NETニュースNO.925 全人連へ要請


自治体職員・教員の賃金・労働条件の改善を要請

= 公務労組連絡会が全国人事委員会連合会に申し入れ =

 公務労組連絡会は4月12日、全国人事委員会連合会(全人連)に対して春闘期2回目となる要請行動にとりくみ、地方自治体職員・教職員の賃金・労働条件改善を求めました。
 要請では、地方人事委員会の16年勧告にむけて、生計費原則を踏まえて労働者の生活改善につながる賃金の引き上げや、臨時・非常勤職員の均等待遇へ全国の人事委員会の役割発揮を求めました。

格差と貧困がひろがるなか地方自治体の役割は重要

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会から蟹澤議長(全教委員長)、猿橋副議長(自治労連委員長)、川村事務局長、杉本・米田各事務局次長、自治労連から中川書記長、全教から小畑書記長が出席しました。
 全人連側は、青山会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、鍬田(北海道)、小川(宮城)、今井(群馬)、齋藤(愛知)、栗原(大阪)、森信(広島)、高橋(高知)、吉岡(福岡)、岡部(横浜)の各人事委員会代表が参加しました。

 はじめに蟹澤議長(写真左)が、青山会長(同右)に要請書を手交し、「3月16日に大手企業の春闘回答が出されたが、昨年を下回る低額回答となった。経済財政諮問会議の場でも、賃金改善の必要性が強調され、最低賃金の1,000円への引き上げを安倍首相は主張している。IMFも『日本がデフレから決別するには賃金上昇が必要である』として、公的セクターの賃金引き上げで手本を示すことを指摘している。公務員賃金を抑制し、地域間格差を拡大する『給与制度の総合的見直し』は中止するよう求める。貧困と格差が拡大するもとで、地方自治体や教育の役割発揮が求められている。そのためにも自治体職員・教職員の増員をはじめ、労働条件改善は不可欠だ」とのべ、人事委員会の役割発揮を求めました。

 自治労連の中川書記長は、大阪府や名古屋市での勧告値切りなどを指摘し、「労働基本権制約のもとで、賃金をはじめとする労働条件決定の根幹的制度である人事委員会勧告が、使用者によって蔑ろにされたものである。全人連として、両当局に対してきびしく対処すべきだ」とのべるとともに、地域手当による賃金格差と人材確保の問題、フレックスタイム制による職場の混乱などを指摘して各人事委員会の対応を求めました。

 全教の小畑書記長は、違法状態にある教職員の超過勤務について、「実態をしっかりつかみ、改善策を打ち出すよう求める。介護休業法改正における参議院の付帯決議の趣旨を生かして、育児や介護など家族的責任と仕事の両立がはかれるような施策を拡充するよう求める。育休期間中の社会保険料免除を受けられないなど、法律の谷間におかれている臨時・非常勤職員の労働条件の改善・均等待遇の実現にむけて、必要な勧告・報告を行うよう求める」と要請しました。

社会情勢に適応した適正な給与水準を維持する

これらの要請に対して青山会長は次のように回答しました。

【青山全人連会長の回答】
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えします。

 さて、最近の経済状況ですが、3月の月例経済報告においては、「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とされる一方、先行きについては、「緩やかな回復に向かうことが期待される」としつつも、「中国を始めとするアジア新興国や資源国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある」としております。

 また、民間における春季労使交渉の状況でございますが、3月中旬の主要企業の一斉回答では、円高や世界経済の減速懸念などを背景に、3年連続でベースアップとなるものの、妥結額は昨年を割り込む回答が相次ぎました。
 一方、中小企業につきましては、賃金引き上げ額が大企業を上回る水準で推移しているとの報道もありますが、まだ多くの企業で労使交渉が続いていることから、引き続き今後の動向を注視する必要があると考えております。

  こうした民間における賃金の状況を的確に把握するため、毎年、各人事委員会は、人事院と共同で民間給与実態調査を行っております。本年も、例年と同様の日程で実施する予定であり、5月初旬からの調査開始へ向けて、現在、準備を進めているところです。
 本日、要請のありました個々の内容は、各人事委員会において、調査の結果や各自治体の実情等を踏まえながら、本年の勧告に向けて検討していくことになるものと思います。

