「公務員制度改革」闘争ニュースNO.140【2014年4月4日】
参議院で「公務員制度改革」関連法案の審議はじまる
= 公務部会で内閣委員への要請行動、委員会傍聴にとりくむ =
参議院に送付された「公務員制度改革」関連法案は、4月2日の本会議で趣旨説明と各党による代表質問がおこなわれ、翌3日には内閣委員会で法案審議がはじまりました。
全労連公務部会では、委員会審議にあわせて、3月12日につづいて参議院内閣委員への要請行動にとりくみました。また、並行して内閣委員会への傍聴行動を配置し、法案審議を監視しました。
来週には参考人質疑が予定され、専修大学の晴山一穂教授が行政法学者の立場から、憲法にそった民主的公務員制度のあり方などにかかわる意見陳述を準備しています。 幹部人事の一元管理、自律的労使関係制度など幅広く議論
4月3日の参議院内各委員会では、山谷えり子・上月良祐(自民)、秋野公造(公明)、大野元裕(民主)、江口克彦(みんな)、山下芳生(共産)、浜田和幸(改革)、山本太郎(無所属)の各議員が質問に立ちました。
約5時間にわたる審議では、公務員制度改革の理念をはじめ、幹部人事の一元管理、級別定数の管理など内閣人事局が担う事務、さらには自律的労使関係など労働基本権にかかわる問題まで幅広い内容が議論されました。
級別定数の設定・改定の事務が人事院から内閣人事局に移ることにかかわって、自民党の山谷議員は、「人事院の意見を尊重すると言うが、内閣人事局と人事院との間で意見が異なれば、どのように対応うするのか」と見解を質しました。これに対して、公務員制度改革推進事務局の川淵事務局次長は、「級別定数の設定は人事院の意見を十分に尊重する。その意見と異なる場合は、内閣人事局に重い説明責任が生じるが、そうした事態は想定されるものではない」と答弁しました。
また、公明党の秋野公造議員は、「級別定数の設定には、人事院の労働基本権制約の代償機能が引き続き確保されるべきだ。そのためにどのような手順や仕組みが必要と考えるか」と質しました。
原恒雄人事院総裁は、「級別定数は勤務条件としての性格を持つため、労働基本権制約下においては、これまでと同様に代償機能を確保する必要がある。そのため、人事院が労使双方の意見を聴取して策定した級別定数の設定案を意見として内閣人事局に提出し、それにもとづいて内閣人事局が設定することとなる」と答弁し、稲田朋美公務員制度改革担当大臣は、「特段の事情がない限り、人事院の意見に従うべきだ。人事院の意見は、現行の各種の意見以上に尊重する」として、法案やこの間の国会審議にもとづいて、人事院の意見を十分に尊重する立場をあらためて強調しました。
自律的労使関係制度の確立へ「引き続き慎重に検討する」と答弁
自律的労使関係をめぐって、自民党の上月議員は、「長年にわたる人事院勧告制度が定着している。民主党政権で自律的労使関係の法案が提出されたが、あんなものはありえない」などと主張したうえ、8度にわたるILO勧告に対する政府の対応を質しました。
後藤田正純内閣府副大臣は、「ILO勧告は、関係者と十分に話し合うこと、ILOへの情報提供をつづけることの2点を日本政府に求めている。政府として、この勧告にもとづいて、職員団体からも意見を聞き、ILOへの情報提供もつづけている」とのべたうえ、「ILO勧告は尊重すべきだが、法的拘束力はない」などとして、労働基本権回復を繰り返し求めてきたILO勧告に耳を貸さない日本政府の対応を正当化しました。
上月議員は、「公務員の労働条件は、最終的には国会が関与することとなる。労使間で労働条件を決めても、国会で否決されればダメになる。どこが自律的なのか」と指摘すると、稲田大臣が「国会の関与は必要だが、労働基本権は憲法で保障されており、自律的労使関係制度も、憲法上の要請にもとづくものだと考える」と答弁、これに対して、上月議員は「自律的労使関係をさだめた公務員制度改革基本法12条は、すでに死文化している。抜本的にきちんと議論すべきだ」と、繰り返し公務員の労働基本権回復を否定しました。
また、自民党の山谷議員も、「基本法12条でさだめる自律的労使関係の『全体像』を示すことはできないし、労働基本権回復に対する国民の理解も得られるものでもない。意味のない条文をそのままかかげておくのは美しくない」などと主張、これに対して、稲田大臣は「労働基本権を付与する職員の範囲や、便益及び費用の定量化をふくむ全体像を現時点で示すことは困難だが、国民の理解が得られる制度の確立にむけて引き続き慎重に検討する必要がある」と答弁しました。
政権党に言いなりの「ヒラメ公務員」をつくる制度は認められない
共産党の山下議員は、今回の法案によって、憲法15条がさだめる「国民全体の奉仕者」から政権党に奉仕する公務員へと変質させる問題点について、菅義偉官房長官を追及しました。山下議員は、幹部職員人事が一元管理されることで、幹部職の任免にはあらかじめ内閣総理大臣と内閣官房長官の協議が必要になることから、その結果、政権の意向にもとづいて幹部職員が登用されることとなる問題点を指摘しました。
山下議員が、「『全体の奉仕者』の立場から、社会保障制度改悪など国民の利益がそこなわれる政策に対して、公務員が批判的な意見をのべることは歓迎されるべきことだ。政権の方向性とそぐわないと判断された幹部職員が降格されれば、自由にものが言えなくなる。総理大臣と内閣官房長官の任免協議が入ることで、時の政権党の言いなりになる『ヒラメ公務員』が増える」と厳しく指摘しました。
これに対して、菅官房長官は、「選挙によって国民から付託を受けた政権が、国民に公約した政策を遂行することは当然の役割であるし、その最前線で指揮をとる幹部職員が政権と無関係に働くこともありえない。公務員が政権に協力するのは当然だ。それが全体の奉仕者につながってくる」と強弁しました。山下議員は、「いくら国民の負託を受けたとしても、その政権が憲法で保障する国民の人権を阻害する政策をすすめようとすることに対して、おかしいと勇気を持って言える公務員が必要ではないか」と追及すると、菅官房長官は「それは当然のことだが、憲法に反するようなことを政府がやろうとはまったく考えていない」などとまともに答弁しませんでした。
山下議員は、「公務員の職務に照らして、自由にものが言える官僚組織にすることが、国の行方を誤らせない歴史的な教訓ではないか。そのことを経て、公務員が『全体の奉仕者』として憲法で位置づけられた。公務員が政権に従うのは当然だという主張は、そのこととも反する」とのべ、重ねて「国民全体の奉仕者」としての公務員の役割を果たすことのできる制度を強く求めました。
以 上