No.419
2003年8月6日
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月例給1%以上引き下げ、一時金0.25月の大幅削減
= 公務労組連絡会が人事院との最終交渉を実施 =
 公務労組連絡会は6日、人事院勧告を前にして、「夏季重点要求」に対する最終回答を求めて、人事院と交渉しました。
 交渉では、「官民較差は1.1%弱となり、全俸給表のすべての級について引き下げる」とし、昨年につづいて2年連続の月例給の切り下げが示されました。これに加え、昨年の0.05月減を大幅に上回る0.25月の一時金削減、諸手当の引き下げなどで、年収は過去最大の減収となります。
 切実な要求に応えるどころか、大幅な賃下げをせまる人事院の姿勢は断じて認められません。交渉では、民間労組との共同がひろがったこの間の運動の到達点もふまえ、人事院をきびしく追及しました。
「賃金署名」1万8千筆を新たに提出、合計で30万超す
 人事院との交渉には、公務労組連絡会から石元議長、若井事務局長、黒田・北村両事務局次長、松本幹事、先水幹事が参加、人事院は、勤務条件局給与第一課の幸課長補佐、職員課の酒井課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長が、7月31日以降に集約された署名18,293筆分を人事院に提出、合計で302,100筆となったことを明らかにしたうえで、「民間組合からマイナス勧告反対の声がかつてなく大きくあがっている。7月9日の中央行動は、公務・民間が共同して1500人が集まった。7月末の座り込みにも、たえず民間組合が参加した。これまでになかったことだ。それだけ、昨年のマイナス勧告が民間賃金に悪影響をおよぼし、民間の仲間の注目が集まっているということだ。30万筆を超える署名が集約されたこと、3日間連続の座り込みに連日多くの組合員が参加したこと、7月31日に最大規模の3,500人の組合員が集まったことなどは、これ以上の生活悪化は許さないという職場の怒りの現れだ。そのことを人事院が真摯に受けとめて、誠意ある対応を求める」とし、最終的な回答を求めました。
 これに対して、幸課長補佐は、「民間のみなさんからの声は前回の交渉でも聞かせてもらった。座り込みや30万の署名、さまざまな大規模な行動などは、みなさんの切実な声として重く受けとめたい」とのべたうえ、「正確な実態調査にもとづく官民比較を基本とし、各方面の意見もふまえながら勧告作業をすすめてきたところだ。民間のきびしい実態もあり、昨年につづくきびしい結果となった」として、次のとおり回答しました。

【人事院最終回答】
1、勧告日は、8月8日となる予定である。
2、官民較差は、1.1%弱のマイナスとなる見込みである。
3、期末・勤勉手当の支給月数は、0.25月分の減少となる見込みである。期末手当の削減で対処する。
4、較差の配分については、俸給と手当の配分比率を大きく変えないよう配慮した。
(1)俸給表は、マイナス較差を踏まえ、全俸給表のすべての級について引き下げ改定を行うが、改定にあたっては、みなさんの要求にも配慮した。
(2)諸手当について
 @ 扶養手当は、配偶者にかかわる手当を500円引き下げる。
 A 住宅手当は、自宅にかかわる手当を新築・購入から5年間に限定する。
 B 通勤手当は、交通機関等利用者について、6か月定期券等の価額による一括支給を基本とすることに変更する。
 交通機関利用者について、2分の1加算額を廃止し、5万5千円までを全額支給とする。
 自動車等使用者にかかわる手当の使用距離区分を45キロメートル以上から5キロメートルごとに4段階増設し、各900円ずつ増額させる。
 C 調整手当の異動保障は、在勤6月を超えることを適用の要件とし、保障期間を2年、2年目の支給割合を現行の8割とする。
 現に異動保障を受けている者について、改正後の異動者との均衡をはかるための経過措置を講ずる。
5、実施時期及び差額の調整については、通勤手当および調整手当の改正については16年4月から、その他の改正については改正法施行日から実施する。
 本年4月から改正法施行までの官民較差相当分を解消するため、4月の各人の給与に較差率を乗じて得た額の施行日までの月数分および6月の各人の期末・勤勉手当に較差率を乗じて得た額を、12月の期末手当において調整することとする。
6、給与構造の基本的見直しについて、職務・職責を基本に、勤務実績等を重視した制度となるよう給与全般の見直しを行いつつ、民間給与の地域差に対応できる仕組みとするなどの見直しが必要。各府省や職員団体のみなさんとよく話し合って早期に具体化できるよう検討をすすめていきたい。
7、寒冷地手当の実態把握、特殊勤務手当の見直しにかかわって、寒冷地手当は、支給地域・支給水準について、民間の支給状況と隔たりがあるとの指摘もあり、勧告後に全国的な調査を行い、その結果をふまえて必要な検討をすすめる。
 特殊勤務手当は、特殊性が薄れているもの等について見直しを行うとともに、必要なものについて改善するよう検討をすすめる。