 申し上げるまでもなく、私ども人事委員会の重要な使命は、中立かつ公正な第三者機関として、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した、適正な水準を確保することであると認識しております。
 全人連といたしましては、今後も、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、各人事委員会や人事院などと十分な意見交換に努めてまいります。全人連会長の関谷です。私から全国の人事委員会を代表してお答えします。ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、役員道府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。


【全人連に提出した要請書】

2016年4月12日

全国人事委員会連合会
 会 長  青山 佾 殿

公 務 労 組 連 絡 会
議 長   蟹澤 昭三
日本自治体労働組合総連合 
中央執行委員長 猿橋 均 
全 日 本 教 職 員 組 合 
中央執行委員長 蟹澤 昭三

地方公務員の賃金等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。
 さて、政府が再三にわたって経済界に賃上げを要請し、日銀総裁が労働組合に対して賃金交渉に強気で対応するよう促しましたが、大手企業の回答は昨年を大きく下まわる低額回答にとどまっています。今後の焦点は、中小企業の動向となっていますが、民間・公務、正規・非正規を問わず、引き続き、すべての労働者の賃金を引き上げることが国民的な期待であり、社会的な要請となっています。
 とりわけ、賃金の地域間格差の拡大とともに地域経済の疲弊が進行してきたもとで、公務関連はもとより、地域の主要企業で働く労働者の賃金の目安ともなっている公務員賃金の改善は急務です。

 一方で、多くの自治体で昨年4月から実施されている「給与制度の総合的見直し」による地域間での賃金格差の拡大や高齢層職員の賃金抑制が、職員の意欲に冷や水を浴びせるとともに、職員採用にも支障をきたすなど全国各地の自治体現場での混乱を招いています。
 また、安倍首相が最低賃金の1000円以上への引き上げや同一労働同一賃金を政策課題としているもとで、臨時・非常勤職員の賃金改善と均等待遇の実現、雇用の安定化は地方自治体においても喫緊の課題となっています。

 さらに、地方公務員の長時間過密労働はますます拡大し、メンタル不調により長期休業する職員は1%を超えて高止まりしており、人員増は待ったなしの課題です。
 第一線で奮闘する公務労働者の労苦に報い、良質な行政サービス・教育を提供するためにも、各地の人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえて、下記要求の実現に尽力されるよう要請いたします。

                     記

1、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、「全体の奉仕者」としての誇りと尊厳を持って職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

2、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意して調査をおこなうこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握とともに、比較対象企業規模を100人以上にすること。

3、職務給原則に反した賃金格差の拡大や高齢層の賃金抑制をやめること。全労連が実施した最低生計費調査の結果、全国各地でほとんど差がないことや、20歳代でも時給換算で1,300円以上必要であることが明らかとなっており、地域間格差を拡大する地域手当を廃止し基本給に繰り入れるとともに、初任給改善を行うこと。

4、地方の公務員賃金引き下げにつながる政府・人事院による給与制度の改悪に対して、人事委員会として意見表明していただくこと。

5、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、教職員賃金の職責と勤務実態に応じた適正な賃金水準を確保すること。

6、職員の異常な長時間過密労働を解消するため、必要な人員の確保を勧告すること。また、労働基準監督機関として適切な労働時間管理が行われているか監督するとともに、必要な措置を行うこと。労働基準法33条3項の拡大解釈を認めず、同法36条に基づく協定の締結を指導すること。

7、男女共同参画推進、女性の活躍推進の立場から、育児・介護休業法改正にともなう参議院の付帯決議も踏まえ、妊娠、出産、育児、家族看護や介護に関する休暇・休業制度等を拡充すること。

8、臨時・非常勤職員について、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策をおこなうこと。

9、「雇用と年金の接続」にむけては、定年延長を大原則に、希望するすべての職員の雇用が保障できる制度を確立し、生計費をふまえた賃金水準の確保にむけて、人事委員会としての役割をはたすこと。

以 上

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