No.393
2003年5月27日
公務労組連絡会FAXニュース
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退職手当改悪法案を参議院総務委員会で採択
〜 衆・参あわせて5時間にも満たない審議で成立はかる 〜
 一般職国家公務員の退職金を6/100ポイント切り下げる退職手当改悪法案は、27日の参議院総務委員会で審議され、わずか2時間の質疑ののち、共産・社民を除く各党の賛成多数により採択されました。
 高級官僚の法外な退職金や「天下り」に対する国民の批判が高まるもと、衆・参あわせて5時間にも満たないきわめて短時間の審議により採決が強行されたことは重大です。
 今後、国と連動した地方自治体の退職金の一方的切り下げを許さないことや、公務員制度課題とも一体で、国民が求める制度確立をめざしていく必要があります。
 公務労組連絡会は、総務委員会の傍聴行動にとりくみ、3単産から9名(国公労連6名、自治労連・特殊法人労連各1名、事務局1名)が参加しました。

「退職手当は労働条件、十分な交渉・協議が必要」と追及

 総務委員会では、高嶋良充(民主)、山下栄一(公明)、八田ひろ子(共産)、松岡満寿男(国会改革連)、又市征治(社民)の各議員が質問に立ちました。
 民主党の高嶋議員は、「退職手当は、退職後の生活にかかわる問題であり、重要な労働条件だ。透明性・客観性を確保するため、調査方法、比較方式の明確化をはじめ、退職手当の安定性、国民の納得性を重視し水準を見直すべき」と、公務員の労働条件を決める「ルールづくり」を求めました。
 片山総務大臣は、「これまではルールもなく、人事院や総務省が実態調査をして見直してきた。ただ、退職手当は労働条件ではなく、長期勤続報償としての性格がある。その点もふまえ、公務員制度改革など、総合的に議論して結論を出すべき」と答弁、これに対して、「労働条件であり、国営企業にも適用されることからも十分な交渉・協議が必要だ」と高嶋議員が迫ると、片山大臣は、「職員の重大な関心事であり、職員団体とは十分な『意見交換』をしたい」とのべるにとどまりました。
 また、早期退職特例措置の見直しにかかわって、「きわめて不十分だ。かえって天下りを助長するのではないか。国民批判をふまえれば、特例措置は廃止すべき」と質しましたが、若松総務副大臣は「外局長官以上は、特例措置が廃止となる。見直しは、合理性があり、適切なものだ。今後、総合的な見直しのなかで、必要に応じてしっかりと検討していきたい」と答弁しました。
 公明党の山下議員から、独立行政法人への役員出向にかかわる問題を中心にした質疑があったのち、共産党の八田ひろ子議員の質問に移りました。

400万円もの退職手当の男女格差の是正もとめる

 八田議員は、今回の「改正」によって、一般職国家公務員の退職手当がどの程度引き下げられるのか、課長補佐と係長クラスを例にして、具体的な金額の提示を求めました。
 これに対して、総務省人事・恩給局の久山局長から、200万円程度の手当削減になることが示されると、八田議員は、「本俸引き下げとあわせれば、大変な収入の減額となり、退職後の将来設計が狂うばかりか、さらには、デフレ不況への影響など深刻だ」と、消費後退によって日本経済に悪影響をあたえる観点もふまえつつ、「高級官僚の批判を背景に、一般職まで引き下げることは、職員の働きがいや士気にかかわる重大な問題だ」として、一般職員の退職手当一律削減に反対しました。
 また、八田議員は、女性の6割以上が定年まで勤め、退職手当は男性より400万円も少ない実態を政府に明らかにさせたうえで、「定年まで勤めあげても、女性は退職手当も給料も男性より少ない。この実態をどう受けとめているのか」と質しました。
 片山大臣は、「女性が役職に就く比率が低いことなどが背景にあげられるが、それも、是正される傾向にある。性別で差をつけようとは考えていないし、そうした制度もない。理解いただきたい」と釈明したので、八田議員は、女性の幹部登用が圧倒的に少ないこと、とりわけ、所管官庁である総務省では女性登用がすすんでいないことを数字を示して追及しました。片山大臣は、「女性の採用、幹部への登用をすすめたいし、志望する女性も増えてほしい。指摘をふまえて、努力していきたい」と答弁しました。
 その後、国会改革連の松岡議員が、退職手当ともかかわる「天下り」問題などで政府の考え方を質し、最後に質問した社民党の又市議員は、「賃下げ・リストラの嵐の一方で、労働法制の改悪もねらわれている。民間の退職金が下がったからといって、公務員も下げるのでは景気の回復を遅らせるのではないか」と、「民間準拠」にもとづく手当削減を批判しました。
 これに対して、片山大臣は、「民間均衡の大原則がある。指摘はわからないではないが、国民の理解が得られない。現在、政府として経済活性化の努力している。不況を打開しながら、公務員の労働環境も良くしていく必要がある」として、景気への連動とは別問題だとする主張を繰り返しました。

「附帯決議」を採択、共産党は反対討論で主張

 これらの質疑が終了したのち、共産党の宮本議員が反対討論に立ち、「高級官僚への高額退職金の是正措置はきわめて不十分であり、国民の理解はえられない。独立行政法人等への役員出向にともない規定を整備するというが、国からの出向が必要ならば、なぜ独立行政法人を国の機関から切り離したのか。また、『民間均衡』による一律削減は、職員の待遇改善の願いに反するものだ。そもそも、民間賃金の低下をまねいたのは、自民党の失政の結果だ。それに均衡させようとする退職手当削減に反対する」と主張しました。
 その後の採決では、共産・社民が反対、その他の各党の賛成により法案は採択されました。また、別記の附帯決議が提案され、共産党は、宮本議員の反対討論の立場から、この決議には反対し、それ以外の各党の賛成多数で採択されました。

以 上

国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

1、退職手当制度及び支給水準の見直しに関しては、退職手当の水準は官民の均衡が基本であるとの認識の下、その検討を行うとともに、関係職員団体等との交渉・協議し理解を得るよう最大限努力すること。

2、退職手当の官民比較における調査の重要性にかんがみ、その法令上の位置付け、調査の方法等について必要な検討を行うこと。(以上)