慮し、適切に対処する。
●俸給構造の見直しは、人事院の検討状況を見守りたい。給与改定にあたっては、総務省としては、みなさんの意見も十分にうかがいながら、作業をすすめるのが基本だ。
●超過勤務対策は、昨年、「国家公務員の労働時間短縮対策」の見直しを行ったところだ。新たな対策にもとづき、総務省として、各省のとりくみをフォローしていきたい。また、超過勤務縮減連絡会議のなかで実効ある対策を議論していく。
●メンタルヘルス対策の重要性は十分認識しており、カウンセラーの充実などにむけて、各地方ブロックごとに講演会を開催している。
 これに対して、若井事務局長は、「使用者としての責任を持った言葉は聞こえてこない。職員が安んじて働くためには、使用者への信頼が必要だが、それがみじんも感じられない回答だ」とのべ、「日本経団連がベースダウンも交渉の対象と言っているときに、民間のルールなき賃金交渉に追随していいのか。また、民間では不払い・サービス残業がきびしく追及されているが、模範を示すべき政府としての認識はきわめて甘い」と指摘しました。
 総務省側は、「国民からは、公務員の給与は高いというきびしい声もある。きびしい時期だからこそ、政府として、勧告制度の尊重が求められる」などとする回答を繰り返しました。
 最後に、「使用者として、職員の能力が発揮でき、誇りを持って働くことのできる環境づくりに努力すべきだ。次回の交渉では、誠意ある回答を求めたい」として、この日の交渉を終えました。
以 上