8、国立大学等の法人化にともなう教育職俸給表等のあり方については、関係者と意見交換を行い、早急な改正を行うための検討をすすめる。
9、在職者が大きく減少することとなる行政職俸給表(二)については、来年から比較職種の対象外とする方向で検討する。
 特別給については、民間の状況をより迅速に反映させるため、来年以降、前年冬と当年夏の民間の支給状況の調査結果にもとづき支給月数の改定を行うこととする。
10、多様な勤務形態の検討のため、有識者による研究会を設置する。
11、公務員制度改革については、今後の関係者、有識者等各界のオープンな議論を要請し、それに資する観点から、現時点での人事院の意見を表明する。
 本年も勧告内容は大変きびしいものとなったが、民間におけるきびしい状況を反映したものとして、ご理解いただきたい。
 マイナス改定の差額の調整方法については、国会の附帯決議をふまえ、みなさんの意見も聞いて対応した。
 給与構造の見直し、寒冷地手当の検討等、今後も多くの課題があるが、みなさんとよく意見交換しながら検討をすすめていきたいので、みなさんも積極的に対応をしていただきたい。
どのような「調整」をしても不利益遡及に変わりない
 これを受けて、若井事務局長は、以下の点を主張しました。
 ○この5年間で最大の年収減となる賃下げ勧告は断じて認められない。とくに、一時金の0.25月の削減は、きびしい民間実態があったとしても、昨年(0.05月削減)と比較して文字通り桁外れの大幅削減であり、納得できない。あわせて、期末手当から削減し、勤勉手当の比率を高めるやり方は、能力・業績主義強化の給与制度の先取りであり、反対する。
 ○各種手当の削減は、それぞれの手当の果たしてきた役割をふまえた検討こそ必要だが、調整手当の見直しなどは政治的な圧力にも屈したものと言える。また、諸手当は、本来、労使交渉で決めるべきであり、勧告で押しつけるのは問題が多い。
 ○「減額調整措置」については先日も意見をのべたが、どのような「調整」をしても、「不利益遡及」に変わりはない。民間でも労使合意抜きの不利益変更がまかり通る事態も懸念されるし、実際におこっている。手本をしめすべき国がやることではなく、断じて認められない。
 ○地方に勤務する公務員給与の見直しは、これまでも主張してきたように「同一労働同一賃金」が基本にした検討が必要だ。また、地方公務員への影響が予想される。過日申し入れた事項についての対応を重ねて求める。
 ○今年ほど、勧告が出るはるか以前からマスコミ報道が盛んにおこなわれ、数値まで明らかにされたことはなかった。本来、労使で議論すべきことがマスコミを通して流されることは、労使関係を軽視することになり重大であると指摘する。
 交渉参加者からは、「教育職俸給表のあり方については、文部科学省からも意見があげられているはずだ。また、今後、関係する労働組合と十分に話し合うべきだ」と求めたことに対して、幸課長補佐は、「国立大学の法人化法が先の国会で成立したばかりであり、文部科学省とはこれからつめていくこととなる。来年4月以降のことでもあり、これから関係者とよく協議していきたい」と回答しました。
 また、「差額の『調整』について、国会の附帯決議が採択されているもとで、『不利益遡及』を回避するため人事院として最大限の努力をしたのか」と追及しましたが、「あくまで民間給与と均衡させるための調整措置であり、国会の附帯決議もそのこと問題にしたものではない」と、8月1日の申し入れと同趣旨の主張をくり返しました。
「民間準拠」に固執し続けた人事院の姿勢をきびしく批判
 若井事務局長は、「日本経団連などが集計した春闘妥結額の結果から見ても、民間以上の賃下げだ。公務員労働者が安んじて働くことができる勧告内容ではない。マイナス勧告の否定的影響は大きい。国が不利益遡及することは、労使合意抜きの不利益変更が民間でもまかり通ることとなりかねない。労働基本権の『代償措置』としての勧告制度の役割は、今年の勧告からはどこにも見ることはできない」ときびしく指摘しました。
 最後に、石元議長は、「賃下げの元凶は『マイナス勧告』にあるという声も出ているほどだ。人事院勧告後にどのようなことが起こっているのか、そうした情勢も見なければ、『情勢適応の原則』を言うことはできない」とのべ、「この間、公務労組連絡会として、『民間準拠』にとどまらない勧告をくり返し求めてきたが、その要求にはまったく応えず、人事院が、最後までそれにに固執し続けたことは、きわめて残念であり、遺憾である。公務労組連絡会として、賃下げ勧告は断じて認められない。本俸引き下げを4月から実施する『不利益遡及』の勧告は、労働基本権制約の『代償措置』としての人事院の役割放棄だ。公務員制度改革の検討では、否応なしに人事院の存在そのものが問われるなか、現行の人事院勧告制度のもとで、あらためて公務員労働者の生活を擁護する『第三者機関』としての存在意義を認識し、その役割を果たすよう強く求める」とのべ、交渉を締めくくりました。
以 上