公務員制度にかかわる声明・談話


労働基本権を先送りし、分断・差別の新人事制度を導入する

「行政職に関する新人事制度の原案」に対する声明 


2001年11月7日
公務労組連絡会幹事会

1、政府の行政改革推進事務局は昨日(11月6日)、「公務員制度会改革」に係わって「行政職に関する新人事制度の原案」を明らかにしました。  これは、内閣官房行政改革推進本部が6月29日に決定した「公務員制度改革の基本設計」をもとに、国家公務員の一般行政職を念頭に置いた「新たな人事制度」の案として提示したものです。

 行政改革推進事務局は、今後、さらに、この「行政職に関する新人事制度の原案」のほか、「官民交流及び再就職についての基本的考え方」などを含めた「公務員制度改革大綱」(仮称)を12月に決定する方向で作業を進めています。

2、こうした「公務員制度改革大綱」の策定に向けた行革推進事務局の動きは、公務員制度が公務員労働者の基本的な労働条件と密接・不可分に係わるにもかか わらず、政府がILO総会で「国際公約」した労働組合との「交渉・協議」を十分に尽くさないまま、政治的な日程のみを優先して進めているところに重大な問 題があります。

 そもそも、政府自身が「公務員の労働基本権制約の代償機関」と位置付けてきた「人事院」の機能や役割を無視するとともに、労 働条件の大改悪を公務員労働者に一方的に押し付けるというやり方は、政府自らが憲法に違反する行為を行うものであり、断じて容認することが出来ません。

3、また、行革推進事務局が明らかにした「行政職に関する新人事制度の原案」は、政府が3月に発表した公務員制度改革の「大 枠」が示した「信賞必罰」の人事制度を踏襲するもので、「能力・業績主義」にもとづく人事管理の徹底を基本に据えて「能力等級制度」を中心に「任用制度」 「給与制度」「評価制度」「人材育成」を一体のものとしてトータルに機能する「新たな人事制度」を構築するものです。

 しかも、この「新たな人事制度」は、「労働基本権制約の代償機関」たる人事院の機能と権能を縮小する一方で、各省庁の大臣を「人事管理権者」とし、その権限を大きく拡大するという「新たな労働条件決定システム」の導入が基本に据えられています。

 こうした「労働条件決定システム」の重大な変更は、人事院制度のあり方とも係わって、公務労働者の「労働基本権」と密接・不可分の問題であり、公務員労働者の「労働基本権」回復の提起ぬきに進められる性格のものではありません。

 これまでも、行政改革推進事務局は、「労働基本権問題は、新人事制度の基本構造がより詳細なものになって人事管理権限を含め検 討に入っていく中で絡むと考える」と表明してきており、公務員労働者の「労働基本権」を保障しないまま「新たな労働条件決定システム」を導入することは、 憲法に保障される公務員労働者の「労働基本権」をさらに踏みにじる暴挙といわれてもしかたないことです。

4、「行政職に関する新人事制度の原案」は、国民から強い批判の的となっている官僚制度を見直すとして「本府省の幹部職員の育 成のあり方」に検討を加えるとしています。その内容は、国家公務員一種採用のキャリアを優遇する「本省庁の幹部職員候補集中育成制度」を創設するととも に、職員を事実上「上級幹部職員」「本省幹部職員」「一般職員」の3層に分断・差別し、新たな「特権的な官僚制度」を再構築するもので、国民の批判に逆行 する内容となっています。

 また、「能力・業績主義」による「能力等級制度」を導入し、能力等級に対応する1から9級の給与表を基にした「能力給」「職 責給」を設定し、公務員の「身分保障制度」問題と深くかかわる人事評価制度と結合した「免職・降格」制度の新たな導入、さらに3月の一時金の廃止、本省勤 務手当の創設、配偶者に係る扶養手当廃止検討など、公務員労働者の賃金・労働条件を当事者である労働組合との「交渉・協議」にもとづく合意と納得のないま ま政治的な日程を優先させて一方的に導入することは、現行公務員制度のもとでも到底許されるものではありません。

5、公務員制度の「改革」は、公務労働者の働くルールを変更する問題であるとともに、国民・住民のいのちやくらしに係わる公務 サービスのあり方が問われる重要な問題です。公務労働者が、真に「国民・住民への全体の奉仕者」として、その業務を公平・公正、かつ民主的に行える行える 制度として確立されなければなりません。

 ところが、行革推進事務局が明らかにした「行政職に関する新人事制度の原案」は、「特権的な官僚制度」を温存するとともに、民間企業でもその見直しがはじまっている恣意的な人事評価にもとづく「能力・成果主義」人事管理・給与制度を公務職場に導入を図ろうとるものです。

 こうした公務員制度の「改革」は、国民・住民の願いである「血の通った温かみのある行政を実現し、公務労働者が国民・住民への 「全体の奉仕者」としての職務を遂行するどころか、時の政権政党と強化される「新たな官僚組織」に従順な公務員をつくり出し、「国民に背を向ける公務労働 者づくり」といわざるを得ません。

6、公務労組連絡会は、政府・行革推進事務局が、公務労働者の「労働基本権」をないがしろに進める「公務員制度改革」の内容と 手法を厳しく糾弾するとともに、「特権的な官僚制度を廃止すること」「政官財の癒着・腐敗を温存する天下りを廃止すること」「公務労働者の労働基本権を確 立すること」「全体の奉仕者として、協力して職務にあたることのできる、公平・公正な人事制度を確立すること」などを中心とした、国民から支持・共感がよ せられる民主的な公務員制度の確立めざしてとりくみを強化するものです。全ての単産・単組が「公務員制度改革大綱」策定のヤマ場にむけ、「全国統一交渉旬 間」の交渉・上申書闘争、宣伝・対話活動など様々なとりくみに全力をあげるとともに、「国民のための公務員制度確立」をめざし「11・30中央行動」の成 功に向け奮闘することを呼びかけるものです。

以 上