「公務員制度改革」闘争ニュースNO.138【2013年12月5日】
公務員制度改革関連法、今国会の成立を許さず
= 自民・公明・民主の密室協議で次期国会に修正案提出を合意 =
臨時国会で審議されている「公務員制度改革」関連法案は、12月4日午前の衆議院内閣委員会で審議され、野党各議員が質問に立ちました。今国会での審議はこれでほぼ終了し、国会閉会にともなって継続審議となる見通しです。
こうしたもと、自民・公明・民主による法案の「修正協議」がつづけられ、12月3日に合意したとマスコミ報道が伝えています。その内容は、65歳までの
段階的な定年年齢の延長を法案に盛り込み、「自律的労使関係制度」措置へ合意形成に努めることなどの附則を設けただけで、数々の法案の問題点を修正するも
のとはなっていません(別掲)。
こうした修正内容は、国会で正式に了承されたわけでもなく、自公民三党がまさに密室で合意したに過ぎません。そのやり方は、2年前の「給与臨時特例法(賃下げ法)」をめぐる三党の密室協議と同様であり、とうてい認められません。
一方、今国会で成立を許さなかったのは、労働基本権を保障した憲法にもかかわる問題を明らかにし、国会議員要請を反復してとりくむとともに、参考人質疑では国公労連の宮垣委員長が意見をのべるなどしてきた運動の反映です。
また、11月には公務各単産によるILO本部要請がとりくまれるなか、内閣委員会の審議でもILO勧告にもとづいた労働基本権回復を野党各議員が主張するなど、国際世論に訴えてきた運動も委員会審議に影響を与えました。
政府は、法案を修正したうえ、来年の通常国会の早い段階での成立をねらってくるものと見られます。引き続き、「公務員制度改革」関連法案を廃案に追い込むため、たたかいを継続・強化していくことが求められています。
級別定数にかかわる「政府見解」を文書で提出
4日午前におこなわれた衆議院内閣委員会の質疑は、後藤祐一(民主)、大島敦(民主)、赤嶺政賢(共産)、杉田水脈(維新)、山之内毅(維新)、松田学(維新)、大熊利昭(みんな)、村上史好(生活)の各議員が質問に立ちました。
民主党の後藤議員は、前回の委員会審議で、級別定数にかかわる政府見解を文書回答するよう求めていたことに対して、稲田朋美公務員制度
改革担当大臣が「級別定数関係事務に関する見解」(別掲)を提出、菅官房長官も「稲田大臣の見解は政府としての見解である」と答弁しました。
共産党の赤嶺議員は、「今回、労働基本権にかかわることが空白である」と指摘し、労働基本権の代償に関わる級別定数を人事院から内閣人事局に移管する理由や、内閣人事局と人事院の意見が食い違う場合の対応はどうするのかと質しました。
稲田大臣は、「政府一丸となって直面する政府の重要課題にスピード感をもって組織をつくり対応していくことが必要だ」とのべ、人事院が
意見を聞くこととなる労使には内閣人事局も含まれること、内閣人事局と人事院の意見が食い違う場合について、法的に人事院の意見には拘束力がないとし、最
終的には総理が決定することになると答弁しました。
赤嶺議員は、第三者機関である人事院の意見が「尊重」されないという非常に危険な事態であり、労働基本権の「代償措置」を踏みにじる法案は、ILO条約にも違反しているなどの問題点を厳しく指摘しました。
「労働基本権回復は具体化する段階ではない」と稲田大臣
みんなの党の大熊議員は、内閣人事局の事務権限に関わって「人件費予算の配分
の方針の企画及び立案」にとどまらず、人件費関連の事務を一貫して所掌すべきと質したのに対して、葉梨財務大臣政務官は「内閣人事局の方針にもとづき具体
の積算、調整等は相当な事務量となることから財務省で行う」と答弁。また政官接触の記録を作成すべきとの質問に対し、公務員制度改革事務局の川淵次長が提
出するとしていたペーパーはどうなったのかと詰め寄りました。しかし、政府側が用意していなかったため、委員長が一時速記を止める事態となりましたが、特
定のフォーマットはないものの「速やかに提出する」ことで収拾されました。
生活の党の村上議員は、自律的労使関係制度にかかわる公務員制度改革基本法12条の規定をふまえ、これまで工程表の策定、パブリック
