「公務員制度改革」闘争ニュースNO.142【2014年4月11日】


「公務員制度改革」関連法の成立を自公民で強行

= 労働基本権回復の道筋が示されないまま、使用者権限を強化 =


 参議院で審議されていた「公務員制度改革」関連法案は、4月10日の内閣委員会で質疑がおこなわれ、その後の採決で自民・公明・民主の賛成多数で可決しました。法案は翌11日の本会議に上程され、賛成多数で可決・成立しました。

 公務部会は委員会を傍聴するとともに、10日の中央行動ですべての参議院議員への要請行動にとりくみ、最後まで法案の徹底審議を求めました。以下、10日の内閣委員会での審議を、「国公労連速報」を編集して掲載します。

地方公務員の労働基本権回復にも「慎重な検討が必要」と消極的

 午前10時からはじまった内閣委員会では、山崎力・石井正弘・上月良祐(自由)、山下芳生(共産)、神本美恵子(民主)、秋野公造(公明)、江口克彦(みんな)、浜田和幸(改革)、山本太郎(無所属)の各議員が質問に立ちました。

 かつて岡山県知事をつとめていた自民党の石井正弘議員は、地方公務員の労働基本権をとりあげ、「人事委員会勧告制度を廃止して地方公務員に協約締結権を付与すると、住民からは公務員優遇に見られる」「賃金・勤務条件決定にかかわる客観性や合理性が低下し、お手盛りという批判を招く。また、協約締結権を付与すれば、交渉が長期化することでかえって労使関係が不安定になってしまう」などと、県知事時代の主張を持ち出して、「新たな制度を構築する意義や必要性が見いだせない」とのべ、人事院の見解を質しました。

 原恒雄人事院総裁は、「労使間で合意して協約を締結しても、国会でそれと異なる判断がされれば合意内容を実施できず、正常な労使関係を保つことはとうていできない。また、公務員は民間企業のように市場の原理が働かず、労使合意にいたるには大変な困難がともなう。実際にかつての三公社五現業の賃金交渉では、労使による自主的な解決にいたらず、公労委の仲裁にゆだねられてきた」などとのべたうえ、「立法府(国会)において協約締結権をめぐる論議はほとんどされていない。慎重な検討が必要だ」と労働基本権回復に後ろ向きな答弁をつづけました。

 さらに、石井議員は、「消防職員に団結権を付与すると、上司と部下の信頼関係がなくなり、指揮命令系統が乱れて消防活動に支障をおよぼす」などと、全国消防長会や日本消防協会などの意見をならべて、「極めて、極めて慎重な検討がなされていくべき」と消防職員の団結権は保障すべきではないとの立場から意見をのべました。

 伊藤忠彦総務大臣政務官は、「消防職員の団結権のあり方に関する検討会で報告書が取りまとめられたが、委員間で必ずしも意見の一致を見たわけではない。各団体からは国民の安全・安心の確保に大きな影響をおよぼす恐れがあるなど反対意見も寄せられている。そうした意見をふまえて慎重に検討していく必要がある」と答弁し、また、稲田大臣も、「自律的労使関係制度については多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要がある。その際、地方公務員制度に与える影響など、地方自治体の懸念についても十分に考慮しなければならない」と、この間の答弁と同様に、地方公務員の労働基本権回復にも消極的な姿勢に終始しました。

「公務に数値目標はなじまない」と稲田大臣も認めざるをえず

 人事評価制度に関わって質問した共産党の山下芳生議員は、国公労連の「人事評価アンケート」の結果にもとづいて、「本来求められる仕事は何なのかという視点を失い、あらかじめ定めた数値目標だけが重視されるという回答が60%で一番多く、次いで、短期の評価で判定されることが業務実態に合わない37%となっている。また評価者自身の目標を達成するために被評価者に目標を強要しているなどの事例もある」と実態を具体的に示したうえで、「公務は国民の権利を保障する仕事をしており、儲けを追求する民間とは違って数値目標にできないことや、短期の成果になじまない」と追及しました。

 稲田大臣が、「数値目標はなじまないという指摘は、まさしくその通りだと思う」と認めながらも、「民間であっても数値目標になじまないものもあるし、必ずしも数値目標を求めているわけではない。人事評価の実施にあたって、評価者と被評価者のコミュニケーションが必須で職員の心身両面の健康状態を上司が確認できる重要な機会にもなっている」と主張しました。

 これに対して、山下議員が「評価者が被評価者に目標を強要している事例もある。そのことが、職場のパワハラを助長しているのではないか」と質すと、稲田大臣は「いやしくも人事評価制度がパワハラの原因になるようなことは絶対にあってはならない。そうならないように運用すべき」と答弁しました。

「基本法12条削除」は、自民党みずからが認めた到達点を否定

 内閣委員長が質疑終局を宣言した後の討論では、反対討論に立った共産党・山下議員は、法案が国家公務員の労働基本権回復を先送りしたまま、人事権を内閣人事局に集中し、いっそう中央主権的な官僚制度に作り変えるものであることや、官邸による幹部職員人事への恣意的な介入を可能とする一元管理を導入して全体の奉仕者としての公務員のあり方を変質させるものであると表明しました。

 また、労働基本権回復にかかわって自民党議員からたびかさなる否定的な意見がだされ、公務員制度改革基本法12条の削除を求める主張がされたことに対して、第1次安倍内閣のもとで法案が提出され、12条で「自律的労使関係を措置する」として成立した経過からも、「自民党も認めた到達点をみずから否定するような主張は通用するものではない」と厳しく指摘しました。

 その後、採決が行われ、法案は賛成多数で可決されました。また、衆議院と同様の附帯決議案が、自民・公明・民主・改革の共同提案で提出され、賛成多数で採択されました。

労働基本権回復にむけてねばり強いたたかいを

 「公務員制度改革」関連法案は、翌日の11日の参議院本会議に上程され、自民・公明・民主の賛成多数で可決・成立しました。

 昨年の臨時国会で継続審議となった際に、自公民三党の密室協議によって今国会での成立がすでに合意されていました。しかし、法案の内容は、「国民全体の奉仕者」から時の政権に奉仕する公務員に変質させ、内閣人事局の設置によって使用者権限を強化しながらも労働基本権制約を維持することなど重大な矛盾をかかえていました。

 さらに、憲法で保障され、ILOから度重なる是正勧告が日本政府に示されていた労働基本権回復にかかわっては、政府側は、「国民の理解が得られていない」などとする答弁を繰り返し、労働基本権回復の道筋さえも示さないままに審議が打ち切られました。

 自律的労使関係について、自公民三党の密室協議を通して「合意形成につとめる」との附帯決議が衆参で採択されたものの、そのことは、「自律的労使関係を措置する」と定めた基本法12条を後退させるものでしかありません。日本の公務員の権利水準の低さが国際的な批判を受けているもと、これになんら応えようとしない日本政府の態度は、新たな厳しい国際世論を巻き起こさざるをえません。

 このように、国内的にも国際的にも数々の問題点を持っていた法案でありながらも、昨年の臨時国会をあわせても、衆参でわずか35時間という短時間の審議で成立が強行されたことは認められません。

 引き続き、政府に対して民主的公務員制度の実現を求めていくとともに、公務労働者の労働基本権回復にむけて、国民的な呼びかけを強めるとともに、ILOをはじめ国際世論に訴えていくことが求められています。

以 上