No.432
2003年10月7日
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給与法「改正」案が参議院委員会で可決
= 衆参あわせて5時間にも満たない審議で法案を通す =
 給与法「改正」案は、7日午前に参議院総務委員会で審議され、共産・社民をのぞく各党の賛成多数により採択されました。
 衆議院と同様に、与党各党が割り当てられた質問時間を放棄したことから、この日の審議時間はわずか2時間程度となり、衆議院とあわせてもわずか5時間に満たない審議で「賃下げ給与法」の成立がはかられることとなります。
 公務労組連絡会は、最後まで法案審議を監視するため、衆議院に引き続いて委員会への傍聴行動にとりくみ、12名(国公労連6、自治労連2、全教1、特殊法人労連1、郵産労1、事務局1)が参加しました。
賃下げによる消費への悪影響、大臣も認めざるを得ず
 総務委員会では、高嶋良充(民主)、宮本岳志(共産)、又市征治(社民)、松岡滿壽男(無所属)の各議員が質問に立ちました。
 高嶋議員は、「5年連続で公務員の年収を下げることが、勤労者の生活に影響し、消費の後退など日本経済に与える影響は大きい。この背景には、小泉内閣の失政によるデフレ不況がある。デフレを克服し、経済を安定させるため政府は責任を果たすべきだ」と、小泉「構造改革」による失政を批判しました。
 麻生総務大臣は、「デフレ不況の原因は、冷戦構造が崩壊して以降、中国の安く優れた労働力が自由経済に参入し、日本の失業率を高め、平均賃金を下げたことが影響している。政府だけの責任ではない」など答弁し、責任回避しました。
 共産党の宮本議員は、はじめに、「重要な法案であり、十分な質疑が必要であるにもかかわらず、全体でも2時間に押し込め、共産党の質問時間を25分としたことは不当である」と委員長に抗議しました。そのうえで、給与法案にかかわって、「公務員の賃下げは民間賃金に波及し、『賃下げのスパイラル』をまねき、不況はいっそう深刻となる。その原因は、経済対策の失敗など、責任はすぐれて政府にある」と政府の責任を追及しました。
 麻生大臣は、「政府の責任がゼロとは言わないが、それがすべてではない。日本企業が安い労働力を求めて中国に工場をつくり、その結果、物価や賃金を引き下げたことも否めない事実だ」などと答弁し、「企業の中国進出=日本の労働者の賃下げ」とする、きわめて一面的な考え方をくり返しました。しかし、景気への否定的な影響については、「賃下げが消費に影響を与えていることは確かだ」として、麻生大臣も認めざるを得ませんでした。
 宮本議員は、「小泉内閣になって、失業者は26万人増え、労働者の収入は32万6千円減っている。政府のリストラ推進政策が民間労働者を痛めつけ、その結果として公務員の賃金が下がっている。さらにそれが民間にも影響すれば、賃下げのデフレスパイラルだ。公務員賃金の引き下げでますますスパイラルを加速するとは考えないのか?」とただしました。
 これに対して、「日本では初めてのデフレ不況であり、世界的にも経験はない。したがって、こうした特異な経済情勢のもとで、政府として政策に一貫性がなかったとの批判は甘んじて受けとめる。しかし、この10年間でGDPもわずかながら上昇し、そこそこの経済は維持してきた。名目の経済成長率も上がっており、景気も底を打った」などと答弁し、質問に対してまともな回答を示しませんでした。宮本議員は、「『そこそこ』などという認識がそもそもまちがっている。社会保障、税金の負担増によって、国民生活は『そこそこ維持できる』状況などどこにもない」ときびしく指摘しました。
 質疑ののち、討論がおこなわれ、共産党の八田ひろ子議員、社民党の又市征治議員が、それぞれ、公務員賃金引き下げの景気への悪影響や、「賃下げの悪循環」がいっそう加速されることなどを理由にして、法案に反対することを表明しました。
 その後の採決では、一般職の給与にかかわる法案を共産・社民が反対し、特別職にかかわる法案を社民が反対し、両法案とも賛成多数で可決されました。
労働基本権や「天下り」など公務員制度でも質疑
 委員会では、給与法案とともに、「公務員制度改革」をめぐる質疑もおこなわれました。高嶋議員は、「関連法案の通常国会提出が断念された以上、『大綱』の見直しをふくめて国民的な議論のやり直しが必要だ。ILO勧告にもとづいて、労働組合との制度協議をすすめるべきだ」とせまったことに対して、佐藤内閣府副大臣は、「各省や労働組合と話し合い、与党でも議論がすすめられるもと、能力等級制度などについて関係者との調整をさらに深める必要があるとして、法案提出は見送った。今後、幅広く意見を聞き、法案の取りまとめに努力する。しかし、『大綱』の見直しはしない」として、あくまでも「公務員制度改革大綱」にそった「改革」をすすめる立場を協調しました。
 宮本議員は、「天下りへの国民批判は強く、避けて通れない課題だ。共産党は、『天下り禁止法案』を示しているが、批判に応えるためには、営利企業への天下り規制だけでなく、特殊法人や公益法人への規制も必要だ」とし、人事院の見解をただしました。これに対して、中島人事院総裁は、「官民の癒着が生じないよう、内閣で一括して管理すべきだ」とし、各省大臣に権限をゆだねることに否定的な姿勢をあらためて示しました。
 労働基本権問題について、又市議員が、「権利制約を前提にするのではなく、ILO勧告をふまえて、労働基本権問題から議論すべきだ」と追及したことに対して、春田公務員制度改革等推進室長が、「与党内での議論は『労働基本権の制約維持』であり、これをふまえて『大綱』をまとめた」などとのべたことから、又市議員は「行革推進事務局は、与党のための事務局か。どこを向いて仕事をしているのか」ときびしく批判しました。
以 上