コメントの実施、公務員制度改革関連4法案に至った経緯やILO勧告にも反しており、「自律的労使関係制度の確立はいつまでも先送りできない課題だ。具体
的スケジュールを含め明らかにせよ」と迫りました。
稲田大臣は「この間の経緯もふまえつつ意見交換会での議論や職員団体からの意見も伺いつつ検討してきたが、まだ具体化する段階に至っ
ていないと判断し、今回は見送った。引きか続き、費用と便益を含め国民の理解を得られるよう検討していく」とのべ、前回の内閣委員会と同様の答弁を繰り返
しました。
以 上
(別添資料)
級別定数関係事務に関する見解
1 内閣人事局による級別定数の設定に際し、内閣人事局と人事院が重複して各行政機関に説明や資料提出等を求めることにより、法改正前より各行政機関の行政コストが肥大化することのないよう、内閣人事局は人事院と協力して機動的な運用を行う。
2 個別の官職の職務の級の格付け自体は、突き詰めれば、勤務条件に関連する側面はない。
しかし、当該官職に個人を当てはめた場合及び個々の格付けの結果の積み上げは、勤務条件に関連する。
3 級別定数の事務の効率化を図る観点から格付けの全体(枚数)および個別の官職について、資料の共通化等により各行政機関の説明や資料提出を最小限にとどめ、事務の効率化を最大限図ることとする。
4 上記の観点から、内閣人事局は自らの事務の見直しを行うとともに、人事院に対しても、適切な勤務条件確保の観点から、格付けの全体(枚数)に関する説明や資料提出に重点化し、事務の簡素化を図るよう要請を行う。
5 上記を踏まえ、内閣人事局は人事院と連携し、級別定数の事務の運用状況全体について不断に検証し、さらなる負担の軽減に努める。
平成25年12月3日
公務員制度改革担当大臣
稲 田 朋 美
【参考資料:自公民三党の合意書】
合 意 書
自由民主党・公明党・民主党は、下記の点を合意し、次期通常国会において、政府提出の「国家公務員法等の一部を改正する法律案」について、その早期成立を期す。
一、定年延長に係り講ずべき措置について附則条文(別掲)を追加する。
二、次期通常国会における付帯決議にあたっては、添付文書(別掲)を盛り込む。
三、級別定数関係事務に関する公務員制度改革担当大臣の見解及び政府におけるその確実な実施について確認する。
平成25年12月3日
自由民主党 西 川 公 也
平 将 明
公 明 党 高 木 美智代
民 主 党 近 藤 洋 介
後 藤 祐 一
「国家公務員法等の一部を改正する法律案」の修正について
○「国家公務員法等の一部を改正する法律案」の附則に、次の検討条項を加えるものとする。
(検討)
第42条 政府は、平成28年度までに、公務の運営の状況、国家公務員の再任用制度の活用の状況、民間企業における高年齢者の安定した
雇用を確保するための措置の実施の状況その他の事情を勘案し、人事院が国会及び内閣に平成23年9月30日に申し出た意見を踏まえつつ、国家公務員の定年
の段階的な引上げ、国家公務員の再任用制度の活用の拡大その他の雇用と年金の接続のための措置を講ずることについて検討するものとする。
国家公務員法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切に対応すべきである。
一 職員の公募について、実施状況を検証し、その結果を踏まえて、内閣総理大臣が幹部職員の公募を実施すること等必要な推進方策を検討すること。
二 自律的労使関係制度について、国家公務員制度改革基本法第12条の規定に基づき、職員団体と所要の意見交換を行いつつ、合意形成に努めること。
三 内閣総理大臣補佐官及び大臣補佐官について、その運用状況を踏まえ、増員の要否及び内閣総理大臣や大臣を支えるスタッフの拡充について検討すること。
四 国家公務員法に定める再就職規制について、再就職等監視委員会の監視を含む運用状況を見つつ、あっせん規制に対する刑事罰の対象の拡大の可否について検討すること。
五 幹部候補育成課程について、その運用において、内閣総理大臣が主体的かつ中心的な役割を積極的に果たすことができるよう、基準において必要な事項を定めること。
(以 上)